80話 彼が少女の理由
ブックマーク、評価などを頂きまして、大変ありがとう御座います。
どんどん文章レベルが下がってます。
「どうして、僕が女僧侶の姿をしているかというと――。」
あ、この話し続いてたんだ。
「以前パーティを解散、ていうか解体? する折りにメンバーのお姉さんから一方ならぬ諧調を感じると贈られたのが始まりでした」
「イジメられてたのか!?」
そうか。イジメにあってパーティを追放されたのか。
いや、荒野でシチダンカに保護されたと言っていたか。なら定番のクエスト中の置き去りか? 囮にされて置き去りか?
なんと迂愚な連中だろうか……普通、お持ち帰りするだろ!! こんな可愛い子落ちてたらお持ち帰りコースだろ!!
いずれにしろ、
俺は彼の心の傷に触れてしまったようだ。くそっ。
「いえ? みなさん仲良くしてくださいました。解散したのは、えぇと――言ってもいいです? あ、駄目? うん。あ、はい、大丈夫です」
何かと交信が始まった。
俺の背後?
「え? 昨夜の僕の……えっ!? だ、大丈夫じゃないよ!! 忘れて!! 忘れてください!!」
彼の視線を追って振り向いた。
何も無かった。
「シチダンカ? 俺の後ろに何か居たか?」
「俺にサツキの姉さ兄さんのご尊顔以外の何を見ろと仰るんです?」
「お前はもっと色々見た方がいいぞ」
一体、何が起きてるのだろう。どいつもこいつも。
「じゃ、食事を済ませたら出るか」
「仰せのままに」
「え? 大丈夫なんですか……?」
「聖騎士が通い詰めたら、それだけでホテルの損害になりかねないからね」
「俺が刈りましょうか? 下知あらば彼奴らの首、御前に捧げて奉りましょうぞ」
教会関係者を祀んなや。
「シチダンカさん、本当に生首好きですね」
「この一杯の為に生きているかもしれませんぜ、聖女様」
そんな生き方、改めてしまえ。
面が割れた事も懸念した結果。
全員が鼻眼鏡になった。
チェックアウトの際、フロントの老紳士は穏やかな表情で送り出してくれた。
……凄いな。プロのホテルマンって。みんなで眉を上下させても動じないや。
「それで、潜伏拠点はどうしやしょう?」
鼻眼鏡の眉を三人でヒクヒクさせ、メインストリートへ出た。ばったり会った買い物途中の主婦が小さな悲鳴と共に飛び退いた。
そうこれ。
これだよ。
背後でコデマリくんが、しきりにゴメンナサイ、ゴメンナサイと謝っている。
「名士どもより地理感は下回るとはいえ、連中には信徒の目がありますぜ。アジトを嗅ぎ付けられちゃ敵いません」
潜伏とかアジトとか好きだな。
その名士から逃げおおせたのは誰だよ。
まぁ、それも限界と判断して森林迷宮へ来たんだろうけどさ。
「どこに行っても信者ってやつは度し難いね」
「まったくです」
「……。」
そして信者は自分の事には気が回らない、と。
「まぁ心当たりならな。俺や顔役が不在でも便宜をはかってくれる所だ」
「するってぇと、懇意にされてるトレーダーですね?」
「コデマリくんの身の上を伏せたまま融通してもらえるなら」
「商人なら何かあっても心が痛みませんからね」
「いや、傷めよ」
昨夜に比べて、人通りの回復したと街並みを横目に卸商業区へ向かう。
教会の支援物資だって搬入に限度がある。流通が停止した現状を変えない限り根本的な解決は見ないはずだ。
「お前が行こうとした元締め討伐、出どころはホテルの紹介元と一致してるでいいんだよな?」
「サツキの姉さ兄さんの中では、既にそこまで繋がっていましたか」
「オダマキなら領都も近い。早急な決着も視野に入れといた方がいいのかな。俺の乱入までのリスクヘッジは見込まれて?」
「恐らくは。聖女様の護衛依頼こそ俺の独断ですが、サツキの姉さ兄さんが行商人の最大手市場を我が物にされているとなれば」
「何で俺が支配してるんだよ」
「ご謙遜を」
「……。」
やばいな、コイツ。
野放しにしちゃ駄目か?
「カサブランカの受注で既にここまで仕組まれたか。オオグルマで連中の頭目と伝ったのは冒険者ギルドの仲介が発端だったから」
「まさか。ギルドが謀りましたか? 両断卿、いえクロユリの姉さんは止めにならなかったので?」
「あの時、既に退職したからなぁ」
「よもや寿退職ではあるますまいな?」
何でそんな目で俺を見る?
ああ、そうか。婚約者って偽装してたんだっけ。
「彼女とは何でも無いさ」
「お別れになられたのですか? ハッ!? 夜の方の不一致!?」
「違ーよ!!」
「不一致!?」
コデマリくんが、染めた頬を両手で挟みふるふるしてた。
何かを思い出しているらしいが、できれば記憶の彼方にぎゅっぎゅってしまって欲しい。
二人を連れジキタリス支部を訪れると、またもマンリョウさんは不在だった。
「へぇ、正面ゲートでトラブルが起きてしまい、支部長代行はそちらに行っております」
目つきの悪い番頭さんが、困り果てた風に説明する。
「何か問題でも?」
一応、俺に原因が無いか確認しとかなきゃな。
「卸業向けのトレーダーが根こそぎ撤退してるのが目立って、今になって不退去の指示が出たようで」
「計画の進行に影響は無さそうだが」
「へい、そりゃあ昨夜までには予定のノルマは消化してますんで」
「ゲートの足止めは向こうも嫌がらせ程度ってわかるんだ……。」
「そういうスタイル見せなきゃって所ですかね」
「お互い辛いな」
「ところでサツキの旦那。昨夜は外泊だったそうで、もう新しい女性を連れ込んだんですか?」
背後の二人組を見る。
待って、ナツメさんもそういう風に見られてたの?
「男がいる時点で違うって判断にならないのかね?」
「今のご自分の姿を見てから同じ事を仰ってくだせぇ」
あ、そういや何でまだ女の子の格好してたんだろ?
まぁいいや。
「彼らを匿って欲しい。クレマチスにとっても望ましい状況になるよ?」
「なるよって……いえ、そりゃあ構いません。構いませんので、そんな拗ねないでください。サツキの旦那の望みなら最優先で対応するよう言い使ってますんで」
「意地悪」
「今から出るんでしょうか?」
「ゲートの様子を見てくる」
「それは何よりでさぁ。少しはお嬢の事も気に留めてくださると、あっしらも安心で、そりゃあもう」
何言ってるんだ?
「ともかく、二人のことは宜しくやってくれ。それとシチダンカ?」
「はっ」
「せめてコデマリくんに男性僧侶の衣服を着せてやってくれ」
「なんと御無体な!!」
……俺が悪いのか?
「あ、あの、あのサツキさん」
くいくい、とコデマリくんが俺のスカートの裾を控えめに引く。
え? 何この子? 昨夜の続きがしたいとか?
「僕……職業が女僧侶、なんです」
「……。」
そういや俺も踊り子だったな。
色んなスキルが付与されて最近忘れてたけど。職業の女神なんてのが実在したらクレーム案件だ。
「そうか。じゃあ女僧侶の格好をしなくちゃな」
「……うん」
耳まで真っ赤にして、こくんと頷く。
やばいな。
「かぁー、こりゃとんだ花の姿でさぁ。サツキの旦那と同じで、男を壊すタイプですよ」
俺が何だって?
「サツキの姉さ兄さん。一応俺の方で姉妹ユニットの計画を練ってるんですが」
「何故練った!?」
「信者獲得の好機。見逃す手はありません」
「宗教と政治は仕事に持ち込まない主義なんだよ」
「旦那は僧侶職、全否定っすね……。」
「状況確認次第、戻る」
まだ何か言いたそうな連中を残し、さっさとクレマチス支部を出た。
あ。
着替えるの忘れてた。
お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。
評価★など頂けましたら嬉しいです。




