30話 マリーとサツキ
ブックマーク、評価などを頂きまして、大変ありがとう御座います。
※運営殿からの警告措置を受け、2021/3/20に26話~41話を削除いたしました。
このたび、修正版を再掲いたします。
今回の対応で一番修正が入った所です。表現が多少、ちぐはぐになってるかもしれません。
30話目という節目。ある意味山場です。(運営からアカウント強制削除されるかの)
いそいそとベッドから降りる。
「じゃ、続けるわね」
尤物ぞろいの彼女たちが再びサツキさんに舌を這わせた。
唇に、耳に、胸に、優しく淫靡に口づけをする。
舐めるたびに。
彼女たちから命の根が吸われていく。
必定といわんばかりに。偏頗を否定するように。あぁ、魂の尾が隆起する。
残りの服と下着を脱ぎ捨てた手を止め、釘付けになった。
……。
……。
いや。いやいや。これ、こんなに大きくなるものなの?
黄泉平坂、なんて可愛らしい言い方じゃ済まないよ、これ。めっちゃ凶悪なフォルムじゃん!?
三人が一斉に、彼の指に集中する。
え? 大丈夫? 舐めたりして爆発したりしない? 指、レイガンとか出たりしない?
もはや諧謔を弄する余裕など無い。
ぴっちゃぴっちゃと、水気を含んだ音が厭らしく響く。
現実味の無い光景。淫蕩でありながら泡沫の夢のよう。
不謹慎にも、この光景をずっと見ていたいと思った。なるほど。含意を読み取れなかったわけね。
しばらく、そうした後。
三人の視線が私に向いた。
そうか。
いよいよ出番か。
足早に向かう私に、躊躇いなど無い。
ふはは!! せいぜい派手に乱れてやろうじゃないか!!
躊躇いこそは無かったが、
少しヤケクソだった。
ベッドによじ登り、彼を見下ろす。
……本当に、見目好い、可憐な裸体だ。
傍らに跪き、白い胸をそっと撫でる。
そのまま指を首筋から頬へ。輪郭をなぞるように。
お互いに裸体。ふふ、契情ではないか。
紅裙を侍らせるのはこういう気分かしら。
あぁ。
一口でいいから、辛口のニホン酒が欲しいな。
「マリー」
サザンカお姉さんが急かせる。殿方の傾城狂いを堪能するには時間が無いか。
と思ったら、
「よく、考えてみたらね。貴女まで脱ぐ必要は無かったわ」
おのれお姉さん!!
再び、そそくさとベッドから降り、脱ぎ散らかした衣服を着用する。
なんだろう。
惨めな気持ちになる。
もとの給仕服になり、三度ベッドへ登る。
正直、ムードが台無しだ。
これ絶対、私も脱いだままのほうが良かったと思う。何で着ちゃったんだろ? 着ないと誰かに怒られる気がする。
体勢を変え、彼のお腹に跨る。
おへその辺りから、なんぞ節くれだったものが上空に向け揺らいでいるが、これこそが魂の尾であり、まぁ所謂、黄泉平坂の正体でもあった。
凄く腫れあがった表面に恐る恐る触れた。指を這わすだけで精一杯。怖い。皆、よく怖くないなぁ。ちくしょう、変態か。
……ひょっとして見えてない?
なんとか摘まんで、位置を確認する。
「……あの、ミス・カメリア? ひょっとしたらですが、マリーさんでは体の成熟的にまだ早かったのではないのでしょうか?」
「え? えぇと……別に性行為じゃないんだしイケるんじゃない?」
おい!! こら、そこ!!
今更何言ってるんだよ!?
こっちはもう準備できてる。さっきの光景見て、わりとオッケーな感じに仕上がってるんだ。
これ以上不安にならない内に、彼の先端を入り口に宛がう。
いつでも行ける。
レッグフライヤー発進どうぞ。
下腹の上に腰を下した時だ。
――目が合った。
彼の瞼が開いていた。
……。
……。
「ちゃうねん」
としか言えなかった。
どうしよう。
目が覚めたら、親しくもない女が跨っててへそから伸びる魂の尾を撫でまわしてたとか。
変態じゃん?
私、変態の最上級突き抜けてるじゃん!?
「ちゃうねん!! ほんまはもっとロマンチックにな、結ばれるのとか憧れててな? ほんまちゃうねん!!」
「わかったから落ち着け!! それ以上腰を下ろすな!! 先端を擦り付けるな!!」
「ええい、いっそこのまま魂をシンクロさせてルフランしたるわ!!」
先端を入り口に押し当てたが、にゅるって滑って上手く入らなかった。おのれ!!
ん? 先端だと? あ、魂の尾が戻ってきた。
「サツキくん……。」
クランさんが抱き着いてきた。
私くらいの小さな体で、もう失わなうまいと必死で彼の胸に顔を埋めていた。
肩が震えてる。表情は見えないけど、きっと泣き崩れてるんだろうな。
「馬鹿、心配させんな、馬鹿」
反対側からサザンカさんが抱き着く。
言葉の語気とは裏腹に、そっと彼の頭を胸に抱き寄せる。生気の朽ちたような顔に涙の線が輝いた。大願成就を果たした女の顔だ。
クロユリお姉さんは、何も言わずただ見守っていた。ただ、慈しむように。
……どうしよう。続きをするって空気じゃない。
何だ、これ? 何の罰ゲームだ?
感動的な再会のシーンで、私一人だけ股を広げて彼の魂の尾を掴んで撫でまわしている。いや、おかしいだろ? お前ら、ちょっとは私に配慮してください。せめて放っておかないで。
あれ?
サツキさん、私を見てる?
「マリー、無茶をさせてしまう所だったね」
優しい口調だ。そして眼差しだ。
あれ? 何で私にだけ?
……まさか、サツキさん。私の事を本気に?
「こんな時に、とても言いずらい事だけど、マリー?」
「は、はい!!」
声が自然と上ずってしまう。
どうしよう。頬が熱を帯びる。顔を見られるのが恥ずかしい。
「先端が、少し入り口に入り掛けてるのだが……。」
「……。」
下の口が「にゅぷ」て返事した。
どうしよう。死んじゃいたい……。
もじもじしてる内に、魂の尾、どこに入れようとした自分?
そんな私達を見てクロユリさんがポツリと一言。
「どうやら、峠は越えたようですね」
めっちゃ元気じゃん!?
本人、めっちゃ元気じゃん!?
むしろこっちが熱にうかされちゃってるよ、ほんとにもう……。
「マリー? そういう事は、人目をしのんで……ね?」
「裏切り者ー!! ここに裏切り者が居ます!!」
こんなものだよ、女の連帯感なんて。
「ふふ、冗談よ。ごめんなさいね。マリーの事、変な子だなんて思わないで頂戴? サツキの蘇生に地獄門の開門まで捧げてくれようとしてたんだから」
「いっそこのまま捧げてしまっても――。」
「はい、だぁめ。そういうのは、皆んながちゃんとして、からよ」
それは分かる。確かに「ちゃんとして」がいい。
ていうか、え? 何? 私に何させようとしてたの?
「サザンカ、お前え、その顔」
「何よ? 惚れ直したなんて言ったって聞いてあげないんだから」
生気の無い顔で笑って見せた。サザンカさん、本当にいい女だな。
「無茶しすぎだ。馬鹿」
「ん」
カサカサな肌に窪んだ目。唇だって荒れている。それでも彼が愛した女はやはり格好いい。
私もあんな風になれるだろうか。
手の中で一向に治らない爆弾を弄びながら、ぼんやりとそんな事を考えた。
唯に。
頭に被された蒼穹の布地。コイツが全てを台無しにした。
畢竟、パンツを被った男がただ目を覚ましただけの話になった。
お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。
この後は、このままサツキ視点となりますが、
次回と次々回は、今まで出番の無かったキャラに少しだけスポットが当たります。
むしろ、貴女の為に追米ここまで書き続けてきました。




