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104話 先行部隊の進捗

 向井達が殲滅部隊で奮闘している一方で、先行部隊は前回の攻略のノウハウもあり、見る見るうちに攻略を進めていた。

 

「龍牙さん」

「うん、任せて!」


 目の前に現れた巨大な竜を、龍牙の槍が貫く。

 その瞬間、龍は飛翔する力を失い、その場に落ちる。

 

「ウジャウジャ居ますね」

「だね」


 先行部隊は未攻略地帯を少数部隊で探索しているため、魔物の数が殲滅部隊に比べて多い。

 それもより凶悪な魔物達が。

 しかし、それらを何の苦も無く倒すのがユグドラシルの攻略者と呼ばれる所以なのである。


『やっぱり安定感が違うな』

『向こうは怪我とかあってドラマがあるからそれも良いけど』

『圧倒的に敵を葬っていくのもそう快感があっていいよねー』


 先行部隊の同時視聴者数は殲滅部隊のそれとは比にならないほどに多い。

 ほとんどの国民が先行部隊だけを3窓くらいして見ているほどである。

 西園寺部隊:27万、天院なぎさ部隊:25万、天院龍牙部隊:30万

 対する殲滅部隊は数千~よくて数万といったところだろう。

 一方でイグナイトの配信では50万ほどの視聴者がいる訳だが。

 とにもかくにも先行部隊と殲滅部隊では注目度が桁違いなのである。


「あなた達、動きがバケモンね」


 千条ちとげは思う。自分一人だけ今何もできていないと。

 それだけに前の二人が強すぎてついていけないのである。


「千条さんが後ろで控えてくれているお陰で不意打ちを気にせず暴れられてるだけですよ」


 千条の異能は『棘の護り』。攻撃してきた対象を反撃する棘の付いた結界を展開することが出来る完全防御特化の能力である。

 更にはその結界を敵に押し付けることで攻撃に転じることもできる。

 こうした魔物が多く跋扈するダンジョンの前線を張る探索者としては最もありがたい存在なのである。


「ちょっと休憩しようか」


 かなり攻略が進んできたところで龍牙が提案し、それに皆が同意する。

 

「千条さん、お願い」

「分かったわ」


 そう告げると三人の周囲を半透明な棘の鎧が囲っていく。

 こうすることで敵の不意の襲撃にも安心して対応することが出来る。


「あ~、千条さんがウチにいて助かったよ。普通、ダンジョン内部でこうやってリラックスできることなんてないんだから」

「ふふ、そう言ってくれるとついてきた甲斐があるわね。ありがと」


 龍牙の異能は『ステータスドレイン』というだけあって、かなり強力な能力の代わりに消耗も激しいのだろう。

 心底疲れたといった顔をしている。

 一方で白崎は険しい表情を浮かべていた。


「どうしたの? 白崎さん」

「……いえ、何でもないです。千条さん」

「そう? なら良いんだけど」


 白崎が険しい顔をしているのは無論ジョーカーの事である。

 皆からすればジョーカーは得体の知れない探索者という位置付けなのであろうが、先行部隊の面々からすれば命の恩人と言っても過言ではない。

 それも白崎は特に仲の良い同級生という認識なのである。

 その存在が消息不明というのはまだうら若い彼女からすれば途轍もなく重大な心の重荷となっていることに違いないのである。

 しかしそれを見せれば士気も下がってしまう。だからこそ白崎は自身の内に秘めたまま過ごしているのである。


『ここのメンツえぐいな。ナンバーズが2人かよ』

『ちとげっちもこの間、ランキング上がってたし、そう考えたらここトップレベルだよな』

『まあ流石に全員がナンバーズのイグナイトには負けるけど』


 コメント欄は休憩中でここぞとばかりに加速していた。

 戦闘中に反応する余裕がある者などジョーカー以外いない。

 故に戦闘以外の時間ならば返事される可能性が高まるのである。


「じゃあこの先の戦い方について改めて確認しておこうか」


 そうしてダンジョンのど真ん中で3人はこの先の攻略の行方を定めるべく話し合いを始めようとする。

 そのタイミングで全部隊の隊長に配られた、笛の音が鳴る。

 その笛の音が意味するのは、次の階層をどこかの部隊が見つけたという合図である。

 その音を聞いた時、3人は顔を見合わせるのであった。


「早くない?」

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