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236話 ホワイトブロッチ

エルフの国、おっさんばかり登場します。

 半日かかる行程もエルフが居るだけであら不思議。1時間足らずで済んだよ。

 ハイビスカス外周の最初の村だ。

 流石は森の人のガイド、道を隠す笹薮草薮なんのその。生真面目な性質は俗化への抑止にも有用だ。こちらの地固めには是が非でも欲しいな。


「里程が合わねぇが、分かるか兄ちゃん?」


 ちっ、ネジバナも目ざといか。

 ノウハウに着目するのは至当な事だが、俺が先に唾を付けたんだ。森林地帯を誘導無しで踏破が可能なら、交易に大きなアドバンテージとなる。貴族が商業統合組合(パイナス)を出し抜くことだって、とか考えてるんだろうな。


「往還も無いのにどう理解しろって?」


 公表されている経路じゃないのにさ。

 精霊術的な何って納得するしかないよ?




 ガラ美は使者の役を果たしてくれた。いいぞ、見込んだ通りだ。今は冒険者としてクエストを受注中で――って何を勝手してくれてんだ!?

 問題は発注元だ。子細はハイビスカスのプルメリア王から伺う手はずだが……王様がクライアントかぁ。


「出会いは最悪でしたぜ? 森の中で、あやつの放尿に居合わせてしまい――。」


「そうよ、ワタクシなんて彼女の失禁命乞い自慢を聞かされて――。」


 ……。

 ……。


 行く先々で何やってんだアイツ?


「先入観を廃して中庸を得たとしても、その調子でエルフ相手に粗相をしたとしか思えないが……してないよね? ね、大丈夫だよね?」


 今更、人選に不安を覚えるとは。


「それは……。」


 オカトラノオが言い淀むとは。え? ほんとマジ。え?


「ご案じ召されるな。オカトラノオ殿の提案で子供達の目には触れないよう配慮している」


 エルフの戦士長がフォローのようなものをするが、不安だけが募った。


「サツキくん、ガラ美には……私からも言っておいてあげるから……。」


 クランが優しかった。

 彼女の顔を不思議そうに見ていたオカトラノオだが、


「奥方様とお聞きしました。あれほど怯えていたのに、どういった心境の変化ですか?」


「「「馴れ初めの予感!!」」」


 全員が食いついた。


「クラン様、サツキ様に怯えていらっしゃたのですか?」


 スミレさんが代表して聞く。

 最近パターンが固まったな。大筋をスミレさんが仕切り、立ち入ったことはイチハツさんになる。


「いいや、怯えておられたのはサツキの姉ご兄貴だ」


 余計なこと言うなよ。


「奥方様に、でいいのか? むむ、まだ成婚されておられぬのか。クランの姉御にお会いしたのはカサブランカの迷宮のボス部屋だった」


 滔々と語り出した。

 余計な事を。


 ぎゅっとクランが俺の袖を掴む。

 顔をフルフルしている。

 止めて欲しいのか?


「ボス部屋で待ち構えサツキの姉ご兄貴と対峙したクランの姉御は、おもむろに(ゆっくりの意)履いていたパンツを脱ぎ、サツキの姉ご兄貴の顔に押し付けようと迫ってきた。それがクランの姉御との最初で最後の記憶だった」


 あ、クランが涙目でフルフルしてる。


「顔に!? 押し付けて!?」

「私達でさえ脱いだのを差し上げただけというのに」


 スミレさんとアサガオさんも動揺が隠せない。


「クラン様のお気持ち、分かる気がします」


 うん、イチハツさんは理解があるなぁ。

 今だから解呪の儀式だって分かるけど。呪詛でクランを嫌悪していなかったら、そのままボス部屋を「出れない部屋」にしてたかも。


 ……なるほど。その手があったか!!


「ってお嬢様がた何やってたんですかい!?」


 思わぬ所に被弾した。

 公爵家騎士団には秘匿したままだったか。令嬢たちの脱ぎたてほやほやが俺に託された事を。お嬢様がたのパンツの運命は、今、俺の手に握られているのだ。


「もっとも、あの時の俺たちはサツキの姉ご兄貴を裏切り両断卿の説教を授かるに至ったが。そこはサツキの姉ご兄貴のご配慮でペナルティを免除されたと聞きます。あざーした」

「いいってことよ」


 気さくに手を振る。


「待て、両断卿だと!? 王都で目撃された話はあったが」


 流石にストックは食いつくか。


「たかが脱ぎ立てのパンツ、合目的的な計略の投資と捉えなさい――黒騎士ね? えぇ、学園のカリキュラムで登場されていましたわ」


 ネジバナの詰問から逃げつつ、スミレさんが自慢げに答えた。

 生徒や講師、門番には、政治的配慮から緘口令が敷かれていたから。アザレアより離れた地なら、話題にするチャンスと見たか。


「王立第一の授業で……ですか?」


 ストックが言葉に詰まる。

 うん、気持ちは分かる。


「お嬢様がたのパンツ、それも脱ぎ立てを……。」


 ネジバナも言葉に詰まる。

 うん、そっちも分かる。


「テイムの実習でサツキ様のサモンに応じていたわね。凄いわサツキ様。さすサツ」


「「「魔王の黒騎士をテイムしてるのかっ!?」」」


 ホワイトブロッチも混ざって驚愕された。


「両断卿といえば、カサブランカ第11階層のボス部屋でクランの姉御と恋バナをしておいでだったな」


「「「恋バナっ!?」」」


 まるで分からんと、騎士達と戦士長が頭を抱えだした。


 その横で、


「あのね……ボス部屋の時はね、サツキくんのね……呪いがね……だからパンツをね……。」


 未だにしどろもどろでパンツ弁明する恋人が可愛いい。俺の彼女超可愛い。

 でも忍びないのでオカトラノオには放念を促しとこう。




 村の中央に、一際大きな建物が見えた。


「ここまででいい。持ち場に戻ってくれ」


 ホワイトブロッチの一声で、遠巻きに追従したエルフの集団が音もなく消えた。村の中に秘密の通路でもあるのかな?


「お前達も付き添ってやれ。俺も追いつく」


 獣人達がオカトラノオに従い散り散りになる。虎人族をよくまとめている。


「こちらだ」

「誰に会うって?」


 商業区であろう露店の群れを通り、中央の建物に向かった。


「中央の顔役が訪問していたのは暁光だろう? 陛下への繋ぎがスムーズになる」


 思った以上に謁見が早まるのか?


「話が上手すぎるなぁ?」


 オカノトラを見ると、彼はどこか得意げに、


「オレ達がここの子らを救出した時もそうでした。イベントは嗅ぎつける。何かの占術かスキル的なものか。サツキの姉ご兄貴なら会えば分かりもしやしょうや」

「それは……ふふ、楽しみ」


 思わず笑みが溢れた。

 何だよ、そんなに見るなよ。


「……失礼しました。その笑い方、やはりサツキの姉ご兄貴だ。久方ぶりなので、つい魅入ってしまった」


 あっと、いけない。最初に追放されてから、意識してやらないようにしてたんだ。

 この笑いがあどけない少女のようだって、冒険者ギルドで絡まれてたから。




 建物の外見は、巨大なドーム型を形成していた。

 外装は全て木造だ。表面に腐食や水捌けの処置がしてるだろうけど、どうやってこの密閉構造を実現したのか。


「中は細かく部屋が分かれている。合同庁舎と思って頂きたい」

「村には必ずこれが?」


 正面門をくぐった所で、コマクサとラッセルたちに馬車の護衛を任せた。


 ……めっちゃ尻尾振りやがって、コイツら。


 ここに来るまで行き交う人達にびびられたが、もう中身の野生は薄れてんな。

 街に順応し過ぎだよ。マンリョウさんの所にいるラッセルの群れだって。護衛としては相当使えてるみたいだけど。


 一階フロアは、吹き抜けの広い間取りだ。ギルド支部舎に作りが似ている。違いは、職員以外の外来が居ない。俺たちだけだ。


「あれは言い方が大仰なだけです。村役場程度であろう」


 オカトラノオがぶっきらぼうに言うのに、ホワイトブロッチはバレたかと肩をすくめた。


「彼が滞在してる事は、サツキ殿には都合がいいはずだ。繋いでもらうから少々待ってくれ、いや、そこのソファで。何卒、楽な姿勢で、何卒」


 念を押すと、ホワイトブロッチは受付カウンターへと向かった。

 指示を受けた職員の青年が姿を消し、手持ち無沙汰になったのかこちらに片手を上げてきた。


「んで、何者なのよ?」


 愛想よく手を振りかえしつつ、オカトラノオに聞く。これから会う奴だ。


「王都に籍を置く官僚ってぇ話しです。肉体はあまり鍛えられてません」


 筋肉の情報は特にいらないかな?


「先の通りの人物なので、語るに足るのは助かりますが」


 カウンターに受付の青年が戻った。二、三話しスクロールのような物を受け取ると、ホワイトブロッチが足早に吹き抜けの階段へ向かった。


「こちらだ!! 有効期限を付けてきた。5分で再発行が必要となる!!」


 俺たちが「?」となると、オカトラノオが「またか」と肩を竦めた。


「行きましょう。客人を揶揄う気はないのでしょうが、悪い癖のようなものです」


 悪戯好きの妖精かよ。

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