性格の証明
2347年、ネオンが織りなす東京の夜空の下、私は路地裏で震えていた。
「おい、ゴミクズ、早く動け!」
背後から男の声が響く。私は顔を上げると、鋭い眼光を向ける男が立っていた。彼の背中には「優良市民」の刻印が光っている。
この国は、資本主義を捨て、性格主義へと転換してから100年以上が経っていた。
「性格が良い」と認定された者は富と地位を得、そうでない者は貧困と差別という淵に落とされる。
「性格が良い」とは何か?
誰も知らない。国家機密として厳重に管理されているのだ。
「人のために動く」「騙さない」「すぐに怒らない」といった曖昧な基準だけが公表されている。
私は、幼い頃に両親を亡くし、孤児院で育った。
孤児院では、常に「優良市民」になるための教育が行われていた。
しかし、私は、どんなに努力しても、その基準を満たすことができなかった。
「お前のようなゴミは、社会の邪魔だ!」
男が蹴りを入れてきた。私は地面に倒れ込み、痛みで意識が朦朧とする。
「性格が良い」とは何か?
私は、その答えをこの世で知ることはできないのだろうか?
夜空に広がるネオンは、まるで嘲笑っているように見えた。