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白百合の園  作者: 白百合三咲
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秋~突然の嵐~

「おはようございます。雪子さん」

「おはよう花絵。」


夏休みも終わり9月。演劇の授業での一件からわたくしと雪子さんの距離は以前と比べて近くなりました。

これも月乃様のおかげなのです。

月乃様との練習の成果も授業で出すことができ雪子さんは「先日はきつく言い過ぎてごめんなさい」と謝罪してくれました。

月乃様はこうも言っておりました。

「雪子さんは子役時代毎日の競争だったかもしれない。でも私は芝居は1人ではなできない。だからここにいる皆はライバルではなく仲間だ」と。

月乃様の一言で雪子さんは変わった。


「皆様参りましょう。」

雪子さんの1言で2列になり登校する。

「あの月乃様がまだ」

わたくしは愛しい人の姿がないことに気付き、声をあげた。


「月乃さんは本日欠席すると連絡がありました。」

月乃様が欠席なんて珍しいわ。



しかし次の日もその次の日も月乃様が朝集合場所の駅には来ることはありませんでした。

わたくしは心配になって授業が終わった後月乃様のお宅に行ってみることにしました。




月乃様のご実家は横浜駅からみなとみらい線で3駅。旧家だと聞いておりました。

「月乃様の家ってこの辺じゃないかしら?」

ふと顔をあげると塀がまっすぐに続いていました。たどっていくと入り口が見えました。そこには板の表札があり「凪夜」と書かれておりました。


(月乃様のご実家ってこのお屋敷?!)


「あの、何かご用でしょうか?」

振り向くと女中が1人立っておりました。

「あの、月乃様にお会いしたいのですが?」

女中に案内され応接間へと通されました。

「こちらでお待ち下さい。」

暫くすると月乃様が女中に連れられやってきました。

「花絵ちゃん」

「月乃様!!」

わたくしは愛しい月乃様の姿を見ると泣き出してしまいました。


「ごめんね。花絵ちゃん、心配かけて」

「月乃様、ずっと学校をお休みになってどうされたのですか?」

「あのね、花絵ちゃん、私学校を辞めるの。」


愛しい方の口から出たのは衝撃的な言葉でした。

月乃様のお父様は会社を経営していたのですが、倒産。お屋敷も使用人も手離さなければならなくなったのです。音楽家学校の学費も払うのが厳しく月乃様はお茶屋さんで働くことになったのです。

「花絵ちゃん、最後に会えて嬉しかった。私の分まで頑張ってね。」

どうしてでしょうか?わたくしは月乃様の隣にいたい、そう思って今まで厳しい授業にも耐えてきたのに。月乃様がいなかったらわたくしはきっと授業に着いていけなくて学校を辞めていたでしょう。



 次の日からわたくしは授業に身が入らなくなりました。放課後の個人レッスンも行かなくなり、何のためにこの場にいるかさえ分からなくなっていきました。



しかしその1週間後、思いもよらぬことが起きました。

先生が皆に話したいとことがあると言って朝教室へとやってきました。

「さあ入って。」

先生の合図で1人の生徒が入ってきました。月乃様でした。きっとお別れの挨拶に来たのでしょう。

しかし月乃様の口から意外な言葉を耳にしました。


「長らく休んでおりましたが、本日より復学させて頂きます。皆様また宜しくお願い致します。」


復学?!どういうことなのでしょうか?

わたくしはその日の昼休み月乃様を中庭に呼び出し問おてみました。

「月乃様、復学されるってご実家は」 

「花絵ちゃん実はね。」

「やっぱりここにいたのね。」

そこに現れたのは雪子さんでした。

白百合女子音楽学校には経済的に負担がある生徒を助けるスクラーシップ制度があるのです。学費が免除になる代わりに入団後に返済していくというシステムです。

その制度を月乃様に教えて下さったのか雪子さんでした。

「雪子さん、ありがとうございます。」

「勘違いしないでね。貴女が授業しっかり受けないと私達3期生全員の連帯責任になるのだから。これを機にしっかり芸事に励みなさい。」

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