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231話 恐怖劇場 怨霊の住む館・完結編(上)

「サツキの裏切り者……バカ、嫌い……。」


 ショートカットの白い少女が瞳に涙を溜め非難する。ワタクシにではない。

 ワタクシの足に纏わりつく可憐な少女に対してだ。何でこうなった。


「すまん!! 魔が差した!!」


 謝る気無しだわ? そこは言い訳したって否定しなさいな?


「……嘘つき……お姉ちゃんの足だけに生涯服従したいって言ってたくせに……。」

「真性のフェチでしたわ!!」


 それと、いい加減ワタクシの足から離れて欲しい。

 誘惑したのはこちらですけれど。こちらですけれど。




 サザンカさん達が去った後、数日経たずに次の来訪者が来た。

 男性3名、女性6名。女率高いわね。

 もう宿屋よねこれ? むしろ定番になってるわよね?

 で、例によってひとまず観察。

 そして例によって一名だけ美少女におちんちんが付いてたわ。もう慣れたもんよ。

 この集団でリーダー的な存在の子ね。魔法使い風な子といい感じみたい。部屋も二人だけ別室ね。

 ワタクシの見ている前でハードコアとかちょっと迷惑。

 でも霊障で追い出すのも気が引けるわ? 今までの経験から絶対に返り討ちに会うもの。

 ならば、ここは魅了(チャーム)を使って場をかき乱してみよう。


 さぁさ、おのおのがたお立ち会い。

 恐怖、怨霊が魅了する館。開幕に御座います。ワタクシ今度こそ勝ちに行くわ。




 リーダーの子を誘惑すべく部屋に入ると、……もうおっぱじめてる。うわぁ……心が折れそうよ?

 リーダーが魔法使いの子の、白いタイツに包まれた脚になんか色々してて二人とも幸せそう。

 本当に色々出来るのね。知らなかったわ。凄いわ。激しいわ。

 この幸せそうなカップルを絶望の坩堝(るつぼ)に落として少しでも大人しくなって頂くのよ?

 ワタクシ、もう多くは望まないわ?


「うーらーめしやー」


 初手は定番の叫霊(バンシー)からね。


「……そんなに……何が恨めしいの?」


 普通に対話を試みてくるけど、もう慣れたものよ? ワタクシ、この程度では怯まないわ。


「恨めしいわ?」


 疑問形で返してしまったわ。


「そう……そんなに恨めし気味なのね」


 納得するのが早過ぎよ。物分かりがいいにも程があるわ?


「恨めしいと言うか、羨ましいわ。お二人とも、スリムな脚で。ワタクシなんて、霊体のくせに無駄に肉付きが良くて……。」


 スカートを膝あたりまでたくし上げて見せる。


「ぐぅっ」


 とリーダーの子が小さく呻き、心臓の辺りを押さえた。

 何? 何かの持病なの?


「な、なんて――魅惑的なムチムチぶりなんだ!?」


 やかましい、ムチムチで悪かったわね。

 ていうかフラフラとこちらに近づいて……ひゃ!? どうして気安くワタクシの脚を全身で包み込んでいるの!?

 恋人をほったらかしにしてまで!!

 ほ、ほら、魔法使いの子の肩が(おのの)いてる。


「サツキの裏切り者……バカ、嫌い……。」


 こんな経緯で冒頭に戻るわ?




「こいつは魅了(チャーム)か。だが、それにしたって」


 美少女の見た目で言葉遣いは男性っぽいのね。

 キリリとなって状態を解析するけど、ワタクシの脚からは離れないわ、この人。


「魅了って、一晩かけてナニをアレしてああなって任務完了みたいな事と聞いたけれど? どうして速攻で、それも膝までしか見せてないのにこんな事態になってしまうの?」


 お互い時間をかけて理解し合うから燃え上がるのではなくて?

 ていうか離れて?


「サツキくんは……年上の脚が好き……。」

「困ったわ?」


 言ってもいいのかしら?

 そもそもワタクシ、まだ魅了は発動していないのだけれど。


「よくそれで女性とパーティが組めるわね」


 そんなに女性の脚が好きなら自分の脚でも愛でていればいいのに。


「普通ならレジストするはずだが」

「……耐性……上回ってる?」

「自覚はあるな。これはキツイ」

「ふぅん……お姉ちゃんより……そっちへ行くんだ?」

「だから呪いの一種だっつってんだろー!!」


 誰かが言っていたわ。冒険者たる者、常態異常には耐性や防御措置を予め仕込んでおく。

 その手段も障壁術やレジスト、何らかの技だったり、祈祷、憑依、それから薬品。

 会話から察するに、ワタクシ、勝ったわ。チャームを使わずして魅了したわ。


 ……身の危険を感じるわ?


「……。」


 すっ、と魔法使いさんがローブを膝まで上げる。先ほどまで堪能していた少女の足だ。乙女の白いタイツに包まれた穢れなき……いやだからさっきまで穢してたわ?


 つまり、


 刺激の新鮮さではこちらが一枚上手よ!!

 故に、ワタクシの勝ちは揺るがないわ!!


 あ、リーダーの子が魔法使いの少女の脚に行った。

 揺らいだわ? 舌の根も乾かぬうちに揺らいだわ? ムチムチよりもフラットボディが勝るというの?


「ふふん……。」


 魔法使いさんが勝ち誇ったように鼻で笑った。

 ワタクシのチャームを上書きするとは。かくなる上は――。


 さらに膝上まで上げる。

 ソックスとの境界線まで冒険してみた。


 フラフラとリーダーさん、えぇとサツキさん? がワタクシの脚に縋り付く。


「ふふん」


 ワタクシもどうしてドヤったのかしら?


「……これは……埒が開かない」

「千日手かしら?」

「こういう時は……元を立つしかない」

「もと?」


 にこりと、白い魔法使いさんが微笑んだ。まるで山百合のようだ。豪奢な花弁ではない。茎や枝葉が彼女の印象に一致するのよ。


 一息呼吸を置くと、金色の飾りが無数に「浮いた」錫杖を振り上げた。


「地獄に落ちろ悪霊がーっ!!」

「物理で来たわこの子!?」

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