自由ってなんだ? 公平ってなんだ?
(舞台:古本屋のカフェスペース。ロールズとノージックの本が机に並ぶ)
千里(真剣な顔で)
今日は「リベラリズム」と「リバタリアニズム」の話をしようと思う。
どっちも“自由”を重視してるけど、けっこう違うの。
ぼっち(小声で)
そ、そんなの……いきなりハードすぎる……
圭介(皮肉っぽく)
ま、端的に言えば──
「リベラリズム」は“弱者も守る”ために再分配を正当化する立場。
「リバタリアニズム」は“結果は自己責任”だから再分配に反対って立場。
夏美(目を輝かせて)
うわっ!「自由」を愛する者同士なのに、方向が逆なんだ!
千里
そう。リベラリズムの代表がロールズ。
彼は「無知のヴェール」を使って、“最悪の立場”を想定して社会のルールを考えようって言った。
つまり、「公平なスタート」と「格差は弱者のために使うべき」って主張。
圭介(ノージックの本を指で弾いて)
で、こっちはノージック。
彼のリバタリアニズムはこうだ──
「自分の才能で稼いだ金は自分のもの。国家が強制的に税金として取るなんて、
それって“人の労働を奪ってる”って話になる」
ぼっち(もじもじしながら)
えっと……じゃあ…才能のない人は……?
圭介(少しきつく)
才能がないなら、そこまでの結果しか出ない。
誰かの“努力”の成果を奪ってまで“平等”を作るのは、むしろ不公平だろ?
千里(反論するように)
でも、その“努力”のチャンスすら得られない人もいるよ。
貧困、障害、戦争、家庭環境……その人たちが“自由に努力できる状態”にするために、
制度は必要なんじゃない?
夏美(身を乗り出して)
千里の言うとおり!
“頑張れる自由”すら持ってない人に、
「がんばってないから貧しいんだ」って言うのはズルいよ~!
圭介(少しだけ目を伏せて)
……確かにな。
現実は、理屈よりずっと複雑だ。
でも、「国家が正義を決めて配る」ってことには、怖さもある。
ぼっち(ぽつりと)
“公平”って……“平等”とは違うんですね……
千里(優しく)
うん。“平等”は「みんな同じ」にすること。
でも“公平”は「それぞれに合った支え方をすること」。
夏美
たとえば、車椅子の人が階段を登れるようにスロープをつける──
それは「平等」じゃなくて「公平」ってこと!
圭介(タバコに手を伸ばしながら)
俺もな、昔は「自分の力で稼げ」って思ってたけど──
天気の子の帆高を見てて思ったよ。
“選べない環境にいる子ども”は、やっぱり守るべきだってな。
ぼっち(うるっと)
……あのとき、須賀さん……自分を犠牲にして帆高くん助けてくれましたもんね……
千里(静かにうなずく)
自由は大事。でも、“誰かが見捨てられてる自由”なら、それは不完全。
ロールズは「自由」と「公正」は両立できるって信じた。
ノージックは「自由」を最大化して、「公正」は個人に委ねた。
夏美(元気に)
つまり!
どっちも“間違ってない”けど、社会のあり方として選ぶなら……
自分が“生まれた瞬間の立場”がわからないなら、
ロールズ的なリベラリズムの方が“優しさ”があるってことかもね!
【幕】