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261話 デリケート

 部下と舎弟に露見した。俺たちがヘタレだということが。

 何故かクランと並んで正座を強要された。


「サツキ様は一体お世継ぎを残す責任をどうお考えなのですか」

「返す言葉もない」

「……待ってサツキくんを……責めないで」


 クラン……。


「私の事を気遣って……最後までしてくれなかっただけ……問題は私にあるわ……。」

「ですがクランの姉さん。サツキの姉ご兄貴がそれでも求めていたら結果は違っていたはずですぜ? クランの姉さんだってサツキの姉ご兄貴から強引に攻められて悪い気はしないでしょう?」


 オカトラノオが余計な事を言い出した。


「左様。気遣うあまり(あつもの)に懲りて(なます)を吹く様では困りますぞ」


 ガザニアの理屈にしばらく何やら思案に耽っていたクランだが、おもむろに(ゆっくりの意)立ち上がり膝の土をポンポン払うとこちらに向き直った。


「……サツキくんはその辺……どう考えているのかな」


 裏切りやがった!!


「いやだって!! おまえ前哨戦だけで凄い事になるじゃん!? あれ結構ヤバいよ!?」

「……それでも……本当にしたいなら最後まで来てくれるはず。……歯痒いわね、サツキくん?」


 ポソポソと話すクランにハッとした。


「まさかお前、あの状態で俺を待っていたのか……?」

「……半分意識飛んでた」

「ダメじゃん!!」


 どうしろっていうんだよ。


「……だからって……女の子だって好きな男の子には飽満(ほうまん)の悦楽を味わって欲しいのよ……。」


 顎をひき、控えめな視線で見つめる仕草の愛らしい事。

 そんな風に想ってくれてたのか。


「状況を整理しましょう。前戯だけで奥方様が大変な事態に追い込まれるとの事ですが」

「前戯とか言うなや」

「問題点はそこではないと」

「ていうか俺、追い込んでたの?」

「……どちらかというと責め立てられるというか……強制絶頂というか……。」

「つまり真の問題はサツキの姉ご兄貴の前戯が()()()()()って所にあるんだな!!」

「お前ら俺をディスってる?」

「その上での遁走とは、実に格好がつかないと存じますぞ」

「あ、ディスられてるのね」


 好きな子と気分が盛り上がったら、そりゃはしゃいじゃうだろ?

 爆発しちゃうだろ?


「オレが言いたいのは計画性が重要ってことですよ」

「ああ、なるほど。それなら理解できる。つまりペース配分だな」

「流石サツキ様。ご理解が早い」


 妻帯者のガザニアが納得するなら、課題は消化されたも同然だ。

 ていうか俺、いつまで正座させられてるんだ?


「時間配分とは盲点だった。つまり左乳首に30分、右乳首に30分、おへその辺りに30分、下腹、下腹のさらに下、て具合に進めれば」

「……何時間かける気かな? ……お姉ちゃんを前哨戦だけで何回昇り詰めさせるの?」


 クランが複雑な顔だった。あ、照れてる? まんざらでもない?


「もういっそ合体しないと出れない部屋にでも放り込んでくれようか……。」


 ガザニアがこめかみを押さえていた。




「お待ちください」


 イチハツさんである。ガラ美の事を介抱してくれていたが混ざってきた。


「殿方に託せばこのような事に。女性にはデリケートな問題です。まずは女子会で現状の把握が先決です。解決案はその結果に基づき決定すべきかと存じますわ?」


 ううむ。一理ある。……あるのか?


「はーい、女子集合ー。」


 仕切り出したな侯爵家令嬢。


 久々にカフェテーブルを出す。苺さんがガラ美を確保して以来だ。

 ついでに紅茶葉とケーキセットも。紅茶はガラ美に淹れさせる。ベリー家での教導で培った手際が冴えた。


 クランが座るのを待ち、それぞれが席に着く。

 イチハツさん。

 ガラ美。

 ランギンくんもそっちに混ざってる。

 あとワイバーン。

 いや誰か気づけよ。色々無茶あるだろ? なんか舌でチロチロとテーブルの紅茶を舐めてるけど。


「まずはクラン様より開会の挨拶を頂きたいと思います」


 何か始まった。


「本日は……ご多忙の中、かくもご列席を賜りまして……厚く御礼を申し上げます。このよき日にこの度の会を――。」


 思ってた女子会と何か違う。

 あと凄い勢いでワイバーンがケーキ食っとる。甘味好きなの?


「ではクラン様。サツキ様との営みについて詳しくお話し頂けますでしょうか」


 全員の視線がクランに集まる中、ワイバーンのケーキを食べる音だけがうるさかった。

 そして語られる真実とは?




「……サツキくんは……いつも優しかったわ。私の体を……気遣ってくれるの……。」


 何か、崖に追い込まれた犯人みたいな供述が始まった。

 聞き耳を立てるガザニアとオカトラノオが、うんうんと俺の隣で頷く。何故かコイツらも正座だ。


「もっと詳細にお願いします」


 イチハツさん、食いつきが尋常じゃ無い。目がギラギラしてる。


「ハナショウブ様から……伺っていたのではなくて?」

「細かい描写は割愛されていました。生殺しです」

「そう……。」


 何で同情の視線になってるの?


「サツキくんはね……。」


 何かを察して語り始めた。


「お夕飯を一緒に食べる時から……。」

「あ、そこはスキップでいいです」

「……。」


 いや喋らせてやれよ!!


「えぇと……それじゃあ部屋で二人きりになった所から?」

「がんがん行きましょう」


 ガラ美も身を乗り出した。


「まずベッドに並んで座って……。」

「「よし来たぁ!!」」


 イチハツさんとガラ美が右手を握り合う。どれだけ期待してんだよ。


「サツキくんの方から……。」

「「サツキ様の方から!!」」


 いや静かに聞けよ。


「名前と年齢を聞き始めるの……何で?」


「「「「何でインタビューから始めるんですか!!」」」


 全員から非難された。


「何やってるんすかサツキの姉ご兄貴!?」

「ベリー夫人からは一通り教導を済ませたと伺いましたが?」


 ガザニア、何でそれ知ってるの?


「クラン様は、よく冷めませんのね?」

「毎回聞かれるから……自己紹介するくだりでだいぶ準備が整うようになった……。」

「クランお嬢様!! 名前を!! お名前を教えて頂けますか!?」

「……ガラ美? 名前……呼んでるよね?」


 そうか。最初のインタビューで出来上がっちゃってたのか。


 だが、そうなると尚更、苺さんたちの営みはあてにならない。

 どう見ても美少女なランジェリー姿のブルー伯父さんを拘束する所から入るもん。ハードル高いよ?


「ではクラン様。インタビューの後はどうなさってるのですか? 具体的にお願いします」

「えぇと……。」


 ぽそぽそと語り出す。

 アレがそうしてこうなって――。

 次第に、クランだけじゃなく、イチハツさんとガラ美も顔を赤らめモジモジし始めた。


「なるほど。流石はサツキ様です。とても丁寧でいらっしゃる」


 うわずった声でイチハツさんがこちらに視線を送るが、それどころじゃない。

 ケーキ食べ終わって眠り始めたワイバーン。そろそろ討伐してもいいのかな?

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