間奏:笹部悠高が惚れた真昼の光
おまけ1「能力者の作り方」
悠高「華清にいる能力者は皆、人工能力者なんだ」
悠高「科学で作り出した能力者を作る「種」」
悠高「二桁以降は食事やサプリでその種を摂取して、能力を行使している。種の効果が切れたら無能力者になってしまうよ」
悠高「僕ら一桁はその種を生み出すための実験で、その種を身体に埋め込まれているんだ」
悠高「その種を取り出すことはできない。効果を無効化することもできない」
悠高「無限に栄養を摂取し続けるその種に、僕らは近い将来殺される」
悠高「・・・その近い将来までに、精一杯生きられたらなって思うよ」
悠高「やりたいこととかは、できないだろうけどね」
おまけ2「姉と私」
久遠「燐音」
燐音「ああ、姉さん。こんなところまでわざわざ来てくれたの?」
久遠「ええ。あまりこっちには来れないでしょう?それに、本土には家族で来れないし。せめて私だけでも顔を見せないとなって思うんだ。本土で事業を始めたとは聞いたし、手伝えることがあればなって。それにほら、家族皆で本土にこれないしさ・・・譲が本土渡航の能力制限に引っかかっているし」
燐音「気を遣わないで。姉さん、ただでさえ忙しいんだし・・・それに、今は愁一さんと譲の側にいてあげてよ。もうすぐ退院できるんでしょ?」
久遠「うん。ありがとうね、久遠。じゃあ私、次の便で鈴海に帰るから」
燐音「そうして。それに今度は家族皆で会いに来てよ。そろそろ完成しそうなんだ。能力者の能力を制限するリング。これがあればきっと、愁一さんはもちろん、譲も本土に入ってうちに遊びに来れると思うし」
久遠「ありがと。楽しみにしてるね!今度はリングをつけて、家族三人で来るからさ!」
・・
燐音「あれが、姉さんとした最後の会話になるなんてね・・・」
譲「燐音叔母さん」
燐音「どうしたの、譲」
譲「いやぁ、燐音叔母さんの能力制御リングのお陰で本土に渡航できるようになって、こうして華清・・・母さんの実家に顔を見せられるとは思っていなかったから。なんか感極まりそうでさ」
燐音「・・・色々と、間に合わなかったけどね」
譲「気にしなくていいんじゃないかな。それに、始まりの理由には間に合わなくても・・・燐音叔母さんの研究は鈴海に隔離されていた皆の希望になった。ありがとう」
燐音「・・・うん」
・おまけ3「僕の、俺の、一番の友達」
・・・背中を押すのはとても大変だった
俺の一番の友達は、他人に化ける能力があった
誰かになってばかりで、自分のことなんて上手く考えられていなくって
だからこそ、彼女から向けられる好意にも
自分が抱く好意にも気が付かなくて、俺が背中を押さないとなって思うことは多々あった
けど・・・
「・・・真昼」
「なあに、巡」
「悠高は、優良物件だぞ。俺のお世話もしてくれる。朝起こしてくれるし、ご飯食わせてくれるし、後、夜は子守唄歌ってくれる」
「えぇ・・・」
「残り少ない時間、誰と一緒にいるか・・・真昼自身が決めるべきだと思うぞ?」
「・・・私は人の心を自分の都合のいいように操作する能力。とてもじゃないけど、孤独死したほうがいいような人間だよ」
けど、だからといって、あいつの想い人もそう簡単に動くような存在ではなかった
能力が影響して、感情をこじらせている
藤本真昼という少女は、そういう少女だった
けど、俺は知っている
悠高が、能力を得る前から真昼のことを見ていたことを
能力の影響がない内から、ずっと想っていたことを
「大丈夫。能力なんて関係ないさ。悠高は、そんなヤワな男じゃない」
「・・・」
「親友の俺が保証する」
それからも色々と工作をして、背中を押し続けて・・・
冬になった頃かな
俺は少し前の夏に有馬が作った藤埜ツリー秘密基地へ、悠高から呼び出された
「・・・巡、色々と手を回していたようだね」
「なんのことやら」
「でも、意外だったな」
「何が?」
「巡も、好きだと思っていたから。背中を押してくれるなんて思っていなかったよ」
「俺は真昼も悠高の事も好きだぞ。けど、それは二人の好きとは同じじゃない」
「・・・そっか」
「おめでとう、って言うべきか?」
「うん。君の思い通りになったよ。後七年。僕は六年だけどさ・・・必死に生きるよ。二人で、最期まで。悔いのないように」
二人は俺の思い通りに結ばれてくれた
後は、見守るだけ
高校を卒業してから、残り少ない時間の中で二人暮らしを始めた
燐音が作り上げた能力制御リングを身に着けて、普通の暮らしをして、旅行をして、今まで出ることが叶わなかった外の世界を・・・真昼は悠高に手を引かれながら過ごしていった
終わりが近くなった頃に、二人は籍を入れて、真昼の小さな頃を夢を叶えたっけ
お嫁さんになること。子供の頃の夢、叶わないと思っていた夢を叶えた真昼は
その数日後、眠るように息を引き取った
・・
それから一年が経過した
能力をほぼ使っていなかった悠高は、想定以上に生きてくれていたが・・・それでも等しく人には終わりがやってくる
「悠高」
「ああ、巡。君はピンピンしてるねぇ。僕なんてもう身体が動かせないのに」
「・・・」
「ねえ、巡。そろそろ聞かせてくれるかい?君は、どこからきた、何者なんだい?」
「それを知って何になる?」
「決まっているじゃないか。僕ら一桁の中でなぜか終わりを迎える兆候がない君は、きっと「普通」じゃない。何か隠しているでしょう?」
「・・・知っているんだろう?」
「うん。君に化けたらね、吸血衝動が抑えられなくなるんだ。身体能力も向上する。君は化物、吸血鬼だと推定しているよ。まさか本当に存在しているなんて思っていなかったけど、情報は嘘を吐かない。事実は僕の中に蓄積されている」
「ご明察。その通りだ。でも、なんで最期まで・・・」
「決まっているだろう?君が僕の一番の友達だからだよ」
種族なんて関係ない。化物だっていい
僕にとって、芦屋巡は芦屋巡
人間でも、能力者でも、吸血鬼でも
一番の友達には変わりない
悠高は俺の手を握りしめながら。小さく笑ってくれる
そう言ってもらえるのは、素直に嬉しかった
表情には、出さないけどさ
「巡、僕はもう死んじゃうけどさ。生まれ変わったらもう一度君に会いたいな、なんて」
「会いに来い。何度でも。俺は死なずに待っている」
「じゃあ、これを預かってくれるかな」
「・・・お前らの結婚指輪だろ」
「僕らはこれを、向こうへ持っていけないから」
「・・・」
「生まれ変わった僕らに渡してほしい。何度でも、何度でも・・・君が僕を友達ではないと思う日まで」
「そんな日、来るわけ無いだろう。お前だって俺の、一番の友達で」
「・・・嬉しいなぁ」
どんどん力が弱くなっていく
終りが近い
終わってほしくない
けど、終わりは等しく、彼にも
「ねえ、巡」
「なんだ」
「君の名前を知りたいな」
「・・・メルフェンだ」
「ふるねーむ」
「メルフェン・フォン・ウェールラプス。時を操る吸血鬼だ。また会える日を楽しみにしている、笹部悠高」
お前がどんな姿になろうとも、お前の魂が尽きるその瞬間まで
「また会おう、俺のグローリア」
そうして、悠高も旅立った
俺はまた一人、フラフラと世界を放浪する
もう一度、光に巡り合うその日まで
・・
それから数年後
俺は同族であるアルテミシアに呼び出され、ある場所へと降り立った
そこには、アルテミシアとそのグローリア・・・蓬生衛と
吸血鬼に関する悩みを抱えた少女・・・吾妻芳乃が待っていた
・・・・
笹部悠高編について
正直、彼が間違いなくおまけの文字数がトップだと思います
なんでおまけで芳乃編に続かせるの?
おまけは後日追加予定です
・・・書きかけ、ですね




