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浮気でも本気でも無理なもんは無理

作者: 花織

ほんわかした恋愛というよりシリアスなお話です。婚約破棄で主人公は自分でどうにもならない病に苦しみます。

訂正して書き換えました。

メディチ家には2人姉妹がいる。

姉メリーは十六歳、婚約者のマルエル・ティーチがいる。

妹アンは来年社交界デビューの十五歳。

仲良くしていたはずだった。

たまたま妹の置き忘れた本を部屋に届けるまでは。



外出から戻ったメリーは居間でお茶をしようとテーブルに座った。

ふとテーブルの上の本に目が留まる。

「これはアンの本かしら?」恋愛小説のようだ。

「そうですね。アン様のものです。お届けしましょうか?」

「そうね。でももう部屋に戻るからその時に渡しましょう。」

しょうがないわね、と笑いながら侍女のキャラと本を持ち2階の妹の部屋に向かった。

「アン〜また置き忘れてたわよ?」そう言ってドアを開けると

裸で妹の上に跨っている婚約者と目があった。

頭が目の前の情報を理解できない。

私とキャラはどのくらいか意識がとんでいたらしく、ハッと気がつくとキャラと絶叫していた。

私はそのまま失神したらしい。

キャラは使用人たちが駆けつけると、

「この2人を絶対部屋から出さないで」と言って

この家の主のもとへ走った。

キャラから状況を聞いた父親、リチャード・メディチはすぐに駆けつけた。

アンの部屋には裸でみうごきできず、真っ青な2人がベッドにいた。

「服をきなさい。」

リチャードはこの2人を別々の部屋に監禁するように使用人にいった。

メリーは1階客室に運ばれた。



リチャードはまず使用人を集めた。

「だれがティーチをアンの部屋に通した?」

すると使用人の何人かから押し出されるように1人のメイドが前に出た。

「なぜアンの部屋に通した。ティーチはメリーの婚約者だろう?

しかも2人きりにするとは。」と睨みつけた。

メイドは怯えた表情で

「アン様から半年前からティーチ様が来られたら、そのままアン様のお部屋にお通しするように言われていました。私以外の使用人も皆そのようにしていたので。」リチャードは頭を抱えた。

普通執事が使用人を統括するのだが、先日引退してまだ次の執事が決まっていなかった。

他の使用人を見渡すと何人かが青い顔をしている。

これは執事を早く決めなかったことと、使用人の教育が出来ていなかった私のせいだ。



リチャードはアンの部屋に向かった。

「なんでこんなことをした?」

「マルエルが一緒にいるの楽しくて、一緒にいるうちにいつの間にか…」

「来年社交界デビューだったのに!もっといい相手はたくさんいるのに、なんで姉の婚約者なんだ!」

「わたしにピッタリだったのがマルエルだったんだもん」


「それで子供ができたらどうするつもりだったんだ?この先は?」

「今まで出来てないから大丈夫。だって生命の奇跡だもん。なかなか出来ないよ」

リチャードは頭が痛くなった。

「もちろんマルエルと結婚する」

「もう2ヶ月後にはメリーと結婚するはずだったんだ!」

「でも離縁すればいいかなって」

こいつは自分のことしか考えてない!

姉や家族、家のことも。なんでこんな子に育ったのか?


マルエルもほぼ同じことを言った。

「メディチ家に婿に入って家を継いだら、メリーとは離縁するつもりだった。」



ティーチ家の両親がやってきた。

「本当に愚息が申し訳ない!」と頭を下げた。

メディチ家とティーチ家の4人がテーブルについた。


「先程メリーが帰宅したら行為をしているところを目撃して、私も裸の2人がベッドにいるところをみている。」


「本人たちに話を聞いたところ、全く悪いことをしたという気持ちはないようだ。

使用人の話だと半年前からの関係らしい。もうこれは1度の過ちでは済まされない。反省も無理だろう。」

「2人は結婚させるしかないでしょう。メリーさんとはそちらからの破棄という形でよろしいでしょうか。慰謝料など、お詫びはさせて下さい。」リチャードは了承した。


「この先2人をどうするかだが…」

突然メリーの声が聞こえた。

「お父様、私はあの2人と一緒にいることはできません。」

真っ青な顔色のメリーがキャラに支えられながら入ってきた。

「もしあの2人がこの家に住むのなら私はここを出ていきます。」

メリーはフラフラながらもこれだけは伝えねばと来たのだろう。


「旦那様、先程お医者様に見て頂いたところ、メリー様はショックの為に身体中にじんま疹が起きまして、先程のことを思い出す度に嘔吐を繰り返していらっしゃいます。あんな悍ましい物を見せられたのです。無理もありません。

メリー様のお身体が心配です。」 

キャラはそう言うと、メリーをテーブルの椅子の1つに座らせた。


「メリー、悪いのはあの2人だ。メリーが出て行く必要はない。

あの2人はこの家には、いれない。」

「ティーチ家が引き取るべきなのかもしれませんが、我が家にはまだ子供がいて、ティーチ家に入れるには問題があります。

2人で暮らさせましょう。しばらくは遠くから様子をみながら。」



2人は街に小さな一軒家を借りてもらい、マルエルは仕事を紹介してもらって働き始めた。

ブツクサ文句ばかり言いながら仕事をしていたが、ひと月もしたら慣れてきたようだ。アンは妊娠していた。8ヶ月後男の子を出産した。近所のパン屋のおかみさんが助産婦さんを呼んでくれたようだ。


「はじめはアンと仲良くなって、どんどん親密になって歯止めが利かなくなって、あんなおおごとになっちゃって、家追い出されて、あーなんでこんなことにって、思ったけど。

2人で家事やって、仕事やって、アンが赤ちゃん産んだときすごい苦しんで、いっぱい血が出てもしかしたらこのまま死んでしまうかもと思ったら凄く怖かった。おかみさんが助産婦さん呼んでくれてなかったら、本当に危なかったかもしれない。

おかみさんにも助産婦さんにもありがとうございますしか言えなかった。アンが生きててくれて良かった。

俺とアンの赤ちゃん、俺守らなきゃな。

親になってみて俺たちがどんだけ周りに迷惑かけたのかわかったよ。本当に俺たち大事に甘やかされて育ったんだな。

ほんとは自分でと思うけど、会いにいくと迷惑になるから、『申し訳ありませんでした』と伝えていただけますか?」

交代で見に来ていた使用人に少し疲れた顔のマルエルが恥ずかしそうに言った。



メリーはリチャードから2人が街でどんな暮らしをしているか、時々聞いていた。

「あの2人は楽しそうでいいですね、メリー様は苦しんでいらっしゃるのに。」キャラは納得できないとぷんぷん怒っている。

あのあとメリーは男性恐怖症になってしまった。

男性が近づけば体が強ばるし、手に触れればじんま疹が出る。

なので男性のそばには寄れない。

これでは結婚できない。

メリーは悩んでいた。もう私だけなのだから婿をとらなければいけない。なのに自分の意志ではどうにもならない。

父のリチャードは、全てはこの父のせいだからメリーは気にするな、と言ってくれる。

どうしたらいいのか。

お医者様は心の傷は時間が薬なので、いつか治ります。と言ってくれたが、いつになるのか。


そんな時、父の友人の息子さんが話し相手になってくれることになった。

正直怖いし、思い出すと気持ち悪いけど、いつまでもこのままじゃいられない。



「はじめまして、ギル・サッフォードです。宜しくお願いします。」

優しそうな笑顔の方だった。短く切った髪が少し筋肉質な体に良く似合っている。

「はじめまして、メリー・メディチです。宜しくお願い致します。」

少し離れたところで挨拶する。

「大丈夫です。お身体のことはお聞きしていますので、メリー様が楽なようになさってください。」

そう言って笑った。少し考えたがサッフォード様のお言葉に甘えて、少し離れた椅子に腰掛けた。

はじめは恐る恐るの会話だったが、この位の位置なら大丈夫と思えば楽しんで話せた。

それから何度もサッフォードはメディチ家を訪れては社交界の話や今話題になっていることなどを身振り手振りを交えて話してくれた。少しずつだけど、笑顔で話せるようになったメリーを見てキャラは嬉しかった。



1年がたとうとしてるがギルとの仲は進展していなかった。

ギルといると心地好い。あと一歩が踏み出せずにいた。

今日はギルが街に誘ってくれたので、馬車でおでかけ。

街につくと、ギルはサッと降りて待ってくれている。ホントならここでギルの手にエスコートしてもらうはずだけど、まだそれは無理。なので馬車の手すりに捕まって降りようとしたらスカートが馬車に引っ掛かって落ちそうになってしまった。

ギルがとっさに抱えてくれる。ああ、触れてしまった。またじんま疹と吐き気が襲ってくるかと、身構えてしまったけど、

あれ?吐き気がしない。

ギルはそっと立たせてこちらを窺っている。

「大丈夫ですか?どこか座れるところにいきますか?」と心配そうに私をみている。

「それがいつもなら体調を崩すのですが、なんともないのです。もしかしたら治ったのかしら。じんま疹も出る様子がありません。」

ギルも驚いてる。でもすぐに笑顔になると

「では貴方のお手に触れる栄誉を与えて頂けますか?」と手を差し出した。

本当にもう大丈夫なのかしら?さっきのが偶然、ならなかったからといって次も大丈夫とは限らない。

それでも少し震えてしまったが、そっとギルの手に重ねた。

ああ、何も起きない。ギルの顔を見上げると嬉しそうに私を見ている。

「私貴方と一緒にいられるの?貴方の側にずっといることを望んでもいいのですか?」

「ずっと一緒にいてください。病める時も健やかな時も。

…結婚してください。

ほんとは今すぐ抱きしめたい。でも待ちます。これまでのように、ゆっくり治しましょう。治らなくても側にいられればいいと思っていましたが、貴方はきっと心の傷がある限り私との結婚を受け入れてはくれないだろうと考えていたので求婚できませんでした。これからは婚約者として、いずれは夫として、ずっと一緒にいさせてください。」

メリーはいつの間にかボロボロ泣いていた。何か言いたいが胸が詰まって言葉がでてこない。

メリーは泣きながらギルの胸に顔を寄せた。

婚約破棄の時でさえ泣かなかったのに、今は感情が溢れて止まらない。

ギルはそっと包んでくれた。



どのくらいたったのか、外はいつの間にか日が暮れかかっていた。

チラッとギルを見ると心配そうに私を見ていた。

「大丈夫?疲れただろ?帰ろう?」と抱き上げた。

メリーはびっくりしたけど、ギルの言うとおり足のちからが入らず、馬車に運ばれた。

「きっとメリーは無意識にいろんなことを我慢していたんだね。今日は上手く心を解放できたんだと思う。」そう言って、肩によりかからせてくれた。

「いっぱい甘えてほしい。」

私はたくさん泣いて顔が腫れているし、恥ずかしくて肩に顔を隠した。



それからは父にギルに触れても体調を崩さなかった事を伝えて早速婚約の手続きをした。家族は泣いて喜んでくれた。

本当に心配をかけて申し訳なかったと思う。

父はギルにありがとう、ありがとう、としきりに話していた。

ギルのご両親とも会い、問題なく婚約が整った。長い間ギルはメディチ家にいたので、婚約期間は必要なしということで3ヶ月後式を挙げることになった。


ギルはお仕事の合間をぬって会いに来てくれた。

お仕事は大丈夫かな、と心配するくらい。

やっと想いが通じたんだからもっと側にいたい。なんて恥ずかしい…

もう大丈夫かと思われたじんま疹だけど、ギルと父以外の男性に触れられるのは駄目だとわかった。吐き気は最近ない。ギルのことばかり考えているからかな?

ギルは男避けに好都合らしく、喜んでた。


なんだかんだで結婚して、次の年に男の子を1人産んだ。

初夜とか乗り越えられるか心配だったけど、ギルに言われた通りにしてたら大丈夫だった。本当にギルは凄い。いろんな意味で。

次の年にも女の子を産み我が家は賑やかになった。


私は幸せだ。ギルがいて、家族がいて、心配してくれる人達がいる。ギルとは喧嘩もするけど、ちゃんと話して毎回解決する。

浮気もしない。子育ても一緒にしてくれる。


「ギル、私ね、思うの。心の病になったとき、私凄く苦しかったんだなって。婚約者に裏切られて、妹に裏切られて、男の人が怖かった。気持ち悪かった。結婚すればそういう事をするって解ってはいたけど、2人のそういうところを見てしまって、嫌だって思ってしまった。誰も信じられなかった。また裏切られると思ってたんだと思う。だからギルがいてくれて良かった。この幸せは全部ギルのおかげ。こんな素敵な旦那様に何かお返しがしたいんだけど、何かない?」

「僕のほうが君にたくさんの幸せを貰ってるよ。愛する妻と可愛い子供。これ以上の幸せはないよ。何か欲しいもの?無いなー。

子供たちが結婚して巣立ってもずっと一緒にいて欲しい、じゃあダメ?」


ギルに出会えて良かった。

心の傷も初夜も子供のことも、何も言わず支えてくれた。

これからもずっと一緒に…。





                        終


自分が考えた場合、婚約破棄されたら、浮気されたらどうなるのかと勢いでかきました。

ちょっとというかだいぶ重いです。


元婚約者たちの罰が軽すぎる、両親たちが甘い、と感想をいただきました。

両親たちは見捨てるではなく、とりあえず生きられる環境で反省させるというやり方なので確かに甘いかと思います。しかしなんでもやってもらえる人が働いて生活するのは大変だと思います。

そして生活していく中で

馬鹿は馬鹿なりに反省してお詫びに行きたいと考えるようになった、となったらいいなと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 感想に対するお返事で、子どもを見せにいきますって元婚約者と妹からの手紙に対する私の考えの部分から、書き換えると書いてあったので。 私自身は、2人は結局、失敗したままで成長はわずかなのだという…
[良い点] 短編ながら主人公の裏切られたあとの心情、少しずつほぐれていく心が丁寧に描かれていてとても面白かったです。 妹夫婦について、分かりやすい制裁を望む声もあるようですがこの先の人生を思うとなかな…
[気になる点] 子供見せに来るな 主人公に一切関わるな 縁を切れ 中途半端に関わったらどうせ今も裕福な主人公たちに嫉妬してなんかやらかすでしょ。
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