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6話 配信の経緯

「それで配信の事って?」


 教室から連れ出され、誰の目にもつかない所に連れてこられた俺は開口一番にそう尋ねる。


「実はね、私と押出君の二人でダンジョン攻略するって言ってたんだけど流石にインパクトが無いかなって思ってあと4人くらい珍しい異能の人を呼ぼうと思ってるの。良いかな?」

「なんだそんな事か。良いんじゃないか? 俺だけじゃ絵がもたないだろうし」

「あ、いや押出君のせいじゃなくて、こっちの企画力のせいなんだけど」


 さすがは人気配信者だ。出演者へのフォローも徹底している。

 いや出演者って言うとなんかこなれた感が出てむず痒いな。

 じゃあ何て言えば良いんだ?

 あ、てかそれならこの事も聞いておきたいな。


「その人達って強い?」

「うん。ランキングには載ってない人も居るけど強いよ。全員上級探索者さんなの」

「なるほど」


 それは良かった……ってならないよ!?

 そんな所に一人だけやけに弱い一般高校生の俺が居て大丈夫か? 炎上しない?


「あ、あと配信するダンジョンは上級探索者も多いから『挑戦者の塔』って言うちょっと強いダンジョンなんだけど」

「挑戦者の塔……あーうんうん。大丈夫大丈夫」


 実は全然知らないけど挑戦者ってついてるだけでチョロそうだという判断を下す。


「良かった。まああそこは番人にさえ手を出さなかったら大丈夫だから。それじゃ、土曜日よろしくね」


 そう言って白崎が離れていく。

 番人?


「何か不穏なワードだけが聞こえてきたな」


 まあでも俺以外はベテラン探索者なんだし大丈夫だろう。そうあまりにもフラグのようなことを考えながら俺も教室へと戻るのであった。



 ♢



 俺が教室へ戻ると、何故だかいつもよりも視線を感じる。いや、いつも感じているのは自己中心的感情から来る気のせいであり、今感じるのは明らかなる視線である。

 本当の注目というのはこのことなんだなと全身に染み渡らせながら俺の机へと戻る。


「よう、向井。何か俺見られてる?」

「まあ白崎に呼ばれた男子生徒ってので目立ってんだろ。わざわざ人が居ないところへ行くなんて告白か何かと勘繰ってる奴も出てくるさ」

「え、俺なのに?」


 基本的にそういうのはある程度顔がカッコいいとかいつも元気で楽しそうとかそういった特徴のある男子にしか起こらない。

 その点、俺は全くそういったモテ要素が排除された逆完全究極体である。

 したがってそのようなイベントが起きるわけもないし、実際に起きていない。


「お前、自分の事過小評価しすぎだろ。少なくとも実技演習ならクラスでもトップクラスだぜ? お前」

「まあ、実戦だけならな。だが実技演習には異能の扱う技巧力とかも含まれてるし」


 それらを含めれば実技演習でも向井の方が断然上であろう。


「ふっ、我ながらあまり取り柄のない男だぜ」

「それを自分で言うところが逆に自信ありげに見えるんだよ」


 向井は良い奴だな。こんな俺でも自己肯定感を高めさせようとしてくれる。逆に気を遣わせてないか心配になるけど。


「ま、何でも良いさ。どうせ俺が活躍する出番はほとんど無いだろうし」



 ♢



「……嘘」


 時は実習授業での訓練用魔物との授業風景にまで遡る。白崎瑠衣はとある青年の訓練を見て驚いていた。

 この学校には自分より強い者は居ない、そう思い込んでいた白崎に衝撃を与える出来事であったのだ。


 白崎の掌には小さな筒がある。これはダンジョン攻略の際に手に入れた他者のステータスの数値を見ることが出来るという『魔法筒』だ。

 ただし条件があり、自分よりも下の数値でなければ見ることが出来ないというものである。

 そしてこの条件はランキング常連である白崎にとって無関係なものの筈だったのである。


「あの人……数値が見えない」


 訓練場内の特殊な環境だからなのかと他の生徒を見るとちゃんと数値が見える。

 その青年、押出迅のステータス数値だけが見えないでいたのだ。


「どういう事? ランキングには私より上にあの人の名前はなかったはずだけど」

「ねえねえ、白崎さん。その筒って何?」


 そこまで考えて初めて自分が生徒たちに囲まれていることに気が付く。

 内心で驚き慌てているのを取り繕ってその生徒たちの相手をしながら青年の動きを窺う。

 一々、謎のポーズは取っているため少し遅延は生じているが、あのペースでいけば白崎よりも少し遅いくらいの成績だろう。

 もしも謎のポーズが無ければ圧倒的に白崎よりも早い。


「私よりも上位のランキング。その上には押出君の名前なんて存在しない。もしかして……」


 ()()()()()? この世界には存在しないとされているランキング1位の別名が白崎の頭の中で反芻されていく。

 そしてそれを確認するべく、白崎は行動に移そうと考えたのであった。

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