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24話 白い部屋で2

ブックマーク、評価などを頂きまして、大変ありがとう御座います。


前回後書きで3話分割と書きましたが、長くなった為、4話分割になります。

 転生の女神を何とか引き剥がす。

 ガラス張りのテーブルを挟んで、向かい側のソファに座ってもらった。

 安心できなかった。

 背の低いソファでひっきりなしに足を組み替えてくる。そのたびに大きなスリットが割れて生足が強調された。

 ……絶対わざとやってるだろ。


「ふふ、正面に対峙した己の浅はかさを呪うがいい。ちらり」


 だからスカートを捲って見せるな!!

 もういい。お前の事は転生の女神とは思わない。転生の痴女でいいわ。


「えぇと……あちらの世界からそちらの世界へ渡る徒人の話でしたね」


 急に戻ったな。

 女神も痴女嫌なのか?


「まずは、世界が断片的に連続するイメージからですが、わかりやすく言うと……。」


 テーブルの上に立体的な映像が生まれた。

 映像という認識はある。ウメカオル国の女王が例の3国間だけで共有した技術と聞いた。


「世界とは鈴なりに実をつけた果実のようなものとお考え下さい。あちらと。そちらと。その境界が曖昧になる時、わたくし達のような者が求められるのです。彼の国から隣接するそちら側に渡る人。高度な術式で呼び召される人。そして新たな命を得る人。それを見定める為、陣容されたのがわたくし達なので御座います」


 二つ目は召喚者か。ニホンと呼ばれる異世界の国から召喚されると聞いた。過去、3度成功してるという。他の二つもそれか? いや、俺が気にしなくちゃならないのは、貴女がそれを語る資格にあるってことだ。これをシステムと呼ぶなら、その構築者本人か管理者的な役割か。

 或いは役職のようなものかもしれない。

 まさか、本当に神を名乗るつもりではあるまいな。

 欺瞞にしか見えんぞ。


「一つ目は、何等かの事故でそちらへ存在が遷移するかた。端的に申しますと転移者といったところ。三つ目は、あちらで亡くなり、やはり何等かの事故でそちらへ流転するかた。端的に申しますと転生者といったところ。いずれもかの国ニホンより来たれり、その折り、本来はありえない特異な能力を身に宿します。特異な力、貴方がたの言うスキルの最たる者が所謂、召喚者になります。それと――定言的判断など屁理屈もいいところ。ただの概念体であるわたくし達に、呻吟も喜びも等しく無意味。だからって、わたくし、Mじゃないのよ? ほんとよ?」


 いや何を信じろと。俺達の接触はすでに蹉跌をきたしている。

 だが、その話しだと相当数、異世界のニホンって所から来てるんだな。俺の両親もそれに連なる者か。


「貴方がたの世界は非我を知るには未熟なのです。まだ万物に怯懦する段階。貴方のように天稟に授かれば、有為に在ろうと疎んじられるでしょう。ここでの標榜とは迂遠であること。それを是とされるのです」


 杓子定規か。如何にもお役所仕事だ。


(ことわり)を破棄してその経緯も結末にも、何の意義が残りましょうか。先ほど、貴方は、広大な世界に縛りが出来て安堵しましたね」


 何故、自分が胡散臭いって思われたか、貴女は考えたことがあるのか? 美辞麗句を並べ過ぎなんだよ。そういうヤツはいつだって利己的で、他人を道具にしか見立てられないから。


「ふふ、何も無く、世界は縷々と続き、故に粟立ち、故に慄然としていた少年が、世界の駒であることを憤るのですか」


 ……ごめん、言い過ぎた。


「はい。もっと言われたら、わたくし、泣いちゃうかも。貴方、可愛らしい顔なのにラジカルだから」


 割とメンタル弱いな、転生の女神。


「年下の男の子に優しくされてみたい」


 すまんのう。


「そこで諦めないで!! もっと自分の可能性を信じて!!」


 どこかで聞いたな、それ。


「女神なんて何かしらの蘊奥(うんおう)を究めたくらいだから、そこそこ歳なのよ。同僚が次々と寿退職して行く事をただ見送る女の気持ちが貴方には理解できて?」


 おい。ただの概念、おい。


「どうせ女神なんて、頂門の一針に逸楽するサディストとかマキャベリズムとか思ってるんでしょ。えぇ、えぇ、どうせ嫌味な女ですよ」


 面倒くさい女というのは伝わるな。結局なんだ、神々が望むのは快哉に声を上げ、狂悖に浸るってことか? 俺を駒と言ったな? だから俺にさっき言った呪縛の宿業を課せ、こんな残滓になるまで瑕瑾(かきん)を突き付ける。


「硝子細工越しに見える残滓です。わたくし達はそれすらも愛おしいと感じます。それだけ傲慢な深甚を、貴方は分かった気になられて? 指弾されて? 貴方の事を如何に通暁しようとも、声すらかけられない事を理由にするのは、それほど傲岸(ごうがん)な行為でしょうか」


 そう言われると、今、俺の相手をしてくれてるのも篤志家たる由縁か。


「それでも猜疑の念が払えないなら、この言葉を贈りましょう――鰯の頭も信心から」


 ほんと大丈夫か、この女神?


「わたくしの事、女神って認めてくれるのね……嬉しいです」


 いや、いいのか、それで?


「わたくしにだって裏付けの無い矜持があります」


 何だか憐れになってきたな。

 それで、俺に掛けられた呪縛っていうのは、やはり答えられないんだよな。


「先ほども申しました通り、管轄の外ですので。ただ一言。解決を見るには、幼少の頃より懸想(けそう)された少女のパンツを嗅ぐべし、としか今のわたくしには申せません」


 お前もか。


「いずれ、あなた自身が到達しなくてはなりませんし、畢竟(ひっきょう)パンツからは逃れられません。不撓の精神で乗り越えなくてはならない壁。いや布? わたくしに出来る事といえば、そうですね。パンツを嗅ぐ練習台になってあげる事ぐらいでしょうか」


 俺に出来る事は世界を救うぐらいだみたいに言うなよ。

 いや、入浴後の様子だからこちらのダメージは少なそうだが。


「ものは試しです。おいでなさい」


 何故スカートを捲って見せる?


「遠慮はいりません。今が奮迅の時です。さぁ、ずずずいっと奥へ」


 ……どうするって?


「潜るのです」


 え? 何で? 玲瓏な声で何言ってるの?


「え? パンツを嗅ぐ練習では?」


 何それ怖い。

 普通は脱いで嗅がせるんじゃ――いや、その時点で普通かどうか怪しいが、直で嗅がせにくるとか、それもうパンツ嗅ぐとかの域を越えてるよね?


「……そうですか。まだその段階ではないのでございましょうね。どうやら、わたくしが早計だったようです」


 妙な言い回しだが、あまり自分を責めるな。


「端緒は自身の中にあります。それだけはお忘れなく。ところで、試しに一度だけヤッてみませんか? 大丈夫です、副作用も無く安全ですし、いつでもやめられます」


 大丈夫な要素が何も無いんだが、お前の股間はどうなってるんだ。


「そこは体験してからのお楽しみという事で一つ」


 いや、風采鮮やかにして股間どうなってんだも無いが。

 どうにも、袋綴じみたいになってきたな……。


「それはいいですね。こう、布の間の隙間から中を覗いて――天才か!?」


 言うんじゃ無かった!!

 何でおかしな方向に逼迫するの? 廓清が必要なのはあんたの方だよね。


「流石は鳳雛(ほうすう)とまで噂されただけはありますね。ただスカートの中に頭部を押し込めるだけでなく、(てん)としてその行為に一層の潤色を加えようとは」


 どこの噂かは知らんし、平然であると断じることはできない。いいや、今お前は、そんな子供に何をさせようとした? 強要した? 俺が許す言ってみろ。


「え……。」


 おい、言ってみろよ。


「……す、スカートを捲って、股間に顔を押し付けて匂いを嗅ぐよう、さ、誘いました」


 お互い、泣きたい気分になった。


「ごべんなざい……わたくしの股間に直接顔を押し込めようと誘導して、ごべんなざい……。」


 ちょ、ガチ泣きはやめろって。


「迎合しますから……りんのうれん、年下の男の子に阿附迎合するから……ゆるじて……。」


 やべぇ事言いながら泣くな!!

 ね? もう、やらないよね? 大丈夫、怒ってないから。


「……。」


 やらないよね!?


「いつも、こんな寂寥とした冬景色の様な所で……。」


 おう。


「淋しみを埋めてみたかった」


 俺も余裕が無かったな。己の夭折のせいで。


「……もっと闊達(かったつ)であって欲しい」


 そこは、まぁ俺も研鑽するけどさ。

 正直今は死のショックが優っている。


「あ……。」


 ん?


「ぐす、えぇと、実は話しているうちに気づいたのですが――訂正します。貴方はまだ生きています。とはいえ、薄氷のように危ういのは変わりませんが」


 んん?

お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。

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