間奏:虹月八雲と天才の称号
おまけ、というのには少し長い気もするから話しておこう
俺が天音に執着する理由を
俺は才能がある子供だった
毎日、工具を片手に発明の日々。大人たちはその行動を褒めてくれたけれど
同年代の子供からは不評で、変わった子供、一緒に遊ばない子供
つまらない子供だと、周囲は俺を評価した
「・・・ねえ、君」
「・・・何だ、朔間天音」
「名前、覚えていてくれたんだ」
「一応な。で、何だ。お前に構っている暇なんてないんだが」
「才能ある子供だから?」
「まあな。お前らみたいに植え付けられた才能じゃなくて天性の才能を伸ばさないといけないんだ。お前らと遊んでいる暇なんてない」
大人には媚び諂う笑みを浮かべて、同世代は馬鹿にする
本当に最低な子供だったと、今は思う
けれど彼はお構いなしに俺の隣へ腰掛けた
「でも、話してくれる暇はあるんだよね。凄いな、八雲君は」
「・・・うるさいやつだな。で、何のようだ」
「君のお友達になりたくて」
「親から命令でもされたのか。お前も大変だな」
「そうじゃないよ。お父さんは戦争で死んじゃったし、お母さんは病気で死んじゃったんだ・・・だから、僕にはおばあちゃんしかいない。だからって、おばあちゃんから君とお友達になりなさいなんて命令なんてされていないよ」
「じゃあ、なんで」
「僕が、君のことが気になったから。それだけじゃ、ダメかな?」
「・・・」
「それにおばあちゃんはね、友達になりたいとおもったら、きちんと伝えなさいって!いやいや言っても好きのうちだからアタックアタックって!」
「お前のばあちゃん言葉が古いのかイケイケなのかわかんねえな・・・」
工具を床に置いて、話しかけてきた彼を視界に入れた
そこに座るのは・・・銀と琥珀の色を持つ少年
彼は俺の目を見て嬉しそうに笑うのだ
こうして、目を見て話してくれた存在も、友達になりたいと言ってくれたのも彼が初めて
・・・同時に、こう思った
「お前は、一人だから誰かの側にいようとするのか?」
「おばあちゃんがいるからそんなことはないけれど・・・そうだね。いつかは一人になっちゃう。その時に、誰もいないよりは誰かいる方がいいかなって」
「子供のくせに利己的だな。失ったものが多すぎるとそんな思考になるのか?」
「さあ。分からないね。ねえ、八雲君。僕の存在は君の利益にはならないかい?」
「さあね。長く一緒にいないと、それは分からない。いいよ。友達になろう、天音。いつか、君が俺の利益になることを期待する」
「友達に求めるものが利益とはね・・・面白いね、君は。ありがとう、でもいつかはそんな利益関係なしに一緒にいられるようになればいいね、八雲」
最初は、互いの利益のために友達になった
しかし、社交的な天音は俺の他にも友達を作った
対称的に、俺の友達は天音だけ
気がつけば、俺の側には天音しかいなかった
・・・天音を失えば、俺は一人になってしまうから
一人は嫌だ、から・・・天音を一生側に置いておきたい
それが俺の欲であり、叶えるべき願望だ
ずっとは望めるのか、望めないのか分からない
けれど、邪魔者を蹴散らし、最後に天音の側にいるのは俺でなければいけない
まだそれは蓋をしておこう
本気を出すのはまだ遠い話。その時は
・・・全員、消して、天音と生きる時間を見つけ出す
例えこの手を血に染めようとも、必ず果たして見せる
おまけは後日追加予定です




