表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

237/390

237話 王女のお姿

閲覧、ブックマークなどを頂きまして、大変ありがとう御座います。

 木組の階段は材質の割に厚みがあった。一段一段の高さが大きい。それを4フロア分ほど登る。

 急ぎ足だが脱落者は居なかった。お嬢様たちもよく鍛えてるよ。


「401号 ナイスバルクの間。ここだ」


 嫌な部屋名だ。


「解錠はこれで行う」


 ホワイトブロッチがスクロールを広げドアにかざすと、扉が爆煙と共に室内へ吹き飛んだ。


「ダイナミックな入室だね……。」

「スイレン様!! 今度は何を仕込んだのですか!!


 想定外(イレギュラー)かよ!!


「またこんな事をして!! 修繕費がどこから出ると思ってるんです!! 経理部にはご自分で交渉してくださいよ!!」


 呆然とする俺たちを廊下に残し、憤りながら入って行く。


「よくあるのか?」


 オカトラノオに聞くと、


「先ほども申し上げた通り、戯れを好むエルフではありますな」


 と肩をすくめられてしまった。

 興味を持ったのはガザニアだった。


「クラン様は気づかれたか?」

「魔力的なものは……感じなかったわ……。」

「ならば独自の精霊術であろうな」


 背後でクランと好き勝手に解析する。

 同じ馬車で過ごすにつれ、距離が近くなっていた。


「すまないお客人、そのまま入ってきてくれ!! 身の安全は保証する!!」


 身の安全って、村役場の一室に入るだけだよな?


「失礼するよ」


 ノックするドアが吹き飛んでいた為、右手でジェスチャーだけする。

 俺を先頭に入室したが、待ち構えていた眩い美貌に令嬢達と二名の騎士が硬直した。

 窓から差し込む日差しを珠のように弾くブロンドは、腰まで彩り、クッキリとした目鼻立ちをさらに際立たせていた。そして和かに細める瞳の透明度よ。湖に落ちた花弁のように揺らぐ視線よ。

 とても――男とは思えないな。


「……お前らは大丈夫なんだな?」


 背後の例外三名に小声で聴くと、


「私は……サツキくんしか見えないから……。」


 そういうのは日が落ちてから頼む。


「オレの視線は常にサツキの姉ご兄貴に釘付けなんだぜ」


 うん、ありがとう?


「幼さの中に潜む愛くるしさと残虐性では、サツキ様が一歩先を行っておられるゆえ」


 殺人鬼みたいな風貌の人に言われても。ていうか、そんな風に俺を見てたのか? え? 幼さ? え?


「うん、見目麗しく可憐な男の子だね、見惚(みと)れるのも理解できるよ超()れる」


 輝かんばかりの美貌のエルフが何か言ってきた。


「あ、あんたの方こそ綺麗なんだからね馬鹿!!」


 俺、何口走ってんだろ?


「大丈夫……サツキくんだって負けてない……ガンバ」


 そういう気の利かせ方は求めていない。


「コホン、お客人。こちらが紹介したいと申したスイレン殿だ。スイレン様、アザレア王国からの使節の方々に御座います。あとは双方勝手にどうぞ」


 あ、戦士長、面倒くさくなったな。


「うむ」「ああ」


 俺と美貌のエルフが互いに頷く。

 仕草が柔らかい。華奢な線の細さと相まって妙な色気を感じた。


「スイレンと言う。ハイビスカスの中央でちっとした事情通をしていてね。差し支えなければ、アザレア王からの書簡を拝見してもいいかな?」


 机のホコリを軽く手で払い促してきた。そこに置けってことか。


「説明はしているが設定された者じゃないと吹き飛ぶよ? 言うまでも無いだろうけど」


 森の外で戦士長が外装を確認済みだ。

 問題はこちらの連中だった。

 その下りを聞いてなかったのか、


「「「ふ、吹き飛ぶ!?」」」


 スミレさん達が息を呑んだ。


「国家間の親書という重要度が高い機密性は理解できますが、そのような恐ろしいトラップをお持ちになっておられただなんて!!」


 ん? こちら側には説明してなかったか。


「ああ、無理に開けると木っ端微塵だ」

「「「木っ端微塵!?」」」


 うん、服が。


「あの、その木っ端微塵とは、どういった程度なのでしょう?」


 イチハツさんが頬を染めて聞いてくるけど、何が琴線に触れた?


「そりゃ完膚なきまでに、かな?」

「「「完膚なきまでに!?」」」


 すげー反応いいのな。


「にわかには信じられませんわ。その木箱にそれほどの威力が秘められてるだなんて」


 スミレさんも魔道には通じている。どんな無茶なアイテムかは想像に難く無い。


「王女で試したから効果は確認済みだぞ?」

「「「よりにもよってツバキ王女で!!」」」


 クランとネジバナ達も混ざった。


「何やってんだ兄ちゃん!! 何だって王女殿下でそんな事を!! 馬鹿か? 本当の馬鹿なのか!?」

「血迷うにも……程があるよサツキくん……。」

「サツキ様!! それで道中追手が掛かったというの!? ワタクシ、公爵家の名まで出してしまいましたわ!?」


 ひどい言われようだな。


「いやだって、国王がいっちょやってみろって勧めるから」

「「「国王陛下が!!」」」


「そんな軽いノリでホイホイ爆殺されてましたの!?」

「え? 何それ怖い」


 ググッとスミレさんが詰め寄る。


「怖いのはサツキ様です!! ツバキ様を木っ端微塵にしてしまうだなんて!!」

「いや本人もノリに乗ってたし!! 吹き飛んだあと、既成事実とか言って押し倒してきやがったし!!」

「「「既成事実!!」」」


 うるさいよ君達。


「爆散させられた既成事実ですか!?」

「サツキくん……押し倒された所の話し……私聞いてない」

「うちの王女様は何者なんだよ!!」


 いやもう、勝手に喋るなや君達は。


「落ち着けって、弾けるって言ったって衣服だよ。ぶしゃーって服が弾け飛ぶの」

「「「王女様を全裸に剥いたんですか!?」」」


 しまった。


「兄ちゃん、そりゃあ相手も既成事実を作ろうって話になるぜ!!」

「何てこと……サツキくんが……ついに一線を越えて……。」

「サツキ様!! どうだったのですか!? ツバキ王女のお姿、どうだったのですか!?」

「スミレ様、落ち着いてください。それでサツキ様、ツバキ王女の極部はご覧になったのですか!?」


 どう躱す?


「見たと言えば見たような、見ていないと言えば見てないような」

「「「見たんですね!?」」」


 ぬかったわ。


「ど、ど、どんな形状だったのですか!?」


 イチハツさん、ほんと形状とかディテール知りたがるよな。


「たぶん、普通じゃないかな?」

「「「普通!?」」」


 いやそこまでは見てないし。当たり障りにない回答のつもりだったが。


「普通とはどういう事ですかサツキ様!! 公爵家として聞き捨てなりません!!」

「王女殿下の極部がロイヤルじゃないなんて!! どうして信じられましょうか!! 恐れながら侯爵家だって黙っていられませんわ!!」

「兄ちゃん、そりゃ打首ものだぜ」


 酷い言われようだな。


「そもそも比較対照がねーんだよ!!」


 ちゃんと見たことがあるのは……せいぜい苺さんとクランくらいかな。


「……サツキくん……お姉ちゃんのと比べて……どうだった?」


「「「その手があったわ!!」」」


「どういう事だよ!?」

「つまりワタクシ達全員のを比べればある程度の指標が――。」

「出来るか!!」


 スイレンさんがずっと優しい眼差しなのがつらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ