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日々に埋もれる

作者: 日野あべし

「ただいまー。」

「おかえり〜。お風呂沸いてるから先に入っちゃいなさい。」

いつも通り家に帰ってくる。

母さんがお風呂を沸かしといてくれて出迎えてくれるのもいつも通りだ。


俺は制服をそこら辺にほっぽり出して下着のままお風呂場に向かう。

「だから制服脱いだらハンガーにかけてって言ってるでしょ!すぐシワになっちゃうんだから!いっつもあんたはそんなんなんだから…」

母さんの小言を適当に返事をして聞き流す。

「ちょっと!聞いてるの!」

台所から母さんの大きな声が聞こえる。

「わかってるよー。」

母さんのブツブツ言っている声が聞こえる。

これもいつもの通りだ。


「ふぅ〜。」

体を洗い湯船にゆっくりと浸かる。

部活で疲れた後の体で風呂に入る時間は大好きだ。疲れがまるで溶けていくようなこの感覚がたまらない。

そうしてボーッと風呂場の天井を見上げる。

そう言えば部活の後に高梨が先生に呼ばれてたっけか。

何を話していたか聞こえなかったが、高梨は血の気が失せた様な顔をしてそのまま帰ってたっけか。

高梨に何があったんだろう…。

「ただいま〜。」

父さんの声だ。いつも俺が風呂に入ってるタイミングで帰ってくる。

今日もおんなじだ。

そういえば今日の夕飯はなんだろう。


今日の夕飯は俺の大好きなアジフライだった。

父さんも風呂から上がっていて、野球の試合の放送を見てビールを飲みながら夕飯を食べていた。

「たかし、部活の方は順調か?」

「まぁまぁかな。スタメンはなんとか取れそう。」

「おぉ!やったじゃないか!」

父さんは俺の部活動を結構気にかけてくれている。父さんなりに家でのトレーニング方法や体の休め方などを調べてくれる程だ。

正直ちょっとやめて欲しい所もあるが、反面嬉しい気持ちもある。

「そういえば今日部活で高梨がさー…。」

「おぉーーー!ナイスバッティング!流石清永だな!」

父さんが歓声を上げる。どうやら父さんが応援してる野球の球団のバッターがホームランを打った様だ。

「で、部活がなんで何かあったのか?」

「…いや、なんでもない。」

父さんの喜んでる姿を見たら話す気がなくなってしまった。

「あなた、野球を見るのはいいですけど話ぐらい聞いて下さいよ。」

「だから今聞こうとしてるじゃないか。」

今度は父さんと母さんの言い合いが始まった。

これもいつもの光景だ。

うちの両親は決して仲が悪いわけではないが、こういう小さな言い合いはちょくちょくある。


俺はそんな2人の言い合いを聞き流し父の見ていた画面を何とは無しに見る。

野球の合間のニュースで遠い国で戦争が始まりそうな事を報道していた。その影響は俺たちの住んでるこの国にも及ぶかもしれないとの事だった。

俺はそれを見てちょっと心配になる。

(戦争…怖いよな…。)

父さんと母さんの方を見ると言い合いが終わって普通に会話をしていた。

「ほら、たかし。ボーッとしてると冷めるわよ?」

「あぁ、うん。」

そういえばお腹はまだ減っている。母さんのアジフライは美味しくて、その後はバクバク食べてしまった。


夕飯も食べ終わって、いつも通り自分の部屋で友達とSNSで連絡を取っていた。

話題は最初高梨の話題だったが、話してるうちに隣のクラスの山内さんが可愛いという様な話題に移っていた。

「マジで山内さん可愛いよな?」

「それは思うわ。今度告ってみようかな〜、なんつって!」

「いやぁ、あれは彼氏いるんじゃないか?」

「そういや噂で大学生と付き合ってるっていう噂が…」

そんな話をして夜も遅くなってきたので眠る事にした。

明日は朝練だ。早く起きなくちゃ。

(そういやなんか忘れてる気がするな。まぁもういいや…眠いし…。)

その頃にはもう俺の頭の中のモヤモヤはどこかに行ってしまっていた様だった。

そうして俺はいつも通り、眠りについたのだった。

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