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【短編小説】愛と劣等  作者: まっど↑きみはる


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4/5

 車はそこら中で渋滞し、クラクションが鳴り響いている。


 逃げ場も無いのにどこに逃げようとしているのだろうかと、ハルオは馬鹿らしく思いながらそれを見ていた。




 桜並木をハルオとマモルの二人が歩く。


 ふいに、ハルオはその光景を見て言った。


「桜の木の下には死体が埋まっているって言うじゃん?」


 マモルはその言葉に答える。


「有名な小説の一節だね」


「今は桜の木の横に死体が転がっているな」


 綺麗な桜の下を死に場所に決めた人間達の死体が、木にもたれかかる様に眠っていた。


 彼らの顔は笑顔で、幸せそうだ。


 ハルオはポツリと言う。


「まるで酔いつぶれているみたいだな」


「そうだね」


 マモルもそう短く返事をした。




 桜並木を抜けて、街を避けて道外れを歩く。春の陽気は心地よかったが、荷物の重さが苦痛だった。


 マモルはハルオに尋ねる。


「死後の世界ってあるのかな?」


「誰にも分からないんじゃないか? 死んで蘇った人間はいないし」


 ハルオはしばらく黙った後に言う。


「俺みたいに、常に死ぬ事を考えている『死ぬ事考えるガチ勢』でも、死ぬ事はエアプだからな」


「確かにそうだね」




 夕暮れが見える。狂人を避けるために暗い廃墟で静かに過ごすことにした。


「今日の夕食は素敵な素敵なカップ麺だな」


 ハルオは沸かした湯を注いで、食事を済ませる。


 街の明かりが少ないので、夜空が少し綺麗に見えた。





 朝になり、毛布をたたんでまた出発をする。


 久しぶりに歩いたから、靴擦れが起きていたが、ハルオはどうせ死ぬんだからと我慢する。


 相変わらず騒がしい街を横目に見ながら、ハルオは言った。


「どうせ死ぬのに何で生きたがるんだろうな」


「本能だからじゃない?」


 マモルに言われると、ハルオは笑った。


「まるで呪いだよな」


「呪い、かー」


 ハルオは続けて言う。


「そう、命は奇跡だなんて言う奴もいるけどさ、偶然地球の有機物が動くようになって、そこから続く呪いだよ」


「うん」


「命を失うのは怖いって、生き物は思うのに、奪い合って、結局は死ぬ。こんなの呪いだよ」


「そうかもしれないね」

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