ヴェールの向こうにある公平』
(舞台:喫茶リコリコのテラス。窓の外には夕暮れの街、机には「ロールズの正義論」の本)
ぼっち(もぞもぞしながら)
え、えっと……なんか最近、“格差”ってよくニュースでも出てきますけど……
努力してる人がたくさんもらえるのは……悪いことじゃない…ですよね…?
千里
うん、それも間違ってないよ。
でもさ、ロールズって人はこう考えたんだ。
「もし、自分がどんな境遇で生まれるか“まったく分からない”としたら、
どんなルールの社会だったら安心できる?」って。
圭介(コーヒーを置きながら)
つまり、“無知のヴェール”ってやつだ。
生まれが金持ちか貧乏かも、頭がいいか悪いかも、一切知らない状態で、
社会のルールを選べって言われたら――どうする?
ぼっち(目を丸くして)
え!? 自分が……どんな立場になるか分からないんですか?
それ……こわ……
夏美(腕を組みながら)
でしょ?だからロールズは「じゃあ、最も不利な立場でも生きやすいルールにしようよ」って考えたのよ。
「いつ自分がその立場になるかわかんないんだからさ!」ってね。
千里(指を立てて)
だからね、「すべての人に基本的自由を!」「平等なスタートラインを!」「格差はあっても、それが弱い人のためになるならOK!」
この3つの原理を提唱したの。
ぼっち(メモを取りながら)
う、うんと……えっと、ひとつ目が「自由はみんな平等に」……?
圭介(補足)
ああ。たとえば、表現の自由とか投票権とか。これは最低限、全員に平等に保障されるべきだっていう原理だ。
夏美
で、二つ目が「公正な機会均等」ね。
“スタートラインはみんな同じ”にしておこうよ、って話。
「お金持ちの家に生まれたから勝ち」じゃ不公平だしね!
ぼっち(小声で)
それって……私みたいに何も持ってない人でも、
ちゃんとチャンスがあるってこと、かな……
千里(まっすぐ見つめて)
そういうこと! ひとりちゃんだって、ライブで緊張しても、
公平な舞台があれば“本番”に立てるでしょ?
それが「公正な機会」なんだよ。
圭介(真顔で)
で、三つ目が――「格差原理」。
要は、格差があってもいい。でも、その“富”が社会の一番困ってる人たちを助けるならな、って条件付きだ。
夏美(ぐっと握りこぶし)
富裕層がめっちゃ稼いでも、その一部が税金になって福祉に回って、
車椅子の人とかシングルマザーの人が助かるなら、それって“公正”ってわけ!
ぼっち(ぽつりと)
……なんか……“努力した人が報われる”と同時に、
“誰も取り残されない”って、すごく……いいなって思います……
千里(微笑む)
うん、それがロールズの「公正としての正義」。
ただの「平等」じゃない。
“違い”を活かして、でも“弱い人”をちゃんと支える――
現実的で、あったかい考え方だよね。
圭介(窓の外を見ながら)
まぁ現実はそんなにうまくはいかねぇけどな。
でも、“無知のヴェール”って発想が、人を利己心から引き離してくれる。
俺はそこが好きだな。
夏美(最後に笑って)
てことで、みんなで“無知のヴェール”ごっこしよっか!
自分がどんな人間か知らない状態で、「バンドメンバー選ぶなら誰?」って――
ぼっち(震えながら)
えっ、それ……怖すぎません……!?
……だ、だれも私を選ばなかったらどうしよう……っ!!
【幕】