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255話 あぁ、愛しきおデコちゃん

261話以降がぐだぐだになって進みません。

サツキとクランに新たな展開が。

 鬱蒼とした森林から解放されると、丘陵を背景に草原が広がった。


「ガラ美は早く慣れろ」


 急激な環境の変化は作戦行動に関わる。俺でさえ目を二度ほど(しばた)く必要があった。何もせず平常なガザニアがおかしいんだ。


クラン(奥方)様ですな」


 敵より先にそっちか。

 丘陵の下に本陣があるのだろう。軍勢が広範囲に陣形を組み進軍していた。その突出した部隊に対しちまちまと砲撃呪文を放っている。


お嬢()様なら一思いに貫通でますでしょう? 手探りなように見受けられますが」


 だから何で君らは奥様呼びなんだよ。


「本陣、というより司令塔が掴めない。花道を打ち込む余裕は残さなきゃ――今のが三発目。いずれ取捨選択も叶わなくなる」

「別れましょう」


 破局になったようなセリフと共に、ガザニアが和刀を抜く。

 頷きガラ美も杖を構えた。


「ガラ美はこのまま左翼。ガザニアは回り込んで右翼へ。各個撃破だがガラ美は長期探索の後だ。引き際ぐらいは判断して見せろ」

「それは、できなかったらご褒美げふんお仕置きということですね……ハァハァ」

「倒錯的な嗜好で自分を追い込むのはやめたまえ」


 ていうか命かけんなよ。


「敵指令が布陣の中央とは限らない。単騎相手に効率の悪い展開をあえて命じるくらいには姑息なんだろうさ」

「そちらに向かいますかな? ならば俺はせいぜい派手に囮を務めます」


 散ッの掛け声と共にガザニアが姿を消す。いや忍者かよ。


「では、わたくしも。せいぜい派手にイキます」

「支援の話だよね?」

「お任せください」


 どうしよう。今更痛感するのもなんだけど、苺さんに教育任せたら手に負えない子になったよ?




 ガラ美たちと別れ、単身敵集団に突撃する。

 隠形のステップ――日の前に天あり、摩利支と名づく。陽炎を神格化した異界の神の御利益を以て、踊り子スキルを昇華した技だ。大神通自在の法あり常に日の前を行き、日は彼を見ざるも彼よく日を見る。

 でもステップやめると敵に見えちゃうんだよな。

 いやこれ結構ツライわ。


 ……早めに切り上げるか。


 交渉とは名ばかりの侵略活動なのは瞭然だった。なら駐留部隊の存在をプルメリア王から伺った時点でこの展開は予測できた。

 視界の隅で熱線が敵陣に伸び、その先で悲鳴と雄叫びが返る。ガラ美、元は火炎魔術師だったが既にフレイムランチャーと化したな。

 さらに遠くで、兵士たちの叫びがこだまする。あちらはもう会敵だ。帝国の百人隊長クラスの戦闘、できれば見たかったな。

 今のところはどちらも順調……あ、待って。前方。地を打ち付ける地響き。迫ってくる。


 小さな丘の向こう側、かな。


 質量が地面をけたたましく荒らす。湿度が保たれた草原地帯は砂塵こそ上げないが、移動距離が早い。

 目を凝らす。

 見えた先頭!! 連中、騎馬を投入しやがった!!

 やべ、進軍方向が森だからって侮った。森林地帯に特化したフォレストディアでも無ければ高速移動は自滅行為だからって。


 狙いはクランかガラ美? いや他にも隊列が見える。こんな少数に三部隊を放ったか。


 魔力のセーブができるクランや一人終末戦争と謳われる青組百人隊長ならまだしも、ガラ美は良くない。撤退してくれればいいが。


 ……。

 ……。


 いや騎馬に向かって撃ってるし。

 あの馬鹿、目線が同角じゃ優先もろくに付けられないぞ。回り込まれる前にせめてポイントを変えろ、動け。


 ……いっそアイツの所に向かうか。


 足を止めかけると、頭上を「キュン」と空気を焼く響きが、流星のように流れた。

 一条の銀流が騎馬の先頭に着弾する。最初に突出してきた部隊だ。さらにもう一条の線が描かれ、遅れて例の音が耳朶を打った。

 発射元はエルフ森だ。

 ここからじゃ判別つかない。大樹のどこかにある見張り台だろう。彼女の野薔薇撃ちだ。



 蒼穹(草弓)に 裂く(咲く)銀鱗よ 一初(イチハツ)


 あぁ、愛しき おデコちゃん。



 その後、すぐ司令部が判明した。下手に騎馬隊を出したのは失敗だったな。

 隠形で掩蔽(えんぺい)し、諜報行為をこなしつつ敵陣に潜入すると……司令部は狂気の沙汰だった。

 いかつい顔の軍服姿が檄を飛ばすが、細部を詰める中間管理職が上手く回らず、短時間で効果的な伝達、展開ができていない。

 当初の隊長や指揮官補佐クラスが、目に見えた成果が出ない事から処分されたらしい。


 ……いや人材を使い捨てかよ。


「歩兵第一部隊が先行するのでは無かったのか!? 何故後続がもたついている!!」


 天幕をヒステリックな叫びが響く。みんな青い顔だ。


「お前!! 状況を説明しろ!!」


 指揮棒を指された若い士官が「ひぃ」ともらし姿勢を正した。

 周囲の同僚が左右に距離をとる。


「第一部隊が森林地帯に到達後、敵の動きを見て波状攻撃を仕掛ける手筈になっており……。」

「まだ到達できぬというのか!! だったら第二部隊を早々に送り込めば良いものを!! そもそも第一部隊は何をやっている!? 何故、未だに平野から抜けんのだ!?」

「敵の魔法攻撃に加え、敵歩兵の妨害が」

「勢いでひき潰せば良い!! 原住民がどれだけの戦力を出してきたという!?」

「き、規模は不明であります!! 現在解析中とのことで」

「そんな暇があったら攻めの手を緩めるな!! 何のために連中の軍部が動いた機会を狙ったのかと!!」


 やっぱり。ハイビスカスの内情は筒抜けね。


「騎馬隊は何故成果を上げない!? 敵の反抗規模はそれほど無い筈だ!! どれだけだ言ってみろ!!!」

「それだけです!!」

「そうだ!! それだけなのだ!!」


 おい、この問答意味あるのか?

 まぁ、もし知っててもたった三人と狙撃手一人に部隊の頭が抑えられたとは言えないわな。


「なのに何故、原住民どもは屈しないのだ!!」


 いや不毛な。

 歪な信念は頑陋(がんろう)にしか映らんよ。

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