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299話 功労賞

 (おさま)りがつかないので、例の簡易ステージをインベントリから取り出した。

 これから一席披露する。むしろ疲労でしかない。


 ……さっきまで大規模な戦闘状態だったのに、みんなタフだな。


 アルストロメリア開拓団第一弾の参加者全員が、今や遅しと俺の言葉を待っていた。どいつも面構えが違う。

 まぁ、殆どがアンスリウムで行き場を無くした連中だけど。


「皆、息災そうで何よりだ。俺が代表のサツキだ」


 おぉっ!! と歓声が上がる。ひとしきり響いた後、アマチャが待てと制する。何だこれ?


「諸君らには計画通り街道を東に前進してもらう。用意した仮拠点で後続のハイビスカス支援隊と集結。森林地帯へ向け隊を再編する。紹介しよう、エルフのカンナさんだ。先発で同行してもらった」


「おおっ、すげー別嬪さんだ!!」

「サツキ様もすみにおけねぇぜ!!」

「ひゅーひゅーっ、勇者に救い出された姫さまかと思ったぜ!!」


 ひとしきり声援が掛かる。アマチャが待てと制する。ほんと何だこれ?


「それではカンナさん、一言頼む」

「え、ボクですか? あ、はい、挨拶ですね。皆さんこんにちは。ご紹介に預かりましたカンナです。あの、一応は男の子なので、お姫様とかはやめて欲しいな、なんて」


「「「ひゅーひゅーっ!!」」」


 そしてアマチャが待てと制すると静まり返る。だから何の訓練積んでるんだよ。


「そしてこのワイバーンだが、名をホウセンカという。うちの子です」


 俺の紹介に、背後のワイバーンがガウガウと鳴く。

 そしてアマチャが待てと制すると静まり返る。って、何でもう手懐けられてんだよ!?


「サツキの姉さ兄様、先の戦いでの功労者を紹介したいのですが、よろしいでしょうか?」

「士気を上げるのか? いいだろう、せっかくだこのままセレモニーにしちまおう」


 了承すると、アマチャは大きく一礼し、しきし台を開いた。


「それでは、お許しを頂いたのでこれを機に主要人物の紹介もかね、名前を呼ばれた者は登壇して頂きます」

「「「おおっ!!」」」


 ……なんだこのノリ?


「まずは、サツキの姉さ兄様の自称専属メイド、ゴギョウ男爵令嬢」

「自称じゃありません!! 国王陛下からの勧めで拝命しています!!」

「それでは自己ピーアールをお願いします」

「あ、はい、サツキ様から見てちょっとだけ年上ですけれど、サツキ様はお姉さんとか人妻とか好きだから、頑張って尽くしたいと思います」

「どこ情報だよそれ!?」


 間違ってないだけにタチが悪いな。


「聞き捨てなりませんね、ゴギョウ嬢。具体的にはどのようにサツキの姉さ兄様に尽くすと仰せですか?」


 何でアマチャは食いつくの?


「え? いえ、それは、その、よ、夜のお勤めとか……。」

「「「おおっ!!」」」


 もうこれセクハラだろ?


「ほう? 夜のお勤めとは、その辺を詳しく」

「やめい!!」


 スパーンとスリッパでアマチャの後頭部に一発入れた。


「功労者の表彰じゃないのか? 侍女に卑猥な事言わせるだけのコーナーかこれ?」

「まさか!! 彼女の今後の活躍に期待してのものです。ですよね?」

「あ、はい!! サツキ様の熱願されます通り、必ずやご期待に応えてご覧にいれます!!」

「ご覧にいれるなよ!!」


 出だしから会場が置いてきぼりになった。


「それでは続きまして、このおかた。軍馬荷馬早馬問わず、開拓団の馬のコンディションを引き受けて下さる我らの生命線。ご存知、馬屋」


 本来は家畜を飼う小屋を指すが、ここでは馬の面倒を見る職業の通称だ。


「その代表を勤めて頂いてますコマツナギ嬢にご挨拶を頂きたいと思います」

「って、また貴族令嬢じゃねーか!!」


 旅人姿のコマツナギさんが登壇する。

 ベリーショートにした頭髪が甘いマスクと溶け込み、見上げる女性陣からため息を導いた。


「やぁ、ハナモモくん。おっと、今はあの可愛らしい子猫ちゃんでは無く、サツキ様とお呼びすべきかな?」


 囁くような声に、女性陣のため息が黄色い歓声に変わった。

 ていうか子猫ちゃんって俺のことか? ニャ次郎(にゃー)の事じゃないよな?


「相変わらずですね、コマツナギ先輩。いや失礼、コマツナギさん」


 仕返しだ。


「他人行儀なんてよしておくれよ。私はこれでも親しい仲と思っているのだけれど」


 親しかったか?


「さて、サツキ様への挨拶は後ほどじっくりとさせて頂くとして――諸君!!」


 会場へ向き直る。


「馬は良いものだよ。もし普通じゃ満足できなくなったり新しい扉を開きたいと思うのなら、私に言ってくれたまえ。具体的に言うとだn」

「はいお疲れ様でした。では次の方ですが」


 何かを察したアマチャが、コマツナギさんをステージからぐいぐい押し出す。女性に触れるのを嫌った彼にしては躊躇いが無いな。

 ちなみにアマチャが女性を嫌厭(けんえん)する原因はクロユリさんらしい。最初に会った頃は他の二人と同じく憧れの対象だったと思ったが。


「君はお堅いねぇ。そういうところは幼少の頃のままだ」

「貴女もだよ。犠牲者を増やすな」

「おやおや嫉妬かい?」

悋気(りんき)される要素がどこにあるっていうんだ」


 あれ? この二人、相性が悪い?


「あ、戻る前に一言伺いたい。コマツナギさんは、どうして開拓団に参加されたのかな?」


 アカネさんとの確執だって貴族なら既に耳にしているはずだ。彼女と懇意にするなら俺は(かたき)だ。なのに……いや裏がある?


「私かね? そんなの、我が愛しき婚約者様が副代表を任されているからじゃないか」


 ハッとしてアマチャを見る。奴め、肩を竦めやがった。


「このようにスカした殿方だけれどね。ふふ、実に馬っぽい所があるのだよ。具体的にはちn」

「いいから君はもう行きたまえ!!」


 そ、そうか。アマチャさん、意外と凄いんすね。


 その後、騎馬隊ハクサンチドリ隊長や騎士隊ヨモギ隊長が紹介されたが、うん、普通で安心した。あと、中央都市(アンスリウム)で誘拐事件を共謀したゴロツキ達がタンク小隊になっていた。


「それでは続きまして冒険者部門です。偵察斥候哨戒任務で隊を助けてくれた隠密部隊。その代表のSランク冒険者、シネンシスさん。どうぞ」


 促されて、軽装な女性冒険者が登壇する。隠密、のこのこ出てきて大丈夫なのか?


 って……誰?

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