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303話 誰目線のお姉さんなんですか?

 頭を降ろすホウセンカを撫でる。鱗の手触り、落ち着く。


「初の長距離なのに慣らしもできなくて」


 ゴロゴロと喉を鳴らした。健気だな。


「直ぐには追われないのですか? しんがりに届きそうですが」


 アマチャの言葉は俺も考えた。

 相手が貴族の騎士団で片や公爵家だ。演習・教導の計画書や根回しは当該地域の領主、代官、地方自治体に通知済みだろう。足取りを追うのに遅くは無い。


「計画書や稟議書は囮と見る。証跡にクランが同道するとは限らない」

「ならば人狩り、いや一狩り行きますか?」


 シチダンカが頼みもしないのにアップを始めた。

 だから追わないって。


「タイミング、こちらを襲撃した連中は西からずっと追われて会敵の流れ?」

「明らかに待ち伏せだったわ」


 あ、シネンシスさんが哨戒のリーダーだったのな。


「追跡しつつ丘向こうまで大人数を回すなんて無理よ。騎兵隊長さんは直接接敵したわよね?」

「ああ、中隊規模の余力を残していたぞ。偽装しているが軍属がほとんどと見た。確証となる遺品も装備も無い徹底ぶりなら尚のこと」


 こちらでの足止めが連動していたのかな。

 俺とクランの分断は、スミレさんによって知られたはずだ。時期的に見て最後の宿場町だ。あの夜に内通したとして、早馬で朝には部隊を二正面で動かせる。

 俺が向こうに留まった場合、本隊が強襲による援軍を出す腹づもりか。その為の同時接触。或いは偶然て線も。


「分からないのは、何故クラン様かですね」

「アマチャは五重塔の事情を知らないから」

「サツキの姉さ兄様が、貴族ご令嬢の穿いている下着を尽く奪ったという?」

「奪ってないよ?」


 いや、事実奪ったようなものだ。

 説明が面倒だな。


「クランのパンツを人質に初心者向けダンジョンに公爵令嬢が立て篭もった事案があってだな」

「入り口から理解が追いつきませんが……。」

「複雑な事情なんだよ!!」


 駄目だ。何を話すにしても女の子のパンツから離れられない。どうなってんだ俺の人生?


「実はその件には裏がありまして」


 見かねたイチハツさんが助け舟を出してくれた。


「サツキ様に冒険者として同行を認めて頂くのに、ワタクシたちの脱ぎたてが一番だとご教示頂きまして。ワタクシははしたないと抵抗したのですが、サツキ様が女性の大事な箇所を守りし布地にえもいえぬ感慨を持たれるとかなんとか」


 裏切りやがった!! 自分の擁護に切り替えやがった!!

 そういやあの時も、彼女だけ替えの下着に着替えてたな。抜け目がない。


「つまり、本件もその茶番の延長線というか延長戦の可能性があるという事ですか」

「可能性ってだけだ。五重塔の時だってここまでガチで殺し合いはしちゃいない。いや俺は殺されかけたか」


 オダマキのダンジョンコアが無ければ致命傷だったもんな。


「それは是が非にでも」「ええ、お礼参りに参じなくてはね」


 鋭利な眼光でシチダンカとアマチャがアップを始めた。

 そのストックとネジバナに今度は裏切られた。やっぱ駄目だな。命を狙ってくるヤツ信用しちゃ。


「如何なされました?」


 俺の視線に気づいたハクサンチドリが、微妙な顔で首を傾げた。


「クランの件はこちらで対処する。貴族の動向は貴族に聞くのが早い。本隊は予定通り集結地点を目指す。イチハツさんは、ハナキリンさん達の方へ。カンナさん、仮拠点設営に付き合ってくれ。追ってアマチャ達を迎えてもらう」

「サツキの姉さ兄さん、よろしいのですか?」

「SSランクが攫われた程度でどうにかなるか。ガーベラさんの件でウメカオルが何か言ってくることは無いし、もしあっても知らぬ存ぜぬで通す。俺は先行するがお前らが到着する頃には古巣だ。アマチャ、引き続き全体指揮を任せる」

「承知しました」

「飛竜の背に余剰がありましたら私も」


 名乗り出たのはゴギョウさんだ。


「本隊は層が厚いですので、カンナ様のお手伝いと共に皆様をお迎えする役割が必要かと」

「それならボクからもお願いしたいよ。サツキ殿? 先行して随行する役割だったけれど事情が変わった。彼らと合流するにも不測の事態でこの面々が席を外した場合、ハナショウブ殿の〈旅館街〉に入れるわけには行かないしね」


 誤差は三日以内か。それだけ待てば支援隊が追いつく。イチハツさんがそちらに戻ってくれれば……あー、クラン頼りだったから向こうの代表代理が不在なのか。


「ホウセンカ、行けるかなぁ」


 再びワイバーンの頭を撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らしてきた。


「全重次第と言ってる」

「私そんなに重くありません!!」

「冗談だ。向こうで怨霊の館を展開するから男女二人きりになる心配は無用だ」

「え?」


 ゴギョウさんが口を開け青ざめる。


「今……なんて仰せでして?」

「ハナショウブさんたち怨霊がうようよするから、男性と二人きりにはならないよ。あれ? カンナさんを男だと認識してない?」


 それはそれで失礼だろ。


「いえ、いえいえ、いえ!! 男性とか女性とかそういう話ではなく!! 怨霊がうようよ……!?」

「むしろ怨霊たちは女性ばかりだから女性比率は多いよ?」

「やっぱり怨霊って言ってます!?」

「それにナースやシスターや中居やメイドや針子やバニーガールや女教師や通勤中OLや未亡人や巨乳義姉と保育士と、様々な業種が揃っているから不便はないだろう」

「バラエティに富みすぎです!! 医療従事者や聖職者や飲食店まで怨霊で埋め尽くされているんですか!? それに未亡人って、むしろ本人が亡くなってるじゃないですか? それ普通にご夫婦揃って亡くなっていますよね!? あと巨乳義姉って誰目線のお姉さんなんですか!? この並びでくると最後の保育士がいかがわしいサービスに思えるんですが、まさかそういうプレイですか!?」

「女学生の姿の霊も居るから、手当たり次第に配下に入れてるんだろうな」

「訪れる者を悉く支配下にするんですか!?」

「まぁ行動範囲限定(地縛霊)みたいなものだし。外へふらっと出てスカウトすることは無いかな。多分引き寄せられてるんだと思う」

「その怨霊の舘、女性が、犠牲になるんですのよね? サツキ様は、私も生贄にと……。」

「いや流石にゴギョウさんに女学生の制服を着せたりしないだろうから安心してくれたまえ」

「コスチュームの問題じゃないです!! あ、いえ、サツキ様にお見せするなら、着てみてもいいとは思いますけど。ただ最近、少しむちむちになってきて……ではなくて!!」

「? まぁ本隊が合流するまでゆっくりしてくれればいいから。忙しくなるのは受け入れてからだから。カンナさんもそれでいいかな?」


「ボクはそれで構いませんが、あの、ちゃんと説明して差し上げたほうがいいと思いますよ?」

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