表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/26

「ズレてるから、生まれるもの」②


舞台:夜の屋上テラス。雨上がりの街を見下ろしながら、四人は缶コーヒー片手に語り合う。


夏美(空を見上げて):「でもさー、善と悪とか、男と女とか…なんで私たちって、何でも“分けて”考えたがるんだろうね?」


ちさと(軽く伸びながら):「それが“わかりやすい”からでしょ? 白か黒かってハッキリしてれば安心するし。でも、現実って、だいたいグレーじゃない?」


ひとり(蚊の鳴くような声で):「じ、実は…“二項対立”って、ずっと西洋哲学が使ってきた構造で…デリダはそれを…こう…“壊す”っていうか、“揺らす”というか…」


圭介(缶コーヒー片手に):「“壊す”じゃなくて“解体”だな。デリダの“脱構築”は、単に二項対立を逆転するんじゃない。“善と悪”は互いを必要とする存在で、その境界線がじつは曖昧だって示すんだ」


ひとり(目を伏せながら):「“善”は、“悪”がなきゃ定義できない…。でも、その“善”って言葉で思ってることと、実際の感情には“ズレ”があって……」


ちさと(ひとりの肩をポンと叩いて):「その“ズレ”が“差延ディファランス”ってやつでしょ? それがあるから、完全な意味の固定なんてできない…って」


夏美:「つまりさ。“善”が“正しい”って決めつけた瞬間に、“悪”が切り捨てられる。けど、実はその“悪”がなきゃ“善”の意味すら成り立たない…ってこと?」


圭介:「そのとおり。しかも、言葉で定義しようとした時点で“ズレ”が生じる。『善』という言葉は、もはや“本当の善”ではない。そこに“コピー”の限界がある」


ひとり(小声で早口):「わ、わたし、ステージで“演奏”しても…音が思った通りにならなくて…ズレてばっかで…でも、それって…意味がないわけじゃなくて…むしろ、そこから何かが…」


ちさと(にっこり笑って):「そうそう! ひとりちゃんの“音のズレ”があるからこそ、あの曲はあんなに“生きてる”んだよ」


夏美(腕を組んで):「正義の反対は悪、じゃなくて、たぶん“別の正義”ってやつね」


圭介:「そうやって揺らぐことで、新しい意味や関係性が見えてくる。境界線を曖昧にすることが、“考える”ってことなんだろうな」


ひとり(ぼそっ):「…ズレてる自分にも、意味があるかも…しれない、です…」


ナレーション(千束)


二項対立なんて、現実にはそう簡単に割り切れない。

「正しさ」と「間違い」なんて、時代や状況で変わるし、

本当の“意味”は、いつもその“ズレ”の中にあるのかもね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ