キスルヒトビト!
キスされる、キスする、キス見る。これらをキスルとして、キスル人々、というタイトルをつけました。帰する、という意味も含めています。
あなたの彼女は美少女だ。
長い青髪を後ろで左右にまとめた彼女の顔は、少し幼い印象があるものの、非常に整っている。胸部は大きく、腰は細く、太ももは大変健康的だ。
同性のあなたは、この綺麗な子とつき合っている。高校入学後に出会った彼女があなたに惚れて、今ではとうとう、女子同士の恋にまで到達してしまった。
あなたと彼女が恋人同士なのは、同級生の間でもけっこう知れ渡っている。それなのに、彼女に告白する男子がいなくならない。
今日も彼女が体育館裏に呼び出されていた。
「――好きです! つき合って下さいっ!」
こんなふうに男子から告白されるのは、多い時には週に二度もあったりする。
「……ごめんなさい。私、つき合っている子がいるんです」
済まなげに彼女が言った後、彼女の後ろで待機していたあなたが姿を現す。
告白した男子は、あなたの存在に驚きすらしない。むしろ、待っていたのだろうか。
「私は、この子を愛しています」
彼女が男子に伝えると、あなたのほうへと体ごと向いて来た。
あなたのすぐ前まで接近した彼女が、あなたの背中に両手を回す。
顔がとても近い。
「んん~ッ!」
汚い声を出しながら、彼女は美少女とは思えないほどに唇を伸ばし、あなたの口へと強く圧しつける。目は大きく見開いたままで、顔がのけ反りそうなほどに乱暴なキスだった。
激しい密着から彼女は一旦顔を引いて、再びあなたへと唇をぶつける。
「んーッ!」
まるでこのキスをしないと世界が滅亡してしまうんじゃないかと錯覚させるぐらいに、彼女は真剣だ。それなのに、間違いなく彼女の顔は、並の子よりも下品だった。普段目にする素敵な顔からの悪化具合が、逆にあなたの心を高揚させる。
そうして、何度か激しいキスを繰り返された末に、あなたは彼女の拘束から解放された。キスをされた部分の濡れが、気になった。
彼女は何事もなかったような顔を作り、男子のほうを向いた。
「こういうことなので、私のことはどうか諦めて下さい」
「――はいっ! ありがとうございましたっ!」
男子は彼女に勢い良く頭を下げて、その場から去った。彼の表情は恍惚としていて、フラれたのに全く悲しみがない。そんな姿を、あなたは追っていた。
「……なんでこんなに告白されるんだろう? 私達のこと、着実に広まっているはずなのに……」
不思議そうに彼女は言う。
その疑問の答えを、あなたは知っている。
あなたが彼女と恋人になった後に、彼女が男子から告白された。すぐに彼女は断ったものの、その最初の男子がしつこくて、諦めようとしなかった。
あなたは彼女に相談されたので、何か印象に残るようなヒドい姿を男子に見せつけたら、それが噂として広がって、告白する男子がいなくなるんじゃないかと助言した。
この助言を彼女が取り入れた結果が、壮絶なキスになった。
最初こそ上手くは行った。最初の男子は気持ち悪いと感じたようで、彼女との交際を諦めた。
しかし、その男子の友人が、どんなものなのか興味が湧いたのがまずかった。
それ以降、濃厚なキスシーンが見られると男子の間で話題になってしまった。最初から断られるのを前提で告白し、間近で熱いキスを見て楽しもうとする変態が、あなたが思っていた以上に存在したのである。
あなたとしても、彼女から積極的なキスをされるのには興奮する。告白した男子よりも、自分のほうが明らかに格上だという優越感にも浸れる。
女子同士のすっごいキスを見ることが出来る男子に、好きな相手に毎回キスをしてもらえるあなた。お互いに有益な結果を得ていることを、彼女は知らないのかもしれない……。
「――でも、あなたと激しいことが出来るのは、嬉しいな」
彼女もいい思いをしてくれているらしい。
二人きりになると、彼女はあなたの前で目をつぶり、先ほどとはまるで違う、すごく優しいキスをする。頬を染める美少女に相応しい動作だった。
彼女の情熱的なキスと、本来の美しさを活かしたキス。どちらのキスも、あなたに帰する。
(終わり)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。




