目覚め
「はっ!!」
ガバッと起きた。
頭の中ではあらゆる問題が発生する。
“人身事故”
“保険”
“解雇”
“謝罪”
“治療費”
etc‥
「あ‥死んだなぁ‥」
多分病院のベッドの上だろう‥
全くふざけた人生ダゼ!
部屋が無いから外に運びましたってか?
笑えるぜ!
ん??
辺りを見渡すと広い平原に来ていた。
市内の病院はこんな場所には無い。
そもそも道路や電柱一つ無い‥
「はいはい、俺は人殺しの中年ダヨ‥あてがう部屋もベッドも無いよ〜だ!‥‥‥マジ?」
もう一度確認する。
マジだった。
「つまりコレは‥死んだ?と言う事かな」
誰もいない。そして自分の服装に驚く。
「俺、こんな痛い奴だっけ?」
いつもの会社貸与の制服ではない。
なんかこう、メル◯ブ◯ン的な?
荒野でヒャッハー退治するオッさんが着ている服だった。
「意外と小物とか入って便利だな〜」
無意味にチャックを解放したり、コオロギを入れたりして遊んだ。幼児退行も過ぎるな‥
「おっ!トラックだ!!」
やや離れた位置に運転していたであろうトラックが停車している。傷一つ無く新車みたいだ。
「なんか厳つくない?」
色はメラメラと輝くブラック。
明らかに武器やレーダーらしき装備が満載されている。“戦車とトラックのハイブリッド”感が凄い。
「誰か居ますか〜?」
周りに誰も居なかったので窓を叩いて返事を待つ。
無人だ。
「チョイと失礼します!」
鍵は掛かっていなかったので運転席に座る。
「あー、やっぱあのトラックだ」
会社所有のよくあるトラックの内装だった。
一つだけ違うのは運転席中央にあるナビだ。
「カッケ〜!新装備か?」
車のエンジンを掛けてから画面にタッチする。
ピコン!
「画面認証と指紋認証を行います」
音声に従う。
「本車“バトルトラック”は田島義文専用車となります。解除には本人確認又は死亡した場合のみとなります」
「ラッキー!」
生きてるのか死んでるのか分からないが義文は楽しそうにしている。
「目的地を指定して下さい」
そんな事を言われてもまずこの世界が良く分からない。ダメ元で画面に触れる。
「現在地確認っと‥」
色々操作して確認する。
“クシロ湿原前”と表示される。
「アホか、日本じゃねーかよ。たまたまか?てか国は?」
“ホッカイド”
「ブハハ!舐めてんじゃねーよナビ!!でも日本ぽく無いんだよな〜」
1人で勝手に笑う。
「しかし腹減ったな〜‥喉も乾いたし」
ダッシュボードや後ろの積荷を確認してもヤバそうな武器や服・タオルの予備しか見当たらない‥
「どうすりゃいい?‥何とかならないか?」
独り言にナビが反応した。
「提案。15キロメートル先、レストラン・雑貨店あります」
何だよ音声反応すんのかよ!
しかし金も無ければ言葉や文字が通じるかも分からない。分からない事だらけだ‥
「金とか言葉どうすんだよ?」
「提案。漁業による取引」
ぶっ飛んだ提案だなぁ。
そう思いながら渋々受け入れる俺だった。