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295話 水平リーベ俺の負担

新章の冒頭でキーマンになるキャラが出るのはお約束。

そして最初だけで大して出番が無いのもお約束。


そんなお約束に反逆したい。

「本当にこの子はもう、本当にこの子はもうだわ?」


 甲乙言ってもガラ美の世話をしてくれるハナショウブさんが心強い。


「「誠に申し訳ありません」」


 ガラ美とハモる。

 ハナショウブさん配下の幽霊が床を掃除してくれている隙に、ガラ美の汚れた箇所を綺麗にし新しい服を着させた。ガーベラさんが。


「君にも面倒をかけるね」

「実家では小さな弟や妹たちの世話を見ていました。日常茶飯事ですよ」


 ……。

 ……。


 あ。


「ご、ご、ご主人様っ!! わ、わた、わたくしご主人様以外に!?」

「すまん俺もすっかり女性だと油断してた!!」


 ガーベラさんにガラ美の世話させちゃ駄目じゃん!! 局部とかお湯で拭いてもらったりしてたよ!?


「イワガラミ殿、ご案じめさらないで。私は気にしませんので」

「でしたら、いいのですが」


 いいんかいっ!!


「ただ、わたくしの嗜好の後始末を、昨日今日会ったばかりの男の方にさせてしまうのは、気が引けますね」

「ワタクシも会ったばかりの時に後始末をさせられたかしら?」

「その節は大変お世話になりました。凄く良かったです」

「感謝されたわ?」


 俺たちが訪れる前の話か。

 そろそろコイツに命乞いを禁止させなきゃな。方々でご迷惑を掛けられちゃ。


「しかし分かってはいても今以って違和感が機能しない。元も含めてSSランク三人を相手にだ」


 ハナキリンさんも何気なく接していた。認識阻害というより概念から捻じ曲げられたとしか。


「知られずに入り込む『ぬらりひょん』と違い、私のは観測者に私が望む姿を事象ととして固定する事で視認の同期化を獲得します。紛れこむのはその副産物と言えばしっくりくるでしょうか」


 希望的観測を促す事で副次的に存在を曖昧にするのか。

 諜報でも暗殺でもひくて数多じゃねーか。


「私としては、その」


 思い出したようにモジモジし始めた。


「先ほどの一の若様の愛撫の方が、グッと来たのですが」

「ちょっとしか触ってないよ!?」

「つまり、まだ本気は出していないと」

「そりゃあまぁ、俺が本気になればこんなものじゃ済まないぜ」


 何でドヤったんだろ?


「ならば一層!! この身は若様のお好みの色に染まらんと欲します!!」

「馬鹿か!? クランに操を立ててんのに本人の前で!!」

「ん……許す」


 スカート中の物体に許された。

 つくづく懐が広れぇ……。


「それではご遠慮なき様。重ね重ね」

「ちょ、おま、待ってちょっとだけ待って!! ガラ美!! 君はひとまず席を外してくれ!!」

「わたくしでは、不足でしょうか?」

「流石にお前には見せられんわ!!」


 かくして。

 図らずとも、聖女兄弟を攻略してしまった。




 昨夜、息も絶え絶えになったガーベラさんだが、朝には復活していた。

 ただ、


「……。」

「あ、体の方は、無理はないか?」

「……。」

「ガーベラさん?」

「……!!」(ぽっ)


 とまぁ、視線が合うと赤面し俯くようになってしまった。

 やはり無茶をしすぎたか。

 反応、可愛かったもんな。そして今も可愛いもんな。


「ああ、そうだ。君のことは内密にしいてこうと思う」

「皆様には、このままで?」

「立場が込み入りすぎなんだよ。説明が面倒なげふん、ウメカオルの実情は技術大国の割に徹底して秘匿されている。君の立場は俺にとっても有用だ」


 こちらにとってのトロイの木馬で済ませるには惜しい。


「確かに、ある程度の開示は一任されてますが」

「ぶっ、他国でか!?」


 うっかり吹き出してしまった。


「いいえサツキ様にです」


 その呼び名で来た。

 ハツナ様とやらに見込まれている? 俺何かやっちゃいましたか?


「ベッドの上で口をわらせなくて済むなら、それに越した事はないが」


 手摺に寄りかかり、テラスから庭を眺める。

 館の庭園で、エルフたちを前にネクロシルキーさんが美少女の股間に咲く怪しげな花の蜜に毎夜人々が誘われる怪談を披露しているが……要はおちんちんの話だった。

 待て。何を吹き込んでいる?


「あれはランギク君には聞かせられないな。スイレンさんは見なかったかね?」


 ガーベラさんに何気に聞くと、微妙に苦笑いをしつつテラスの戸口を差した。

 上品なレースのブラウスにブランド(マドモワゼル・イチゴ)もののスカートを着たランギク君が丁度現れた。

 一緒に居るのは、ざっくりした純白のニットをすっぽり被ったクランだが……それ、俺のロングセーターじゃないか?


「……サツキお兄様、今よろしいでしょうか?」


 気力の無い声量はそのままだが、何故か熱を帯びている。

 うん。何を吹き込んだ?


「別に」とクランがそっぽを向く。


「クラン様から、お話を伺いました。昨夜はお楽しみでしたね?」


 ぎくり、とガーベラさんの肩が跳ねた。下手くそか。


「差し出がましくは存じますが、その、次に機会がありましたらわたしもご寵愛に授かれたらなといっそ林檎になりたい……。」


 急にエルフ辞めたくなってる。


「林檎になって荒々しくサツキお兄様に食べられたい」


 怖いよ!?


「……ランギクちゃん……分かる気がします」


 怖いよ!!


「人類系エルフ系問わず、欲望を律してこその人間だと思うのだが」


 これは冒険者に限った事じゃない。

 自分の欲求を喚くだけなら勝手に淘汰されよう。厄介なのは、他者にまでくだらない思想を強要する連中だ。


「確かに……パーティやキャラバン内での……男女関係の乱れは御法度です」


 むむ、とクランが難しい顔をする。乱れる気満々だもんな、お前。

 俺が最初に追放された理由もそれだ。『お前は秩序を乱す』って。結果、乱れてるのは俺以外のメンバーだった。


「それは開拓団にも当てはまるよな? だからランギクくんのような愛らしい姫からの申し出は光栄だが……。」

「あ、愛らしいだなんて、そんな」


 髪をいじりながらモジモジし始めた。何この可愛い、何?


「サツキくん……結論付けるのは性急過ぎ……。」


 あ、話しまだ終わってなかったのね。


「男女間における痴情は律する必要があるでしょう……ですが、男の子同士なら……その限りではない」

「恋人を何に売り渡してんだよ!?」


 悪魔か!?


「安心して……その分……私も取り返すから」

「俺の負担!!」

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