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プロローグ: 「帝都の影」

桜が満開を迎え、春の陽気が街を包み込んでいる。

冷たい風が少しだけ肌を撫で、青空の下、街は新しい季節を迎えている。

駅近くの高校では、卒業式が終わり、最後の春風を感じながら卒業生たちが一歩踏み出す日だった。


石田将人いしだ まさとは、18歳。

東京の小さな高校を卒業したばかりの、どこにでもいる普通の青年だった。

将来に特別な目標があるわけでもなく、ただ普通に高校生活を送ってきた。


卒業式の後、友人たちとともに校門を出た時、春の風に包まれて、将人は不意に肩の力が抜けるのを感じた。これから先のことが少し不安で、でもどこかで期待もしていた。

将来のことなど何も決めていなかったけれど、何となくこの先が自分にとって意味のある道だと思いたかった。


「お疲れ、将人マサト!」


名残惜しさも感じつつ友人たちと別れ式に来ていた両親と合流し

「卒業おめでとう。さすが父さんの子だ!」

「なにそれくさいセリフ~」

「一度は言ってみたかったんだ」

なんて馬鹿なこと言い笑い合いながら、その足で駅に向かって歩き出す。

まだ卒業生としての実感は薄く、ただの通り道の一つに過ぎないように感じていた。


だがその時、突如として世界は変わった。


ガァン!ガァン!


遠くから響いてきた音は、最初はただの工事の音かと思われた。

しかし、その音が大きくなるにつれて、周囲の人々が慌てて駆け足で走り去るのが見えた。

何かが起きている――でも、どこかでその出来事が自分には関係ないことのように感じていた。


でも、次の瞬間、目の前に現れたのは、信じられない光景だった。


異形の兵士たち。まるで人間とは思えない、無機質な金属のような体を持つ、顔が機械的な兵士たちが、周囲の人々を無視して歩いてくる。その目の輝きに、ただならぬ冷徹さを感じる。


「な、何だ……?」


正確には()()()()()

歴史の授業で習ってはいた。

停戦中とはいえ未だ日本はロシアと継戦状態であると。

停戦に至った理由がロシアの生み出した人道無視の「機械兵」と呼ばれる人体改造兵器によるゲリラ戦術に対する対抗策がなかった為だとも。

ゲリラ活動のために敵国にもぐりこんだまま本国と通信もせずに行動し続けているこいつらの存在を。


将人は足を止め、目の前の光景を呆然と見つめていた。周りの人々は恐怖に駆られ、必死に逃げ惑う。だが、その兵士たちは一歩一歩、まるで将人の方へ向かってきているように感じられた。


「将人っ!」


突然、背後から叫び声が響く。振り返ると、両親が必死に走ってきていた。その顔には焦りが浮かび、父親は前を見据えて走り、母親はその後ろを追っていた。だが、その瞬間、何かが起こった。


突然、父親が前に倒れ込んだ。その姿勢が崩れ、地面に倒れる前に、彼の胸元に何かがかすめたのを見た。それは見慣れない、金属的な閃光のように見えたが、次の瞬間、父は静かにその場に崩れ落ちた。


「お父さん!?」


将人はその場に立ち尽くし、目の前で倒れる父親を呆然と見つめた。

彼の表情からは苦痛の影が浮かび、その顔にはもはや命の息吹が感じられなかった。


「父さん…!」


その声も届かないまま、将人の目の前で何もかもが終わったかのように感じられた。

だが、次の瞬間、目の前で母親が倒れる姿を見た。

腹部を抱えて崩れ落ちる母親。

目の前で母親の手が空を掴んでいく様子を、将人はただただ見つめることしかできなかった。


「母さん!?」


言葉がうまく出ない。足元がぐらつき、目の前がぼやける。

彼の心は理解しようとしない。無意識に足を前に進めようとするが、体は思うように動かない。


その時、遠くから音がした。

先ほど父が死んだときにも聞いた音だ。

風を切る音、そして地面を打つ音。

しかし、何が飛んできたのかは見えなかった。

母親がその場でゆっくりと倒れ、地面に横たわった。その顔には何も言えない無力さが浮かんでいた。


「……死んだ。」


その言葉が口をついて出た。深く考えることもなく、ただそれだけが実感となって脳裏に刻まれた。

心の中で何度も叫びたかったが、体がその感情を抱ききれなかった。

涙がこぼれ、無力感が胸を締めつける。


その瞬間、背後から声が聞こえた。


「動くな!」


振り返ると、清潔な軍服を着た男が立っていた。

冷徹な表情のその男は、目の前の状況を一瞬で判断し、無駄な言葉をかけることなく、将人に手を差し伸べた。


「島さん…犠牲者は2人のようです。」


島という名前のその男は、冷静に状況を見渡しながら、将人に手を伸ばした。その目は、今にも動き出すであろう将人の反応を警戒しているかのようだった。


「こっちだ、早く!」


その声に、将人は何も言わずにその手に導かれるまま、足を踏み出した。

母と父を振り返ろうとしたが、すでに彼らの姿はそこにはなかった。

無力感が再び襲ってきたが、目の前の現実を受け入れるしかなかった。


「お前の名前は?」


島の声が静かに響く。


「石田、将人。」


「将人か。辛いな。」


そのまま無言で歩き続ける島。将人はそれに従い、ただ黙ってついていく。何を言おうとも、今の自分には目の前の現実を受け入れることしかできなかった。


歩くこと数分だったと思う、だが永遠にも近い程の時間をかけて軍の基地に到着する。

鉄製のゲートが開き、将人はその中の1室に導かれた。


「ここで少し休め、しばらくしたら話を聞かせてもらう。」


島は少しばかり将人に同情の色を見せて言った。

将人はその言葉をただ黙って聞き、頷くことしかできなかった。



ちゃんと小説を書くのは初めてなのでおかしなところも多いとは思いますが皆様の目に留まりますと幸いです。

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