6話
「よし、全員集まったな。じゃあ早速だがサッカーの試合を始めるぞ。あまり時間もないので、すぐに準備をしてくれ。それで、試合をするにあたってのチームだが――」
「で、なんでお前と一緒なんだよ、理央」
「しょうがないだろ。先生がそう言ったんだから。先生がうちの顧問だから一緒のチームにして玲の実力を試そうとしているんだよ、多分な」
なんて横暴な。俺はみんなで普通に楽しくやりたかったんだけどな。
「まあ、いいじゃねえか。俺と玲、二人ともハットトリックだ。そして観戦している女子たちに……」
「いや、俺はお前に巻き込まれて男子の恨みを買いたくねえぞ」
他のチームはすでに俺たちのことを睨んでいる。この際は気にしないことにしよう。
「けど、なっちまったのは仕方ねえ。俺と玲でツートップでいいだろ」
「おいおい、勝手に俺たちだけで決めてしまっていいのか」
さすがに二人だけで決めるのは……一緒のチームになった子もやりたいところがあるだろうし。ここは全員招集するか。
「よし、ちょっと俺のチームの人は集まってきてくれないか。ポジションを決めておきたい」
ぞろぞろとみんな集まってきたな。一人、二人、三人……よし、十一人全員そろったな。
「じゃあ、まずやりたいポジションを一人ずつ言っていって…」
俺の言葉をさえぎって理央が話し始める。
「ちょっといいか」
「ん?どうした理央?なにか不思議だったか」
「いや、大したことじゃないんだけど、さっき玲は俺のチームの人集まって~って言ったよな」
「それがどうした?」
すると、理央は不満げの顔をして――
「これは玲のチームじゃない。俺のチームだ!!」
「めっちゃどうでもよかった…」
真面目に話を聞いた俺が馬鹿だった。そういえば理央はそういうところ、すごい敏感だったな。けど、まあこのおかげでチームの雰囲気がさっきより軽くなったな。
「まあ、話を戻すけどやりたいポジションを言ってってくれ」
「僕はあまり攻めるのが得意じゃないから後ろの方がいいな。周りを見ることは得意だし、みんなに指示をだせると思うから」
一人の男子生徒がそういうと次々に意見が出た。結局、理央の夢のツートップは実現できなかったわけだが、理央はしょうがねえなと納得してくれた。
しばらく、作戦を練っていたわけだが対戦相手であるBチームの奴らが俺たちのほうに近寄ってきた。さっき俺たちを睨んでいた奴らだな。
「おいおい、作戦なんて無駄だぜぇ。なんせお前らのチームは春日井と黒崎以外無能なんだからさ。後の奴らはただの足手まとい」
一人の相手チームの生徒が絡んできた。おいおい、やめてくれよ。せっかくいい雰囲気なのに。
「そうだな、こんな雑魚チーム余裕で勝てるわ」
「春日井と黒崎だけマークしとればよくない」
続々と自チームをあざ笑うBチーム。それを我慢できなくなったのか理央が立ち上がる。
「はあ、お前らいまなんて言っただぁ?もう一度言って見ろ。確かにな、俺はこいつらよりも強い。玲も、だ。だがなぁ、無能だと決めつけるのはまだ早いんだよ。お前はこいつらのプレーを見たことがあるのかって話だよ」
理央は怒りを露わにしてそういった。
「それによ、俺たちのチームがそれで負けたとしてもな、それは俺たちも無能だったってことなんだよ。サッカーはな、チームで負け、チームで勝つスポーツなんだよ。だから個人で無能、無能じゃないって決めつけるスポーツじゃない。チームで無能か無能じゃないか、だ」
そんな理央の意見は最もだった。だが、彼らには響いていない。
俺には分かる――
こういう奴はちょっとは悪いと思っていても引き下がることが恥さらしに感じてしまう。そしてプライドが許さず余計に何か言ってくる。
「はっ、お前何熱くなってるの?いいじゃねえか、お前は無能だって言ってないんだからさ。それにさ、まじでお前らが勝てると思ってるの?こっちにはお前とほぼ互角な奴が4人もいて無能は一人もいねえんだよ」
「逆に勝てないとでも思ってるのかよ。なんなら賭けしてもいいぜ。どうする?お前らは負けないんだろ、じゃあいいじゃねえか」
挑発する理央。すこし相手生徒も悩んだが、ここで引くのはダサいと感じたようだ。
「いいぜ。その提案のってやるよ。敗者は勝者のいうことを一つなんでも聞く、それでいいか」
「ああ」
それだけ決まるとすぐにBチームは散っていった。おいおい勝手に決めちゃっていいのかよ。心配そうな顔でチームメイトが見ているぞ。
そしてすぐに――
「ごめん!みんな。勢い任せに勝手に決めてしまって」
理央がすぐにみんなに謝ったのだ。こういうところは憎めないよな。けど、チームメイトはどういう反応をするかな。
「頭を上げてよ理央君。逆に僕たちこそごめんね。悪口を言われたのは僕たちなのに理央君一人に任せきりになっちゃって」
「そうだよ、春日井君。僕もあいつらにムカついていたし逆にいってくれてスカッとしたよ」
「うんうん。理央君のおかげであいつらをぎゃふんと言わせるチャンスができたよ」
次々に理央を称える発言をするクラスメイト。予想外だった。馬鹿にされたうえ、あんな約束までされたらプレッシャーで耐えきれないだろう。みんな理央には感謝しているんだな。
「そういうことだ、理央。だが、約束したからには勝たないとな」
「………玲。…よし、もちろんだ!もう一度作戦を練るぞーー!」