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白百合の園  作者: 白百合三咲
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春~出会い~

 時は大正10年。ところは神奈川県横浜。8年前西の方に宝塚少女歌劇団とうものができ世の乙女達を虜にしました。それ以来全国各地には似たような乙女だけの劇団が作られ、わたくしが志願したここ「白百合歌劇団」もそのうちの1つでございます。

女性だけで男の役と女の役を演じるのです。特に男役というのが乙女達から絶大な人気を誇り、まさに理想の王子様そのものなのです。


 わたくしは香咲花絵。今年から白百合歌劇団付属の養成学校「白百合女子音楽学校」に入学した15才の乙女でございます。

白百合歌劇団に入団するにはこの付属学校で1年間バレエや声楽、芝居の基礎を学ばなければなりません。この学校には15才から23才までの20人の乙女が在籍しております。わたくしはその最年少なのです。

 わたくし達は袴姿で登校してます。袴の上衣は自由でありますが下は緑の女袴と決まっております。男役志望の者は短髪、娘役志望の者は三つ編みという決まりもあります。

「おはようございます。花絵さん」

「おはようございます。」

「皆様お揃いですね。では参りましょう。」

わたくし達は駅に集まり2列横隊になって学校へと向かうのです。

わたくし達音楽学校生の朝は早く6:00に学校へ向かい2時間校内の清掃を行います。

わたくしの隣を歩くのは8才年上で23才の凪夜月乃様。男役志望で短髪にしてらっしゃる。背も高く凛々しいお方なのです。

月乃様の横顔を眺めることができるこの登校時間がわたくしには楽しみなのです。

「花絵ちゃん、私の顔になにかついてる?」

ハスキーな低いお声で月乃様に尋ねられた時は心臓がとまるかと思いました。

「いえ、何も。」

わたくしはただ顔を真っ赤にした俯きました。まだ胸の鼓動は止まりそうにありません。




わたくしが月乃様と出会ったのは1カ月前の3月半ば、入学試験の時でした。

白百合に入れるのはたったの20名、その狭き門に700人と多くの乙女達が志願し篩にかけられるのでした。

書類審査を通過し1次試験、2次試験、そして最終試験に残ったのはわたくしを含むたった80人の乙女達でした。

 最終試験はバレエと声楽。1次、2次の試験とは違い事前に渡された課題を披露するのではなくその場で審査員の先生方からお題を出されるという物でした。

出番がくる前控え室で練習していたのですが周りの受験生の出来があまりにも高くわたくしすっかり上がってしまったの。

「大丈夫か?」

そこに低いお声で話しかけてくださった方がおりました。一瞬わたくしは歌劇団のスタアの方がいらしたのかと思いました。

「あの、わたくし」

「手が触れ得てますね。」

その方に手を握られ見つめられ、まさに白百合の舞台の主人公とその恋人になったような錯覚に陥りました。

「わたくし、皆様の出来が素晴らしくて」

「大丈夫。貴女だってここまで勝ち残ってきたのだから。もっと自信をお持ちなさい。」

そこに誘導の先生が来た。

「香咲花絵さん。」

わたくしの名前が呼ばれた。

「花絵ちゃんね、さあ行ってらっしゃい。入学式で待ってるわ。」



わたくしはその低くもハスキーなお声の方に背中を押され試験に挑みました。あの方のおかげで全てを出しきることができました。

それから試験結果が届いたのが1週間後でした。

結果は合格。わたくしはずっと憧れていた娘役という夢に近づくことができました。



入学式当日。桃色の着物に白百合の礼服でもある緑の袴を身に纏い髪は三つ編みに結って会場へと向かいました。

「花絵ちゃん」

振り向くとそこには短髪の麗人が目の前に立っていました。姿は試験の時とは異なっておりましたがお声であの方だと分かりました。

「花絵ちゃん、良かった。来てくれて。私は凪夜月乃。これからは同期生だね。宜しく。」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします。」

 これがわたくしと月乃様の出会いでございます。わたくしは誓いました。いつか舞台でこの方の隣に立とうと。

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