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300話 シネンシス

 Sランクというだけあって、堂々とした立ち振る舞いだった。いやだから隠密要素どこ行った?

 勝ち気そうな表情は整っている。最近どこかで見た気がするけど、うーん。

 アネモネ村のポリアンサさん? 少し違うか。えぇと……そう、人妻。お姉さん系な人妻だ。


 ……いや大丈夫か俺?


「ふふ、アタシが誰か思案しているという顔ね」

「待って、大丈夫、分かるから、ここまで出てるから」

「そこまで出てるのに、出て来ない時点でどうかしら」


 悪戯っ子のように笑う。俺がおちょくられている?


「同い年くらいで、こう、お姉さんっぽいのが」


 それだけだとマンリョウさんやツバキ王女まで当てはまるからな。彼女らとは別系統だ。だからってクロユリさんやアカシアさんとも違う。


 ……何でこうホイホイ年上出てくる俺?


機縁(きえん)をあげる――アタシのお母さんのパンツは履き心地が良かったかしら?」


 笑顔なのに挑むような視線だった。

 ここで言うか?


「パンツ……?」

「今、パンツって聞こえたぞ?」

「しかも母親のだって?」

「履き心地というからには、既に履いている……?」

「まさか、サツキ代表が、冒険者の娘の母親の……?」


 ほら見ろ。会場がざわついただろうが。


「まさか、俺ぐらいの歳の娘さんが居たとはね」

「カサブランカの迷宮じゃレベルが上がらなくなったのよ。それでアンスリウムに滞在していたのはグッドタイミングだったわ。そうそう、学園じゃ可愛らしい格好をしていたわね、サツキ様」


 うるせーよ。

 学園に外部の冒険者が関わってるって事は、キマグロ騒動の時に居たのか。確かにSランク、SSランク揃いだったけどさ。


「さっきの質問だけどな」

「どれかしら?」

「たった今、君が聞いて来た」

「!? ば、ちょっとそんなの答えなくていいから!! 変態!!」


 余裕のある笑みが消え、朱に染めながら両手をぶんぶんする。可愛い仕草だな。


「変態……?」

「今、変態って聞こえたぞ?」

「しかも母親のだって?」

「履く以外にも使っている……?」

「まさか、サツキ代表が、冒険者の娘の母親の……?」


 ほら見ろ、また会場がざわついた。

 迷宮都市(カサブランカ)の大手宿屋プリムラ。軒を並べる高級ホテルと一線を画し庶民に寄り添った昔ながらの宿屋だ。そこの女将さんから身分を偽るための衣装一式を頂戴した。


「変装する必要があって服を貰ったんだけど、いつもここまで親身になってくれるのか?」

「そんなわけ無いでしょ!!」


 俺の頭からつま先まで往復しながら見る。


「そんなわけ……。」


 何で熱い視線になった?


「そんな……サツキ様が……アタシのパンツまで履くだなんて」

「何で君のまで履く話になってんの!?」


 びびったわ!! ルドベキア親子かよ!!

 ってまさか!?


「今、流行ってるのか? 母娘二毛作って」


 会場がざわついた。皆が衝撃を受けていた。シネンシスさんも固まっていた。


「それは……。」


 辛うじて言葉を発する。


「どこの毛の話しよ?」

「毛じゃないよ?」

「アタシの付着物がそうやすやすと手に入るとは思わない事ね!!」

「いらんわ!!」

「で、でも、どうしてもサツキ様が欲しいっていうのなら」

「オメーのそれは何デレだよ!!」

「!? 母さんのは履けてもアタシのは履けないっていうの!?」


 俺、何で怒られてるの?


「それでは次のかたのご紹介に移りたいと思います」


 ただ一人。アマチャだけがマイペースだった。投げっぱなしかよ。


「先の戦闘で敵の首を尽く刈りサツキの姉さ兄様に捧げたその数、最多数賞。無茶をする事で皆様ご存知――我が友シチダンカ!!」

「全てはサツキの姉さ兄さんの為に!!」


 いつのまにか登壇してて腕を振り上げていた。

 待て。

 全部俺のせいになっちゃうじゃん……。


「サーツーキィッ!! サーツーキィッ!!」


 シチダンカが音頭を取る。


「「「サーツーキィッ!! サーツーキィッ!!」」」


 場内が昌和する。


「サーツーキィッ!! サーツーキィッ!!」


「「「サーツーキィッ!! サーツーキィッ!!」」」


 どうしよう……カンナさんが言葉無く震えてる。

 反して、


「アタシ、この人に履いてるパンツを履かれちゃうんだ……。」


 シネンシスさんが陶酔した顔になっていた。

 ごめんカナンさん。

 こんな事に巻き込んで。


「南南西より飛翔体の接近あり!!」


 唱和を割くように、物見の冒険者が急報を上げた。魔法使い風の男だ。観測系スキルかな?


「街道に沿ってるぞ!! 200秒以内に再接近!!」


「こちらが目標のようですね。どうして誰も彼も空路を選ぶのでしょう」

「うん、ごめん」


 アマチャ、色々と溜まってるんだろうな。


「ホウセンカで出るよ。会場は撤収で。本隊の移動指揮は任せたよろしく」

「ワイバーン、上げますか? 周囲、警戒!! 離陸次第非戦闘員を中心に移動に入る!! ハクサンチドリ騎兵隊長!!」

「おうっ!! コマツナギ嬢から馬は受領している。いつでも展開できるぞ!!」

「サツキの兄さ姉様!!」

「あいよ。同等速度での正確な会敵位置は出せるかな?」

「へいお待ちを!! 実像で見えた!! 青いワイバーン!! 上に人が!! 少女が乗ってる!?」


 ……。

 ……。


「ごめん、それうちの身内だわ」

「その様ですね……。」


 アマチャが即座に警戒レベル引き下げの指示を出す。

 イチハツさんがわざわざ追って来てる? 向こうで何かあったかな?

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