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桃井1

特撮戦隊のピンクこと桃井は、うつろな目で病院の壁に真の名前をひたすら書いていった。


「緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真緑真まことまこと真まことまことまこと真緑真みどりまことまことまこと真まことまことまこと真緑真みどりまことまことまこと真まことまことまこと真緑真みどりまことまことまこと真まことまことまこと真緑真みどりまこと」


異常な行動。

だが、彼女は、無駄にこんなことをしていたのではない。

少なくとも彼女の中では……


緑真。彼は不自然なほど特徴のない顔をしていた。

そのせいか、桃井は真の死後、たった一年で彼の顔を思い出せなくなっていた。

彼の顔が思い出せないほど特徴がない理由、あらゆる工作をするために緑一族により行われた整形手術によるものであることも今は知っている。

本人の意思とは関係なく顔を奪う。

こんな酷い話があるだろうか。

彼の人生を奪い、彼を奪われたものから思い出まで取り上げるなんて。


桃井は自分を追い詰めていく。

そして病院に入院したときに決心をした。


――これ以上、真を忘れない。絶対に! 自分が壊れても真の思い出だけは奪われない!


この病院でできる事。

それが真の名前を書いて彼を忘れないようにすること。

書いているうちは思い出がなくなることはない。

そう桃井は考えていた。

それが彼女をさらに追い詰め心を壊すとしても……


もう使い終わったヒロイン。

彼女の人生は終わったのだ。

どこかで幸せに暮らしていることにすればいいのだ。

情報が漏れないようにただ監禁しているだけ。

だから病院は薬を飲ませて大人しくしていさえすれば、桃井に対してほとんどの自由は認めていた。

たとえ彼女が誤った思考で壊れようとも。

病院にとってはそんなことはどうでもよかった。

たまたま精神状態が悪くなったので病院に監禁しただけなのだ。


桃井はさらに思いを馳せる。

戦いの終盤、桃井はブルー、青山に真がもう長くないことを聞いていた。

それを聞いて桃井は真の残された一生で彼を幸せにしようと決意していた。

彼とともに彼の残りの人生を一緒に過ごすのだ。



邪魔するものは全て殺そう。



敵の残党であろうが、緑の一族であろうが、国であろうが、たとえ仲間であろうがだ。

婚約者? 世間体? 関係ない。

阻むものは全て敵だ。

この世には自分と真だけ存在すればいいのだから。


だが、それは叶わなかった。

真は自分達を置いていってしまった。

自分の力がなかったせいだ。

真にとって自分たちは一緒に戦う仲間ではなく、守るべき対象だったのだ。


一番許せないのは自分だった。


引き裂かれそうなほど心は痛み、

闇の中に沈んでいくかのような感覚が彼女を支配した。


その認識がさらに彼女を追い込んでいった。

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