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94話 冥界配信

 冥界。その名を聞けば誰もがどれほど恐ろしい場所なのだろうかと想像するだろう。

 俺もその内の一人だった。今日までは


「……何も見当たりませんね」


 そこに広がるのは空虚そのもの。一応、俺自身の生存報告をするために配信をつけたはいいが、まったく以て取れ高がない。

 久しぶりの配信がこんなことになってしまえばコメント欄でも不満が上がらない訳もなく。


『本当にダンジョンなのかここ』

『あんま面白くねえな。すまん、イグナイトの配信いくわ』

『まったくもって魔物が居ないんですけどー』

『まあ人命救助って目で見ればこれで良いんだろうけど』


 俺だってこんな配信を見せたかったわけじゃないんだよ!

 隣では常に周囲を警戒しながら歩いている黒髪のフィリアさんもといレイさんが居る。

 彼女はコメント欄とは違ってまったく退屈する気配はない。

 はあ~、この忍耐力を見習ってほしいものだ。

 そう思っているとレイさんが俺のすぐ隣に来ると、俺の耳元にまで口を近づけてくる。


「ここまで気配がないのはおかしい。ついこの間までここら辺はヘルブレインの配下で溢れかえっていた筈だ」

「そうなんですか?」

「うむ。でなければ私はとうに逃げていた」


 確かにそうか。配下が居ないのならヘルブレインに見つかることはないし、俺が通れない神だけが通れるような道みたいなのを通って逃げられただろう。

 それをしなかったということはこの状況が異常であるということへの最も確かな理由となる。


「不気味なほどに静か……つまりそういう事であろう」


 一箇所に兵力を集中させている。

 既に俺達が牢屋から抜け出しているのは知っていたという事なのか。


『ほっほっほ、そうではないだろうのう。フィリアとは違い、人間であるお主が居るのならばわざわざ道中で待つ必要はない。フィリアがお主を見捨てる訳がないと見越して入り口だけ抑えているのであろう』


 何これ、頭の中に直接語りかけてきて気持ち悪い~。オルウィスクは配信に声が載ってしまうと不味いからという理由でこんな風に頭の中に直接語りかけてくる伝達方法をとっている。

 便利だけどしばらく慣れそうにないな。何ていうか頭の中に取れない異物感があるみたいな感じだ。


「……おっとそう言っている間に辿り着いたみたいですね」


 目の前には大きな扉が聳え立っている。

 まあ大体察しはついてるけどこの中に配下達がウジャウジャいておまけにヘルブレインの本体とも戦わないといけないんだろうな。


「どうでしょう? 何か気を付けることはありますか?」

「現状無い。強いて言うなら私がそこまで戦闘に特化していない事か」

『なんじゃ、フィリアよ。いつもの奴はどうした?』

「いつもの奴?」

「ああ。私はいつも棘の付いた棒を振り回して戦っているんだ。ま、ここに来るときに失くしたんだがな」


 一応、配信がついているためオルウィスクへ返事するのではなくあくまで俺と会話する体をとってくれる。

 まあそんなことしなくても別にオルウィスクの声は聞こえないからただただフィリアさんの様子がおかしいってだけでこっちには被害こないんだけどな。


『まあ安心せい。フィリアはこれでも神じゃ。一定の戦闘力もあるし、第一治癒の力は随一じゃからのう』


 なるほどね~。それならま、心配ないか。

 前の戦いみたいに死にかけても回復してくれるんなら負けないだろ。


「それじゃあ参りましょう」


 俺はそっと大扉へと手を当てる。

 重い。何の素材でできているのかは分からないが、少なくとも石なんかじゃないな。

 特殊な金属なのか。まあここ人間界じゃないらしいし俺が知らない素材とかがあるのかもしれない。


「……あー忘れていた。これを開けるには神性が必要なのだった」


 俺が扉を開けるのに苦戦している隣でそんな声が聞こえたかと思うと、次の瞬間にはさっきまでの重さが嘘かのようにスーッと軽々と開いていく。


「知ってましたよね?」

「すまんな、忘れてた」


 俺が小声で確認すると本当に忘れていたんだろうなと思わしき顔でそう言ってくるもんだから、これ以上追求するのも違うけどさ。

 本当なのか疑いたくなるんだよな。だって人間の俺だけじゃ脱出できないとか今まで言ってきてたし。絶対このことだったろ。


「ふむ。来たか。反逆者どもよ」


 俺がフィリアさんの顔をじいっと見つめている最中、前方から聞いたことのあるような声が聞こえてくる。

 声が聞こえた方を向くと、そこに居たのはいつぞやに会ったことのあるあの女神と……。


『な、なんだありゃ?』

『でかすぎない?』

『何か凄い禍々しいんですけど』

『巨人くらいある?』

『いやもっとだろ』


 俺達の予想とは裏腹に目の前に現れたのは配下達がずらりと並んでいる光景などではなく、女神の隣にたった一体の巨大な魔物が傅いている様であった。

ご覧いただきありがとうございます!


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