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95話 愛と美の神

「さて、やはり貴様の後ろにそちらの勢力がおったか」


 そう言うとヘルブレインはこちらへと歩み寄ってくる。

 その威圧感は以前とは比にならないほどだ。てか勝手に俺のバックに神の派閥が前から居た事にされてんだけど。

 これ以上争いに巻き込まれても困るからここははっきりと否定しておかないとな。


「申し訳ありませんが彼女の事を言っているのだとしたら否定させていただきます。彼女とは本日初めてお会いしましたので」

「いや、そいつは知らん。その槍の事を言っておる。あの時、我の分身体を葬ったその槍をな」


 そう言ってヘルブレインが俺が手に持っている槍を指さす。あー、そういや今レイさんって姿かたちが変わってるからまだフィリア神だってバレてないのか。あの爺さんの魔術すげーな。

 ていうか、じゃあもうあの時にはバレてたんだ。なら、あん時に爺さんと会ってるせいで言い訳できねえな。

 しゃあない。そんじゃもうこれ以上否定すんのも無駄だな。


「……下種め」


 そんな中、隣にたっているフィリア神ことレイさんがそう言葉を零す。

 その視線の先にあるのは未だ傅き続けている大きな魔物だ。背にはとんでもなく大きな刀を携えている。

 まあ確かに神様からしたら下種なのか? 身分がめっちゃ低い的な?

 あんまりその言葉の真意がくみ取れない俺を察してかそれとも心の中を読んでか、爺さんが語りかけてくる。


『どうやらあ奴。配下の者達を無理矢理に合成してあのような異形を作り出したのであろう。まったく、あ奴らはどうしてこうも異形を作るのが好きなんじゃ?』


 その言葉を聞いて俺は納得する。なるほどな。だからレイさんは怒っているのか。

 そう思ってみると確かにあの魔物、どこか物悲しそうに見えなくもないな。うーん、やっぱり気のせいかも。

 何かこっちの事めっちゃ睨んでくるし。悲しみというか憎悪みたいな感じだ。


「人間如きが我らに歯向かうか? まあ知らんだろうな。我らには神性が無ければ傷すら付けられぬというのに」

「はて? シンセイとやらが何であるのかは知りませんが、以前私は確かにあなたの分身体を破壊しましたよ?」


 そう言って少し煽ってみる。だが全く効き目はないようだ。


「は、は? あ、あれは分身体だから!」


 訂正。めっちゃ動揺してた。煽ったのに怒るんじゃなくて焦るんだ。

 

「ジョーカーよ。そこの駄神は君に任せても良いか?」

「もちろんですとも」

「ありがとう。私はあの子達の相手がしたくてな」


 そう言って見つめる先に居たのはあの巨体を持つ魔物。

 愛と美の神という名は間違いじゃなかったらしい。まさか敵側にも同情をかけるとはな。


「ほう。我を貴様一人で倒すと?」

「はい。その方が効率が良いので」

「戯言を!」


 そうして俺とヘルブレインとの戦いがまた始まるのであった。





「可哀想に」


 フィリア神ことレイは目の前に立つ存在を見上げてそう呟く。

 その内側に大きな深い苦しみがあることを彼女は知っていた。

 愛と美を司っている彼女だからこそ最早理性など残っていない化け物からも感情に気付くことができる。

 更にはその微かなる神性の痕跡からかつての同僚の存在も感知できる。

 神々の戦いには何も善なる神が全てオルウィスク神の味方であったわけではない。

 むろん、最初こそ味方ではあったが途中で寝返ったケースがまま多い。

 それが故に敗北を喫したわけだが、まさかこういった形で再会するとは彼女は思っていなかったのだ。


「まったく、非道い事をする」


 そう呟く彼女の手は強く握りしめられる。今持っている武器は己が拳しかない。


「助ける!」


 大地を踏みしめて一瞬のうちに加速した彼女は凄まじい衝撃波を伴って化け物の目の前へと移動する。

 拳を腰辺りの所で引く構え。それはまさに空手のような構えである。


「武神流拳法、聖覇打」


 凄まじい速度で打ち出されたその拳は撃力を伴って化け物の表面に突き刺さるのであった。





 ひゃー、あの神様どこが武闘派じゃないんだか。

 遠くの方で頑丈そうなあの化け物の体に拳一つで風穴を開けている姿を見て俺はそう思う。


「何をよそ見している?」


 そう言ってヘルブレインが忌々しきあの黒い焔を纏った剣を振るってくる。

 それを俺は喋る槍こと「神槍グングニル」で防ぐ。

 俺は以前、この炎で死にかけた。

 いや実質死んでいた。

 それも分身体とは違い、今は本体。

 威力も馬鹿ほど上がってんだろうな。


「慎重にやらないとな」


 俺は片手にグングニルを持つ。そしてアイテムボックスの中から取り出したリボルバーをもう片方にホルスターで取り付ける。

 こいつ相手なら接近戦はグングニルで、ピンチになって距離を取る時はこいつを使えばやりやすそうだ。


「ちっ、その武器にも神性が付与されておるのか。厄介な」


 厄介なってのはこっちの台詞だな。逆に言えば神性が付与されてない攻撃は一切効かないんだから全然攻撃に柔軟性を作れないんだし。


『人? 人型の魔物?』

『多分、人型の魔物っぽいな』

『でもジョーカーと話通じてるっぽいぞ。ちょい遠めだから会話の内容は聞こえないけど』

『てかあれって前の配信の最後に出てきた奴じゃ?』

 

 そうか。初めて見た人からすればあれは人にしか見えないのか。

 対峙してる身としてはこんなにオーラを放つ人間なんて見たことないって思うけどな。

 いや1人だけ例外がいたな。イグナイトとかいう。

 てか緊急事態すぎて配信のこと忘れてた! いつもの奴、やるか。


「さてお待たせいたしました、観衆の皆々様方。それではこれよりショーを始めたいと思います」


 そう言うと俺は手を広げ天井を見上げる。


「神との闘い、という名のね」


 同時にリボルバーを撃ち、改めて開戦の狼煙を上げるのであった。

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