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240話 ランギク

多くのかたに読んで頂き、またブックマークなどを頂きまして、大変ありがとう御座います。

 その後、現場処理は駆けつけたホワイトブロッチ達に任せ、要保護対象者のケアに努めた。

 無気力にスイレンさんに抱き締められる小さな肩を見つめると、クランが(かかと)を蹴ってきやがった。いや、そうじゃないって。


「ああいう……小さくて守られる系が好き……?」

「違うよ?」


 何を勘違いしてるんだか。


「たださ、あの子――男の子なんだなって思ってさ」


 ……。

 ……。


「「「お、男の子ぉ!?」」」


「え、どういうことですの? あれほどの美少女が男の子だなんて、なんの冗談ですの!?」


 スミレさん落ち着け。


「まさか兄ちゃんの同類だったなんてな!!」


 何でだよ。


「にわかには信じがたいな。あの若さで、サツキ殿のご同輩とは」


 ストック。お前も辛辣なのな。


「嘘か誠か、逆水遁の術ではっきりできます」


 それ事案発生だから!!


「サツキくん……分かったって事は……揉んだの?」


 怖いよ!! その虫を見るような目、怖いよ!!


「も、も、揉まれたのですか!? か、感触は!? どのような感触でしたのでしょう!?」


 誰かイチハツさんを止めろ!! 貴族の令嬢からどんどん別な高次元の存在みたいになってきてるよ!?


 ていうか、コデマリ君にしろワイルドにしろ……まさか他人のちんちんをこうも揉む事になるとは。これが追放者が背負いし宿星とでもいうのか?


「騒ぐな騒ぐな。ほら、怖がられてる」


 人類系の集団に襲われたんだ。トラウマにだってなるだろう。

 スイレンさんを盾にするように彼の裾を掴みながら、じっと見つめてくる。


 ……え、俺っすか?


 潤んだ瞳でひたむきに熱い視線が送られる。

 目が合うとスイレンさんの影に隠れ、またそっと顔を出すと視線が合う。


「サツキ様」

「あ、はい」


 ジト目のスミレさん。何か察したか。


「あんな小さな男の娘をたぶらかすだなんて、本当に罪な人ですね」

「俺何かした!?」


 これ、俺のせい? 


「兄さんだけでは飽き足らず……次々と毒牙にかける……お姉ちゃん悲しい」

「その認識は俺も悲しいな!!」




 ナイスバルクの間に戻った時。扉は綺麗に修繕されていた。仕事が早い。


「陛下の御前で君に説明する予定だったけど、ご覧の通り拉致事件が併発していてね。オカトラノオさんたち虎人族の戦士にもご協力を頂戴していた所なんだ」

「アザレアじゃ人身売買は違法だからピンとこないけど、そういった市場は同盟国にも無かったはずだ。なら候補の特定もできる」

「国家規模と見るのかな?」

「共和国訛りだがクライアントが政治家と言っていた。そちらでも心当たりがあるんじゃないの?」

「それも悩みの種ではあるのだがね。彼らの聞き捨てならない言い分は聞いたかね?」

「同じことならアザレアで第一学園を占拠したテロリストのクズもほざいていたよ。既視感があるわけだ」


 なら是が非にでもプルメリア陛下に謁見しなきゃな。

 場合によっては同様の小国や少数民族とも。


「ところで」


 スイレンさんが複雑そうな顔で見る。


「随分と懐かれたようで」


 巨大な応接セットに着き、職員の淹れたお茶で一息ついていた。

 スミレさんたちは流石だな。お茶を飲む所作が美しい。

 こちらはと言うと、長ソファに埋もれる俺の右にクランが密着。左にランギクくんが体をしなだれるように押し付けていた――つまり密着だ。

 俺の顔を見上げじっと視線を合わせてくる。


「子供には好かれるんだよ」


 どう突き放そうか迷っている。

 クランが怖いから。

 誰にも聞こえない口の中の声で、


『サツキくん……後で凄いから……。』


 唇を開かずの音声会話は、お互いグリーンガーデン時代に習得していた。

 それにしても見つからないな。釈明の言葉が。

 ランギクくんを支えた時に触ったのいけなかったか? 確かに、ふにっとして可愛らしかったが。あ、いやオッパイじゃなくて、おちんちんの話だ。


 ……余計アカンやん。


「あの、ランギクくん? そろそろ離れた方が……。」


 怖い思いをしたんだ。邪険にするのが忍びない。


「(じー)」

「ランギクくん?」

「死にたい」

「そこまで!?」


 待て、待て待て、そんな風になるまで心に傷を負ったって事?

 スイレンさんを見る。

 得心を得たとばかりに頷き返してきた。


「この子は、もとから無気力な子だったんだよ」

「今何で頷いた!?」

「それがここまで意思表示をするだなんて」

「マイナスの方向だと思うよ!!」


 ぎゅ、と小さな手が俺の腕を掴む。

 負けじと反対側からクランが張り合う。


「お? 兄ちゃん両手に花だな」


 うるせーよ!!


「まぁそのような顔をせず。この子がここまで感情を出すのも珍しい。願わくばもう少しそのままでいさせてはくれなだろうか」


 ランギクくんを見る。

 俺を見つめていた瞼が閉じた。


「何でキス待ち顔になるの?」


 俺の問いにゆっくりと瞼を開け、可愛らしく小首を傾げる。


「しないの?」

「しないよ?」


 何これ?


「サツキくんサツキくん」


 めっちゃ早口で呼ばれて振り向くと、

 クランのキス待ち顔があった。

 阿呆。みんな見てる、夜まで待てんのか。




 村を発ったのは昼食を終えてからだ。エルフの案内だから進行はスムーズだ。

 あとラッセルとテキサンシスとコマクサが少し不機嫌だった。拗ねてる。この子らを置いてランギクくんを救出したのが気に食わないらしい。


 ……定期的に暴れさせないと駄目なのか。


 森の中でも馬車は使える。

 スイレンさんがこちらの馬車の御者台に収まり俺を挟んで、やはりランギクさんが居た。

 もう、気づくと居る存在だ。

 クランも御者台に入り込もうとしたが流石に四人は無理だ。渋々車内に入ってくれた。


 ……定期的に二人きりにならなきゃな。


 あと、例の感触について黙秘したらスミレさん達ご令嬢が不服そうになった。


 ……え、駄目なの? 定期的におちんちんの話をしないと駄目なの?


 どんどんギスギスしてきたな、この集団。

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