『その言葉、ズレてない?――脱構築という名の違和感』①
Scene:深夜のカフェ、ポストモダン特集の読書会にて
ちさと:「『善/悪』『真理/虚偽』って…ああ、こういう二択モノ、好きそうだねーひとりちゃん!」
ひとり(震え声):「いや…実は、それが間違いかもしれない、ってデリダは言ってて…ぼく的には、すごく、あの…共感っていうか…(もごもご)」
夏美:「え?『善と悪に上下なんてない』ってこと? ちょっと待って、それ倫理崩壊じゃん?」
圭介:「いや、デリダが言いたいのはそう単純な話じゃない。“対立”そのものが社会的に構築されたもので、それを前提に優劣を語るのが危ういってことさ」
ちさと:「ってことは、あれか。“悪”って言葉がなきゃ、“善”も定義できないみたいな?」
ひとり:「そうですそうです!(勢い余って立ち上がる) “善”っていう概念自体、“悪”があるから成立してるだけで…本質的にどっちが“上”とかって話じゃないんです…はっ…す、すみません…(着席)」
夏美:「でも、それって“言葉”そのものがズレてるってこと?」
圭介:「まさに。“悲しい”って言葉にした時点で、感じてる感情そのものとはズレがある。それが“差延”(ディファランス)ってやつだな。意識→言葉→文字、どこにも“ピタッと一致”は存在しない」
ちさと:「そっか。つまり“コピー”ってバカにされがちだけど、オリジナルとの“ズレ”にこそ意味があるんだね?」
ひとり(目を輝かせて):「“コピー”があって初めて、“オリジナル”の輪郭が見える…その関係性自体を壊して再構築するのが、脱構築…」
夏美:「えーっと、つまり、“恋愛”と“友情”の境界も、揺らいでてよくて…定義しなくても…いい?」
圭介:「話が飛んでないか?」
ちさと(笑いながら):「でもそれって、ひとりちゃんのギターにも言えるんじゃない?“上手い/下手”じゃなくて、ズレてる音にしか出せない感情がある、みたいな!」
ひとり(真っ赤):「……き、急に…それ…そんな…嬉し…や、やめてください…(ぷしゅー)」