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242話 エルフの王城

読んで頂き、またブックマークなどを頂きまして、大変ありがとう御座います。

新たなおっさんの登場です。

「森の中でよくもこんな街が作れるものだ」


 小声でネジバナが驚嘆する。おいおい聞こえてるって。

 彼らの聴覚は確認済みだ。


「三人の勇者が技術を伝授してくれたのだよ。今までが森の中、大木に設置の家屋だったからね。気持ちはわかるさ」


 気にした風もなくガイドしてくれるが、勇者って三人とも別の時代だったよな。




 最初の村を発ち村街を一つずつ経由した。二日で到着したハイビスカス王城は、大都市の様相で迎えていた。

 せっかくだからとお嬢様方が馬車を降りる。馬上から見渡すのに気が引けたのかも。

 アザレアでも見ない近代的な建築物は、皮肉な事にネクロシルキーの館に近い作りだ。街の中を川が流れており、所々に森林区が茂るのはエルフらしいな。


「少し安心しましたわ」


 街並みを見つつ、スミレさんが安堵する。

 初めての樹海だったから気を張っていたのか。


「文明に触れられるのは落ち着くかな?」


 道も平らな石が敷き詰められ段差が無い。これなら馬車も快適だろう。


「いえ、ちゃんと女性もいらっしゃるから」


 あぁ、そっちか。

 遭遇からここまで、男性エルフしか目にしてなかった。そういう種族かと警戒しても仕方がない。

 もし、その手の種族の場合、子孫繁栄にはある種の疑念がまとわりつく。

 他種族の女性に子を産ませるのだ。


「使節として来たんだ。先方も下手は打てないさ」

「そうですね。えぇ、サツキさんの純血が守れそうで安心しました」

「俺かよ!!」


 ……。

 ……。


 ここのエルフの女性。

 本当に女の人なんだよな?




 王城は、やたら塔が多かった。むしろ塔に囲まれている?


「あれは研究塔だよ」


 引き続きスイレンさんのガイドだ。

 学者先生がそれぞれの塔に引きこもり研究に没頭するらしい。


「貴方は……違うのですか……?」


 クランが興味深々だ。

 スイレンさんに? いや研究塔って響きにか。


「僕は学者じゃないよ。ここでの学者はあらゆる研究の徒を指すのだけれど、その辺の意欲がなくてね」

「それは……天才肌というものですね」


 ふふ、とクランが笑う。


「いやいや、買い被りかな」

「先に答えに到達してしまっては……研究の醍醐味がありませんから」

「それは」


 と一瞬言い澱んだが、彼女に向ける眼差しは優しげだった。


「そうであろね、確かに。えぇ、貴女にも身に覚えがあるようだ」

「滅相も無いわ……それこそ過大評価です」


 クラン、楽しげで何よりだ。

 無理して付き合わせたようなものだから。彼女なりに得るものがあると嬉しい。


「兄ちゃん、ヤケるかい?」

「品がなくてよ、ネジバナ」

「お嬢様も興味がおありでしょう?」

「品が無いぞネジバナ」

「相棒まで!!」


 外野がうるさい。

 今までの俺たちからしたら、こんな事でジェラシーなんて言えるかよ。


「サツキ殿!!」


 スイレンさんが声を掛けてくる。

 話の途中だったろうに。エルフは耳がいいから気を利かせたか。


「今夜こそアレを試す時だよ!!」


 だから気を利かせんなよ!! ほら、クランが「?」て顔で見てくる!!




 ラッセル達灰色オオカミとコマクサを獣舎に預け、中へ案内された。

 長大な回廊と階段の先に、一枚岩を切り抜いた三メートルに及ぶ扉が鎮座していた。

 違和感があった。

 アザレアじゃ要所要所に衛兵が居たが、無人の回廊だ。

 どこかで見られてるのだろう。扉が内側から開いた。

 慎ましく現れたのは、都市のゲートで先行したランギクくんだった。ハイビスカスの正装だが……女の子にしか見えないよ?


「最長老――プルメリア王がお待ちです」


 何があったのだろう? いつになく上気した頬だ。

 中に通されると深紅の絨毯の先に無人の玉座があり、


「よ!!」


 ランギクくんの横で上半身マッチョな男が片手を上げて挨拶してきた。

 金髪を短く切り揃え、薄い琥珀色のサングラスをしている。何故か上半身が裸だが、金のネックレスがジャラジャラして鬱陶しい。


「わ、プルメリア様!! 座ってて下さい!! こんな入口まで来られなくても!!」


 あのダウナー系男の娘がツッコミに回ってる、だと?


「別にいいって、これだけ支援を受けて今更畏まらせてもしゃーないって」

「それはそうですが!! 叔父上様は王様なんですから!!」

「ランギクぅ、お兄ちゃんて呼んでくれないと叔父さん悲しいよ!!」

「結局オジサンじゃないですか!!」

「はっはっは、言うねぇ」


 大きな唇で気さくに笑う。

 どうやら彼がエルフの最長老、プルメリア国王陛下にあらせられるようだ。


「ようこそアザレアの恩人達よ!! ささ、入って入って、ほら遠慮はいらんさかい」


 田舎のおばちゃんか。


 促されるまま謁見の間に足を踏み入れると、緊張した空気が肌を刺してきた。

 左右に並ぶ屈強なエルフ達は大臣や村街の長だろう。値踏みする視線と警戒の気配が入り混じる。人類系とトラブル続きらしいから仕方ないか。


「すまんがオレは玉座に腰掛けさせてもらうよ。悪いね。形式上、必要だからってんで。いや跪くことはないから。次からは応接室を用意するから」


 サンダルをペタペタ言わせながら玉座に向かう。

 なんかガラが悪いな。

 王族というよりチンピラだよこれ。


 っていうか……次もあるのか。

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