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262話 営みに

ちょっとだけえっちな話しです。ちょっとだけ……。

「実際のところ、どうなのでしょう?」


 三角目の眉を疑問に寄せる。


「どう……とは……?」

「そこまでねちっこくゲフン、丁寧に接してこられて、その時点で三回で済むものでしょうか?」


 掘り下げ出した。

 問題は提起されている。だからってこのまま課題の解析を進めていいものか。


「……その時点というのは……胸の段階ね。なんとか……耐えられるから。……あ、時々その時点で駄目になることもあるけれど」

「耐えて三回もとは、恐るべきはご主人様の手腕かお嬢様の感度か」


 感度とか言うなよ!!


「いいえ、それは違いましょう。ようくお考えになって」


 イチハツさんが真っ向からガラ美を否定する。

 これはしたりとガラ美が姿勢を正す。


「ご主人様のお嬢様への執着を侮ってはなりません。聞いた話では呪詛により幼少よりクランお嬢様に対し嫌悪を抱いておられたとか。その枷を無くした今、一体誰にご主人様の愛撫を止められるましょうや」


「少しは止まって相手の状態を確かめるのがよろしいかと?」


 ガザニアが小声で嗜めてくる。ぐうの音も出ない。


「受け取られ方が逆ですのね。未経験なれどそのような目に晒されば、ワタクシなら優にその倍は果てると想像に容易いですわ?」


 あ、想像するんだ……。


「ならば、わたくしはそのさらに倍は果てようかと存じます」


 君はちょっと待て。


「そんな。命を危険に晒してしまいますわよ?」

「そのような危機的状況であればこそ――。」


 その時のガラ美の瞳は、とても澄んでいたと思う。

 草原をゆく柔らかな風と陽だまりを浴びて、彼女は恭しく宣言した。


「命乞いが映えようというもの」


 この中で。彼女だけは一歩先へ、悟りの境地に居たようだ。


「ま、まさか、既に命乞い失禁まで勘定に入っていると仰いますの!?」


 イチハツさんも何で理解しちゃうんだよ?


「……私は……粗相まで見せる気はないから」


 クランが何をやらされるのかとビビっていた。

 俺も望んでない。

 決して。

 クランの失禁姿など。


「一般的な行いもまだだっつーのに、あの娘は何でこう自分の欲求に忠実何かねぇ。ねぇサツキの姉ご兄貴?」

「お、おう、だよな!!」


 駄目だ。想像しちゃ駄目だ。一般的じゃないんだきっと。


「あれも、ある種の承認欲求なのでしょうな」


 ガザニア? アレのどこを承認しろと?


「で、ではランギクさんから見ては、どうでしょうか?」


 やめろ。こんな事でランギクくんに見解を求めるな。穢すな。


「王都に入る前にご一緒したことがあるのですが、わたしが見た限り概ねお話の通りでした」


 凄いなクラン。こんな小さな子にまでアヘ顔おっぴろげ晒してたんだもんな。

 普段は内気で大人しいのに。夜は凄くなる。

 だがそのギャップは正当化に程遠いジレンマを生む。


 もとは豪快な女性が好みだった。その点、サザンカは充分ゴリラ(好み)と言えよう。彼女のゴリラパワーにどれほど胸をときめかせたか。

 今は違う。

 俺の手で、この少女を新たなゴリラパワーに目覚めさせる「育てる喜び」を知ってしまったのだ。私が育てました的な生産者目線のゴリラだ。

 そこに開脚失禁の絵面は無いのだ。断じて。


「私見ですが、あの状況を打開するには、サツキお兄様には鬼畜に徹して頂く必要があるかと」


 俺、今度は何を求められてるの?

 相変わらず覇気のない声なのに、言ってることが少年のそれじゃない。


「……鬼畜……ある意味王道ね」

「仰せの通りですわ、クラン様。モンブランがケーキの玄人好みであるならば、ランギクさんの言葉はまさにモンブラン」


 やめろ。モンブランが食べにくくなるからやめろ。


「……つまり……私がどれほど()めてと懇願しても……決して止まることを知らない暴走馬車」


 何で嬉しそうなの?


「では、営みに花を添えるというのはどうでしょう」


 イチハツさんの社運を掛けた一声だった。


「恐れながら、方向性を定めるのが肝要かと存じます」

「分かっていますわ。サツキ様の弱点を突きます」

「なるほど。流石は侯爵家のイチハツ様。でしたら攻めの一手で御座いますね」


 ガラ美とイチハツさんの間で何か通じるものがあったらしい。


「恐れながらご主人様の弱点。それは――。」


「女性の足です」「お姉ちゃんの……パンツね」


 イチハツさんとクランで意見が分かれた。

 侯爵令嬢は少しだけ困った風に、白目がちな三角目を彷徨わせ、


「クラン様。それは前提条件です。言わば本丸。いずれその中身ごと、ことごとく陥落するでしょう」


 言い方酷いな。


「必要なのはそこに至るまでの添え物。要するに女性の足です」

「……言われてみれば……私やサザちゃんも視線を感じていたわ。よく……チラチラ見られていた」

「ワタクシも時折視線は感じていました」


「安心してくれサツキの姉ご兄貴!! オレは常にサツキの姉ご兄貴の足に釘付けだぜ!!」

「お前はもっと他を見ろ」


 そういやジギタリスでもゴロツキ共に足を撫でられたな……。


「わたくしも、今思えばおっ広げで命乞いをすると、先に太ももから爪先にかけて鑑賞されていたかと。もっとこう、無様な様を見て頂きたいのですが」


 何で不服そうなの?


「では、とりあえず足、という事で」


 とりあえずビールみたいに言うな。


「具体的には、そうですね」

「イチハツ様。わたくしに案があります」


 ガラ美、生き生きしてるよな。


「まずクランお嬢様の両手を拘束します。拘束はわたくしとイチハツ様とで。縛ったりご主人様に押さえて頂いては、むしろご主人様が萎えてしまいますので」

「女性が不当に扱われるのを嫌っておいでですものね」

「わたくしは物のように扱われたいと常々思っているのですが、まったくご主人様ときたら」

「女心に……いまいち疎いから。サツキくんは……。」


 俺が悪いの?


「……それで、続きは?」


 クラン? わくわくしてない?


「当然お嬢様は抵抗します。ですが欲望に(たけ)ったご主人様になす術もなく押し倒されて――。」

「お待ちになって。ワタクシ達が両手を拘束している時点で押し倒されているのではなくて?」

「既に押し倒されたお嬢様がさらに押し倒されて」


 ややこしくなってきた。師匠の師匠は我が師も同じ、みたいなクリスタル的な。


「抵抗しようとも虚しく宙を掻く足が」

「……やっと足来た」

「確かに、それなら少女の儚さとこれから起きる淫猥なひと時を連想させるに充分ですわね。でしたら、尚のこと問題は――。」


 すまん。問題しか無いと思う。

 あとイチハツさんの連想は過剰だと思うよ?


「仰せの通りです」


「その時のソックスは足首までの清楚系がよろしいかと」「靴下は膝上で余剰分をアピールすべきね」


「……。」

「……。」


 何この、やっちゃったみたいな気まずい空気は?

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