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82話 ユグドラシルの攻略者

 ジリリリリッ……。

 そんな音が聞こえて俺は目を覚ます。そしてすぐに仮面をつけようとしてその手を止める。

 そうか、今はそうする必要ないんだった。何故ならここはダンジョン内部の拠点ではなく、我が実家だからである。

 まあ正直あのメンツに対して正体を隠す必要が果たしてあるのかは疑問だけど。

 何週間も生活を共にした仲だ。皆の距離はかなり縮まったことだろう。

 だけど俺だけずっと正体を隠していたせいでどこか距離があった。

 次は正体明かそうかな。一々仮面を持ち上げて食事するの億劫だし。

 ベッドから抜け出し、寝巻きから私服へと着替えると階段を降りていく。

 まだ学校は休暇期間だし特にこれと言ってやることは無い。

 

「おはよ」

「あら? もう起きたの? 珍しいわね。いつもだったらもう少し寝てるのに」

「そういえばそっか。旅行で早起きが多かったからかも」


 因みに我が母親には大規模攻略の事は友達との旅行と言っているため、それだけ聞くとふーんと納得した様子を見せる。


「朝ごはん食べる?」

「うん」

「オッケー。じゃあ作るからそこでテレビでも見て待ってて」

「お言葉に甘えて」


 テレビをつけるとそこにはいつもと同じランキングについての話題をやっていた。

 

『上位層はあの『ユグドラシルの攻略者』達の名前が占めておりますな』

『そのようですね。特にこの前まで98位でした残間世界さんが56位にまで上がっているのは凄いですね』

『それに新進気鋭のシロリンこと白崎瑠衣さんが遂にナンバーズの仲間入りしたのは注目すべき点です。長い間、ナンバーズの面子が入れ替わることなんてありませんでしたからね』

『それほどあの神の試練である『ユグドラシルの試練』の難易度が高いという事でしょうな』


 へえ、白崎も遂にナンバーズの仲間入りかー。これでとうとう上位9人が全員あのダンジョンの先行部隊とイグナイト達で埋まったって事か。

 ま、ファーストが俺だったらの話だけど。

 てかこう見るとやっぱりあのダンジョンの攻略の注目度って言ったらとんでもないな。

 ネットニュースもテレビのニュースも連日取り上げ続けている。

 そして徐々に『ユグドラシルの攻略者』という名が世界に浸透していった。「ユグドラシルの試練」というダンジョンを攻略している者達だからだそうだ。

 なんか俺の『異能』と似てて地味に気に入ってる。


「そういえば迅も特級探索者なんでしょう? 参加したら? 有名人になれるかもよ?」

「ヤダよ。面倒くさい」


 ホントはもう既に参加してるし何なら前線で戦ってるけど。てかちらほらネット上でも特級探索者で唯一、『ユグドラシルの攻略者』に参加していない俺に対しての批判もあるの面倒だし、俺の名義でも参加しようか迷ってるけど。


「ま、それならそれで良いわね。危険なこともないし」

「うん」


 母さんはそれ以上追求することもなく食事をテーブルに運んできてくれる。


「いただきまーす」


 母さんが作ってくれた焼きそばにワサビを入れて豪快に啜りながらテレビの続きを見る。


『それにしても探索者協会も本格的にユグドラシルの試練の攻略を進め始めましたね~』

『そうですね。今までのように特級探索者達だけじゃなく、上級探索者達の中から攻略部隊のメンバーへの募集を開始しましたからね。余計に世間からの注目度は高くなったことでしょう』


 ふ~ん。上級探索者達からとうとう募集し始めたのか。大方、拠点の防衛と強かったら殲滅部隊の手助けとか任されるんだろうな。

 先行部隊の俺にはあんまり関係ないか。先行部隊、あれ以上人増やすつもりもないし。


『認められれば特級探索者にもなれるらしいですね』

『認められれば、といってもランキング入りするというトンデモなく難しい条件のようですがね』


 う、何だこの焼きそば。めちゃくちゃ鼻にツーンと来るんだけど。怪しい薬でも入れられたか?……あ、そういや自分で流れるようにワサビ入れてたんだった。

 しまった。いつもの癖でつい。焼きそばはカラシのほうが合うってのに。ワサビもうまいけど。


「これ、向井君が応募するらしいよ」

「へえ、向井が……へ?」


 一回母さんの話を聞き流し、内容を頭の中でかみ砕いてからもう一度母さんに聞き返す。


「向井ってあの向井?」

「そうそう。スーパーに買い出しへ行くときにダンジョンに向かってる途中の向井君とバッタリ会ってね。ダンジョンに行って実績を積んで『ユグドラシルの攻略者』に応募するんだって言ってたわよ」

「マジ?」

「マジ」


 おいおい、あいつの実力だったら絶対上にあがってくるだろうしもしかしたら殲滅部隊とかまでくるかもしれねえじゃねえか。

 普段の俺の所作を一番近くで見ている男だ。共同生活なんてしたら一瞬で正体とかバレちゃいそうで怖いんですけど。

 そんな時であった。ブルッと携帯のバイブ音が聞こえる。スッと取り出し通知を見るとまさに噂の渦中である、「向井流星」の名がそこにはあった。

ご覧いただきありがとうございます!


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