表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

281/389

281話 ルドベキア

多くのかたに読んで頂き、またブックマークなどを頂きまして、大変ありがとう御座います。

下品な話もここまでです。

「魔術的な封印はありません。そのまま開封できます」


 ガザニアの報告に中央の広場へ戻ると、世話役のエルフが封書を渡してきた。


「彼女から直接?」

「いえ、仮設天幕の執務台に、いつの間にか。広場では皆が村長代理の姿を見ていました。いつも通りだっと語っています。ただ、我々が詰める天幕に入った事と、姿を消した事については誰からも確認が取れません――何者なのです?」

「ここに答えがあるといいな」


 封書の表面には、大きく俺宛と記載されている。達筆だ。

 どうせ消えるなら黙って出て行ってくれれば良いのに。ガザニアを勘付かれたな。

 なら置き土産は彼女なりに、アネモネに思い入れがあった現れか。


「中身は?」

「いえ、そこまでは。呪い等の検知にも掛かりませんので危険物では無いと判断しました」


 内心肩をすくめた。

 ハイビスカスの王族が魔術で出し抜かれてるんだよ。他にもブラックお婆様の作品を所持していないと断言できない。

 封筒の重さを確かめ、封を切った。

 手紙が一通だけ出て来た。

 読みたくないが、みんなが期待の眼差しで見てくる。明日にしちゃだめかなぁ。


「えーと……やる事終わったので帰るってさ」

「「「はぁ!?」」」


 広場に集まった村人とハイビスカスの役人が一様に声を合わせたんだから喜劇だ。

 いや、だってそう書いてるんだから。


「ポリアンサ女史の背景は想像がつく。商業系複合組合が販路拡充まで先を見据えたかは知らないけど、輸出業に新規事業開拓を目論んでるなら、いずれ接触を図ってくれるんじゃない?」


 その時の矛先は俺になるかもだけど。

 問題は後半の部分だ。


「ひいては次期村長にマヤさんという人を推薦するとあるけど……。」


 名前に心当たりはある。

 昨夜一晩で住居台帳を編集したってのもあるが、それ以外にも理由はあった。

 マヤ・ルドベキアさん。

 今まさに、娘のカプチーノ・ルドベキアさんと共にうちのアウラウネに触手責めにあっていた彼女だ。




 広場で村長宅を背にステージを展開する。アンスリウムの騒動でクロユリさんが使った奴を中古で払い下げたものだ。

 アサガオさんが登壇する。

 新村長のお披露目と言われ集まった村人たちが、怪訝にざわつく。


「お疲れ様です、皆さま。これより、アネモネの村の新たな(おさ)にご挨拶を頂きますので、よく御覧ください」


 アサガオさん、何で脅迫みたいになってるの?

 そして、皆が注目する中、高々とM字開脚に拘束されたままのマヤさんが掲揚されると、「おぉっ」と感嘆のどよめきが満ちた何この光景?


「さぁ、ご挨拶を」


 拘束する蔦の(あるじ)たる少女に促され、マヤさんが「ひゃあうっ」と婬猥な呻きを漏らす。

 場が静まり返った。


「え、えぇ、と、ん、わた、わたしが新しく、んん、ああっ、そこはっ、そんなに締めたら食い込んで……だめ……もう、許して……。」


 新村長が就任早々に許しを請うていた……。

 あと日差しが眩しかった。


「我々は、とんでもない魔物を受け入れてしまったのかもしれない」


 エルフ達がびびってる。


「ふふふ、あたしのお母さんのポテンシャルに今更気づいたようね」


 なんかドヤってるが、お尻をこちらに突き出した姿勢のまま、やはり触手に絡められていた。

 それにしても今日は日差しが眩しい。


「せめてポーズくらいは選ばせて上げれなかったの?」

「すみません、私も()めどきを見失ってしまい……。」


 スカートから蔦を伸ばすアサガオさんも戸惑っていた。




 アネモネの住民は新たな村長を承認した。

 下手に違を唱え、自分が触手に辱めを受けるのを恐れたのだろう。待て、ルドベキア親子は生贄か?


「そんな訳で遅くなりました」

「あ、戻ってきたのね。もうこのままハイビスカスダンジョンの観光名所になるのかと思ったわ?」


 ネクロシルキーが自嘲気味に口の端を歪める。

 怨霊の館は、ちょっと目を離した隙に小さな別館が出来ていた。


「増えたね……。」

「ゆくゆくは新館としてオープンさせるわよ?」


 危なかった。本当に観光名所にする気だったとは。


「二人には世話になったな。借りはいずれ返させて頂く」


 正門に控えるネジバナとストックだ。

 本来の役割ならスミレさんの護衛に付きたかっただろう。ガザニアを見込んでたとしても、戻りはアザミさんと二人で帰らせた。


「そう思うなら、兄ちゃんも自重してくれよ」

「お嬢様をお諫めできぬ我らにも責任はある。サツキ殿だけが気に病む義理ではない」


 そう言って頂けるのは有難い。

 そもそも論で言えば、俺が勝手に救出作戦に出たのが悪いんだ。その上で、彼らは館の護衛に徹する判断を選択してくれた。


「俺っちらよりも、もっと頭を下げるお人は居るだろうしな」

「いるわよねー」


 ネジバナとネクロシルキーが館へ目を向ける。




「それじゃ……サツキくん……そこに座りなさい」


 玄関前で正座させられた。

 目の前に無表情なクランが立つ。

 その後ろで、スミレさん、アザミさんと、一緒に戻ったアサガオさんが俺を見下ろしていた。少し離れて、イチハツさんも居るけど、何か申し訳無さそうな顔で見てくる。何?


「昨夜は放ったらかしてすまない本当はクランの側に帰りたかったが侵略国の被害にあった村を見捨てられず子供たちを保護帰還させた後も執務に尽力していたつきましては御免なさい」

「早口で気持ち悪いわ」


 土下座する俺を、ネクロシルキーが虫でも見るような目で見下ろしていた。

 何で?


「私……期待して待ってた……。」


 クランが涙を拭う振りをする。

 あ、これそれほど怒ってないやつだ。


「でも今はそれよりも……。」


 顔を上げた。


 ……。

 ……。


 彼女の顔を見た瞬間、迂闊にも凍ついた。

 般若の面だったらどれだけ良かったか。なんて、


「私も……サツキくんとの……愛の結晶が欲しいの」


 なんて切なそうな顔をしやがるんだ。


 イチハツさんが首を縦にブンブン振っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ