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243話 プルメリア

読んで頂き、またブックマークなどを頂きまして、大変ありがとう御座います。

全裸回です。

「しかしあれだな。礼を尽くすのはこっちだっつーに、壇上からすまんのう」


 申し訳なさそうにサングラスの奥で眉を顰める。

 よく見ると人情深そうな顔だ。

 どこまで信用できるかは別として。


「提携を持ちかけたのはこちらです。それも立場上は国家の行政にない訳でして。公式な使節団とは言い難いので、ご配慮頂けただけでも我々としては」

「お、そうけ?」


 ニカっと笑う。

 ほんとこれエルフ国王か? いや半裸だから王族なのは間違いないか? アザレアも王様は半裸で街歩ってたもんな。


「それじゃ、まずはアザレア陛下の親書を見せてくれるかな? あ、そこの君ら、うん椅子を用意してあげてくれ。あ、いや普通の椅子でいいから。椅子になれって言ってねーから」


 俺たちの背後に回ったエルフ達が残念そうに去って行った。


「すまんね、このような場は久方ぶりなんでね。皆、一ネタやりたくてたまらないようだ。すまんね」

「あ、歓迎されてたんすね」

「そりゃそうよ。やるね!! このこのぉ!!」


 大丈夫だろうか。こんな所と同盟結んで。


「以前よりサツキくんの高弟には、拉致された少年達の保護や実行犯共の駆逐など幅広く支援してもらったからな。加えて先日、我が最愛の甥っ子を救ってくれた。感謝の念に絶えんってやつよエルフ感激!!」


 ヒデキ感激みたいに言われても。


「ハイビスカスも問題の対応に追われておられるご様子で。お役に立ち何よりです」

「色々と、ちゅーか根幹は限定してるけどな。共和国の恫喝はどこまで聞いたかね?」


 口調が変わった? 本題か。


「道すがら、スイレン殿より大まかには」


 プルメリア王がスイレンさんへ視線を向けると、彼は小さく顎を引いた。肯定のサインかな?


「ならば、この街を見てどう思う?」


 都市に入ってすぐ王城だったからなぁ。意図が分からん。建物はポツポツ人類系の近代様式が見えたけど。


 斜め後ろから、小さな咳払いが俺の思考を呼び止めた。

 スミレさん? ああ、そう言うことか。


「ここまでの村や町ではあまり見かけませんでした。王都とならば比較的安全という事でしょうか」


 王都に来るまで女性や子供を見なかった。村役場の中でもだ。


「先にも言った通り、虎人族にも協力を得たが、未だ拉致事件が多発していてね。現状、全て防げたが連中も組織だっていてね。諦めが悪い」


ランギクくんはかなり危うかったって事か。


「諦めが悪い? ハイビスカスの併合、いや侵略が根底と見ておいでではないのですか?」


 実行犯の素性の予測は彼の耳にも入ってる筈だ。加えて、もう一つの問題ごとがある。


「共和国だな。一応は使節派遣による交渉という体ではいるが、要求が滅茶苦茶でな。ほどほど困っておったよ」

「アレを交渉とは、寛大でおいでです」

「はっはっは、まぁ相手にする価値も無いと言うのが本音だ」


 辟易してるなぁ。


「共和国の連中、我がハイビスカスは奴らの領土でありエルフは共和国に隷属する一つの民族だと抜かしおった」


 周囲の大臣や村長達から憤りのどよめきが湧いた。

 王が左手を上げて制する。


「少数民族を強制する手口は問題視されてます。それが一国相手にまで及ぶとは。我々の常識を超えています。返答は――。」

「そりゃ追い返すさ。そしたら今度は拉致ときた。今までは返り討ちにしてるが、森の反対側の平野に陣地まで構えやがった」


 それでか。

 道理で怨霊の館を展開したら警戒された。怨霊のせいじゃなかった!!


「つってもよぉ〜、他人に変節を求めちゃいけねぇよなぁ」

「それは……。」


 悪意も善意も無い客観的な言い回しに迷った。


「自己中心的な行為の反復によって彼らが獲得した習性、でしょうか」


 いかんオブラート突き破ったわ。

 いやだって、明らかに有道(ゆうどう)とは言い難いよ?


等閑(とうかん)に付せりゃ楽なんだがねぇ。平野地に軍を展開させられちゃあな。補給戦が伸びてまでやることかって」

「森の中なら有利なエルフも、そいつは攻めあぐねますね」

「だろ?」


 会話が誘導されてる。

 ちょっと腰を折るか。


「事情はおおよそ飲み込めました。ひとまずアザレア王の親書をご確認頂きたいのですが」

「おう、それよそれ。ランギクくん、ちょっと頼むわ」


 指示された正装(女性としか思えない)の少年が漆塗りのお盆を俺に掲げた。

 漆塗り。ウメカオル国の逸品だ。建築技術に三人の勇者が関わっているなら、そういう事もあるだろう。

 書簡の箱を乗せる。

 それを国王の元へ運び恭しく頭を下げる。少年の長い髪が、鬱金(うこん)色から金糸雀色へ透明なグラデーションを描いた。

 あぁ、半裸の王にかしずく可憐な妖精よ。


「よぉし、いいぞ」


 王が箱を受け取ると、ランギクくんが再度礼をし下がる。というか距離を取った?

 厚い唇を笑みに歪め王が頷く。箱の蓋に手をかけた。そして、


 プシャーっ!!

 僅かに残っていた服が余さず弾け飛んだ!!


「って何でだよ!!」


 まさかコイツ、ハイビスカス王の影武者か!?


「よし」と蓋を開ける。開いた。王同士しか開かないはずの箱が。

 って、デフォルトで弾け飛ぶ仕様かよ!!


 全裸のまま恥ずかしげもなく中の手紙に目を通す。仁王立ちだ。

 令嬢達が顔を背ける中、目の前を両手で覆ったイチハツさんだけが指の隙間からガン見していた。


「……凄い、これがエルフ!!」(ゴクリ)


 ぶっ、と全員が吹き出した。これがエルフじゃねーよ!!


「王様!! 恥ずかしいですからせめて前くらい隠してくださいよ!!」


 オッケー、丁度間に立つランギクくんの後頭部で隠れた形になった。


「おお、すまんすまん、すまんこって」


 だから腰を振るな!! ランギクくんの頭から微妙にはみ出る!!


「ふむふむなーる。あい分かった。理解した」


 得心がいったとばかりに、パンっと己の尻を叩く。いい音なのがなんかムカつく。


「いやーなるほど、人材を請け負う条件としてこれを我に持参した者を馬車馬のようにコキ使って良いと。ふーむなるほど」


 そんな事書いてたのかよ!! ていうか俺、売り飛ばされてない? 追放とか以前に人身売買されてない?


「あの……それじゃあわたしが馬車を引くことになりますね。わたしが王様にお渡ししたのは皆さまが見ていたはずです」

「何故この期に及んでそのようなトンチを巡らすー!!」


 だからブルンブルンさせんな!!

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