3話
「それで、なんで何もせず帰ってきたかなぁ。説明して!」
霊長室内。俺は、いや俺たちは絶賛怒られ中だ。理由は任務を完了せず帰ってきたためらしい。任務を完了するために帰ってきたのにな。
「って、そんなこと言われてもその方が効率的ということしかできませんね。母上」
「それでエレナちゃんも釣られちゃったと?」
「玲様には絶対に考えがあると思いましたので…霊長も玲様には失敗はあり得ないことくらいおわかりでしょう。あの玲様の天才の勝目をみればそれに従う以外にないでしょう」
天才の勝目。なんか『霊交幽民隊』ではそう呼ばれているが実際めっちゃ恥ずかしい。第一係だけならまだしも他の係もだからね。
「まあ百歩譲って帰ってきたのは許しますけど、そのコンビニの袋は何?絶対に食べきれない量のアイスが入っているでしょ。『霊交幽民隊』の予算もそう多くはないのだけど」
やべ、さすがに店にあったアイスを二個ずつ買ってきたのはまずかったよな。エレナがどうしてもって言うし、人間に似た顔といっても基本的には普段外出できない幽霊だし可哀そうだなと思ったのが間違いだったか。
これは絶対に怒られるパターンだ。エレナが寄りたいって言ったけど彼女のせいにするのはどうかと思うしな。彼女はビクッとして背中が丸まっているし…ここは――
「この大量のアイスはこの任務に必要なものなのです。母上」
俺は全く動揺せずにきっぱりそう答えた。まあ任務任務言っとけば何とかなるだろう。ここはこれでご勘弁を・・・
「うん、絶対違うよね。本当にそうだとしたら、まず何でどういう目的で使うかしっかり説明してください」
その返答は予想済みだ。ここは丁寧に説明してあげよう。
「まず、アイスという甘いものを食べることで疲労回復やストレスを和らげる効果があり、いまから脳をフル回転させて任務を完了させるには必要不可欠なものです。それに大量のアイスとおっしゃいましたがこの数は第一係の人数と同じ…」
「はいはい、わかりましたよ。けど絶対に任務は成功しなさいよ」
母はもう諦めたようで引き下がってくれた。最初からそうしてくれればいいのに
「わかってます。プランはもう、100通りは思いついていますから。じゃあもうそろそろ取引始まってしまうんで失礼しますね」
あんまりここに留まるといろいろとめんどくさそうなので素早く退室することにした。
「ええ、どうぞ」
「じゃあいくぞ。エレナ早くしないと取引はじまっちゃうし、アイスも溶けちゃう」
「あっわかりました」
霊長室を出るときエレナが小声で俺に「ありがとうございました」と言ってきた。多分、アイスの件だろう。
彼女がたくさん買っていてコンビニに行きたかったのは事実だが、俺も少し食べたかった気持ちはあったので「大丈夫だ」と一言だけ言っておいた。