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ポリコレウーマン

作者: ブジン

3年ほど前に書いてそのまま忘れていた超短編です。

今のご時世、ポリコレは部分的に廃れたりしていますが、その辺をふまえて読んでいただけると幸いです。

彼女は表現規制の戦士。


真面目を絵に描いたような24歳の彼女は、ビデ倫で1日に10本ものAVの内容をチェックする。


日々眼精疲労に耐えながら、「モザイク処理が甘い…」とかたまにつぶやきながら、びっしりとノートにメモ書きを走らせ、問題点は決して見逃さない。




実はそんな彼女にはビデ倫職員という表の顔とは別に裏の顔があった。


そう、彼女は人間を超える能力を持つ“ポリコレウーマン”なのである!


彼女は使命がある。問題ある表現を発見して撲滅するという使命だ。


性の商品化、人種、宗教、差別など悪影響のある表現は全て悪!潰さなければならない!


何故かって?


それこそが彼女、“ポリコレウーマン”の人生を掛けた使命だからなのだ!




18時に職場を出てから彼女のもう1つのライフワークが始まる。


さっそく懐に普段から忍ばせている“ポリコレ棒”が反応した。


【説明しよう! “ポリコレ棒”とは普段はこぶし程の長さのイボが付いている柔らかい黒い棒だが、問題表現を感知すると大きく伸びて反りかえり、高質化してポリコレウーマンの武器となるのだ!】




「どこだ?」


彼女は200メートルほど先のビルの一室を感知した。


精神を集中すると、聞こえないはずの遥か遠い室内の音声が耳に入ってきた。


少し遅れて彼女の脳内にはその室内の映像が投影され、「視る」ことができた。




室内では2人の男がテーブルを挟んで話をしているようだ。


『…このアニメのキャラクターでですね…特産品のアピールを…ファンが多いキャラなので…』


彼女にはすぐに状況が飲み込めた。


イラストレーターと地方の街の広報担当者が打ち合わせをしている。


町おこし事業のためのポスターを作ろうとしているらしい。


しかし、問題はそのポスターに使われようとしているアニメ調のキャラだ。


女の子のキャラがやたらと強調された大きい胸の谷間を見せながら、こちらを見て顔を赤らめているのだ!


「許せん…これは不必要な性的消費だ!」


彼女は眉を吊り上げて憤慨する。


そしてその場でジャンプすると、空中で閃光とともに変身した。




際どい露出過多のコスチューム、これが能力を開放した姿の彼女、そう“ポリコレウーマン”なのである!




変身した彼女は、空中を飛んで200メートルの距離を一気に詰める。そしてそのまま拳でビルの壁を破壊して、部屋に飛び込んだ。


2人の男は部屋に飛び込んできた女を呆然と見つめる。


「な、なんだ君は!?」




「そのような猥褻な絵画を公共の場で晒すことは許しません。滅します!」


ポリコレウーマンはポリコレ棒を振りかぶり、そして2人めがけて振り下ろす。




ガキン!


予期しない金属音が響いた。


盾を構えた屈強な男があわや被害者になろうとした者たちの前に立ち塞がり、ポリコレ棒を受け止めていた。


「お前は…!?」


ポリコレウーマンが後ろに飛んで一旦距離を取る。


「ヒョーゲンフリーマン!」




そう呼ばれた屈強な男はニヤリと笑い、真顔に戻るとポリコレウーマンと対峙する。


「ポリコレウーマン! まだお前は手前勝手な正義を振りかざして、罪なき人たちを苦しめているのか!」


ポリコレウーマンは再びポリコレ棒を身体の前で構えると、ヒョーゲンフリーマンを睨みつける。


「私は、人を不快な気分にさせたり傷付けたりする表現から弱者を守っているのだ! 邪魔をするな!」


ヒョーゲンフリーマンは盾を相手に向けて突き出して反論する。


「確かに最低限の配慮は必要かもしれない。だがそんなのはほとんど極一部の人間の意見だ! 極一部の人間の意見を通して規制していけば表現の幅は限りなく狭まっていってしまう! 私は表現の自由を守る!」




「うるさい! お前は悪だ! 死ね、フリーマン!」


ポリコレウーマンはポリコレ棒を振りかざしながらヒョーゲンフリーマンに突進する。


「フリーダム・イージス!」盾が発光して一回り大きくなる。


「ポリコレ・マシンガン!」ポリコレ棒による目に止まらぬ速さの連続攻撃が襲いかかる。


しかしその攻撃を盾が悉く弾く。




「弱者のためと言いながら、お前のそれこそが暴力なんだよ!」


ヒョーゲンフリーマンがポリコレ棒を素手で掴み、引き付けて相手の体制を崩した。


そして柔道技のように相手の身体を床に叩きつけた。


轟音とともに床が割れた。


2人はそのまま階下へと落ちる。




「うぅ…」


ヒョーゲンフリーマンの下敷きになっているポリコレウーマンが苦しそうに呻いた。


そんな女の姿に少し力を緩めた瞬間だった。


ポリコレウーマンがカッと目を見開き、


「乳・駄目絶対攻撃(NEWコレクトレスアタック)!」


ブルルルルン! という音がしたと思うと、ヒョーゲンフリーマンは吹き飛ばされ、壁を突き破って隣のビルの壁に叩きつけられていた。


【解説しよう! “乳・駄目絶対攻撃(NEWコレクトレスアタック)”とは乳房の高速振幅による顔面への往復ビンタである。男性は自らの顔を差し出す誘惑に逆らえないという回避不能な恐ろしい技なのだ!】




凹んだビルの壁から、血まみれのヒョーゲンフリーマンがよろよろと立ち上がる。


「むぅ…いい乳だったぜ…」




2人の因縁の対決はまだまだ決着はつかない…!


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