218話 ニューパーティ
色々と語彙が貧弱になってます。ご注意を。
パーティ名に拘ると将来の自分が夜、お布団の上でゴロゴロ転がる羽目になるんだ。だから適当が一番だ。
大体、若い連中に限ってやれ光のなんちゃらとか栄光のなんちゃらとか付けたがる。漢字四文字で凄い当て字のやつとか。キラキラパーティネームだ。
……。
……。
やばいキラキラパーティネーム響きやばい。めっちゃ陽キャ感ある。星形のサングラス付けてそう。
「よし。じゃあリーダーの俺が決めるぞ。これだ」
手にしたフリップを捲る。
『ノーパンシスターズ』
「何ですのそのパーティ名は!!」
「そのまま状況を語ってるだけですね……。」
「私は別にそれでも」
「「アザミさんは黙っててください!!」」
むう、不評か。
騎士の三人だけ意味がわからず「?」てなってる。
「サツキくん……そのシスターズにはお姉ちゃんも含まれる……?」
「クラン様!! ご自分だけ助かろうとしないでくださいませ!!」
「不評だな。これにはメリットもあるというのに」
「メリット!! えぇあるのなら聞かせてくださいませサツキ様!!」
「こんなアホな子なパーティ名を名乗る集団に、まともな神経のヤツなら関わって来ないだろ?」
「アホな子言いましたわこの人!!」
「あの、よろしいでしょうか?」
「はいイチハツさん」
「その理論で言うのなら、まともじゃない人が寄ってきそうなのですがそれは……?」
言われてみれば。
「アホな子の匂いに誘われて……危険な奴らが集まってくる……。」
クラン?
「い、いや大丈夫だって、声かけられてもせいぜい『女子供の来るところじゃねぇ帰ってママのオッパイでもしゃぶってな』ぐらいだから」
「品がありませんのね」
「サツキくんは……お姉ちゃんのおっぱいを吸ってればいいと思う……。」
「うるさいよ?」
「もっとも……お姉ちゃんが眠ってる時に……お股の間を吸ってるサツキくんに何を言っても無駄かもだけど……。」
待て!! それをここで言うか!?
「なっ!? 何て卑劣!?」
スミレさんもドン引きだよ。
「流石はSSランク師匠。強制真・水遁の術とは」
アザミさん? それだと俺が何か吸い出してるみたいになってるんだが?
「サツキ殿!! 男子にあるまじき破廉恥な行為ですぞ!!」
流石に憤るか。
「旦那、むしろ男の子はこうじゃなくっちゃ。なぁ相棒?」
「見た目は娘なのだがな」
「おいおい信じらんねぇぜ。あのスカートの中にちんこがあるんだってよ」
「世も末だな」
お前ら……意地悪。
「だが、ネジバナの言うと通り、本当に付いてるのか怪しいものだ」
「おうっ、ストック!! ナイス着眼点だぜ!! 旅に同行するにしてもちゃんと確認しておかなきゃなぁ?」
怪しい方向にきた。
「逆ならまだしも、男が男を自称して確認の要否が発生するとは思えんが? 万が一、俺に付いてなかったらどうする? お前らは小娘の股間を公然にした変質者として家名に汚点を残す事になるぞ?」
「「「確認は必要です!!」」」
クランとスミレさんとアサガオさんがぐいぐいきた。
イチハツさんは、顔を背けてるけどチラリチラリ俺の下半身を見てくる。真面目な子だと思ったが、割とムッツリか。
「サツキくんのおちんちん……確かにグリーンガーデン時代でも露わになった所を見た事がない……。」
「しょっちゅう露わにしてたまるか!!」
真正の変質者かよ。
ていうか、その可愛らしい口でおちんちんとか言うなよ。やめろよ辺境伯令嬢。
「実在するかどうか、観測するまであらゆる未来が存在するわけですね。スカートの中を改める事で、サツキ様は初めて男性になるか女性になるなか」
「スミレさん、僕、男の子だからね?」
「つまりシュレディンガーの肉茎」
その麗しい口で肉茎とか言うなよ公爵令嬢。
シュレディンガーってのは、かつて三代目勇者が広めた単語だか人名だかだ。歴史書にも記されている。確か猫は可愛いって意味だったか。
「あの……理解が追いつかないのですが、その、スミレ様の仰る肉茎とはクラン様が仰せのおちんちんと同義ということで、よろしいのでしょうか?」
イチハツさん何で確認しようと思った!? あとよろしく無いからね!?
「あ、いえ、大意は無いのですが、アサガオさんの蔦の事もありますし。触っても大丈夫なやつかなって……。」
何で触ろうと思った?
「大丈夫か大丈夫じゃ無いかで言ったら……大丈夫じゃない」
「クラン様!? 大丈夫じゃないんですの!?」
「その存在は……兄さんなら知っていると思うけれど……その事が切っ掛けでサツキくんは追放の憂き目にあったから……。」
あながち間違いじゃないのが……。
あと、何故か少女たちの間に黄色い歓声が。
「サツキ様とワイルド様。お、お二人は、どういった関係なのでしょうか?」
恐る恐るだが、イチハツさん食い下がるよな。
「辺境伯家の闇とでも言っておこうか」
ベリーの叔父さん、ごめん。
「大丈夫よ、サツキくん……。サツキくんとお姉ちゃんの事は闇でも何でもないからむしろこうオープンにしていくべき」
「俺のスカートの中もか?」
「それはお姉ちゃんだけの物」
めっちゃ早口で訂正された。
「独り占めだなんてあんまりですわ、クラン様」
スミレさんが割って入ると、後ろの騎士二名が「そーだ!! そーだ!!」と便乗する。
何でお前ら俺のちんちん見たがるの?
「分かった……見るだけなら……許す」
「許さないでよ!!」
「ハッハッハッ、これでサツキ殿も晴れてノーパンシスターズの仲間入りだな!!」
お爺ちゃんうるさいよ。
俺の女装ノーパンとか誰得だよ? そんなノーパンで本当に満足なのかよ?
「分かった、ノーパンシスターズは無しでいこう。なら次の案だ」
「この空気で代案をお求めになるのは酷かと存じますが」
スミレさんが自分のフリップを捲る。
そこには『雷光の剣』が二重線で潰されていた。あー……。
そしてその下に汚い字で、
『サツキ様 餌食の会』
「って、何で被害者の会設立しちゃってんだよ!? むしろ巻き込まれてるの僕だよ!?」
「でしたら」
『サツキ様 陰茎の会』
「そこから離れろよ!! 貴族のお嬢様がそんな下品な事を口走っちゃ駄目!!」
「普段抑圧されてますの!! せめて冒険に出た時くらい公爵令嬢だっておちんちんの話で盛り上がりたいですわ!!」
「おい騎士ども!! お前らの主人どうにかしろ!!」
「サツキ殿の言わんとしてることも理解できますが……お嬢様がたのお気持ちを察すれば、否定はしずらいと申しますか……。」
騎士司令!! 何わけの分からん理解示してんだよ!!
「恐らくは侍女やメイド達の話す声が聞こえておいでだったのでしょう。それでご自身もいつか同じ年の友人らと語り明かしたいと」
「貴族のお屋敷っていつもおちんちんの話題で持ちきりなの!?」
辺境伯邸では見ない光景だ。
「いや、そんなわけねーよ。なぁ相棒?」
「滅多に聞く言葉ではないが」
ネジバナとストックは否定派か。良かった。
「って、じゃあ何でお前らまで俺のを見たがるんだよ!!」
「そりゃ美少女の見た目にちんこが付いてりゃ、見てみたいだろ?」
脳裏をコデマリくんが過った。うんわかる!! じゃねーよ!!
「俺には理解不能だ。か、会話だけなら娘っ子達だけでやってくれ。あ、俺は混ざらないから。じゃあ次の案、張り切って行ってみよう」
アザミさんがずいっと前に出る。
「ならばここは私が。ニンニン」
自分のフリップを掲げる。小さいから頭上に上げるくらいが丁度いい。小動物みたいで可愛いな。
『3リットル-限界の先へ-』
「なんで副題付けてんだよ!! ていうか限界越えさせちゃ駄目だろ!?」
斜め上が来たなこれ。
「3リットルは多い方なのでしょうか?」
アサガオさんが普通に聞いてきた。何故俺に聞く?
「出すか入れるかで話は変わるな」
よく分からないのに通ぶってみた。
「はぁ……サツキ様もなかなかの上級者なのですね」
イチハツさんの白目がちな三角目が、畏怖の念に染まっていた。やべ通ぶるんじゃなかった。
「私はこれぐらいは余裕」
アザミさんがガチの上級者でツライ。
「そっか。じゃあひとまず保留って事で。えぇと次は……。」
「ワタクシですわね」
イチハツさんか。彼女は良識的で少し安心する。ムッツリスケベだけど。
あ、貴族のお嬢様がムッツリってのも新鮮だな。最近会ったヤツはどいつもこいつもオープンでいけねぇ。侘び寂びってものがあるだろ。
「ワタクシのプレゼンはこちらになりますわ」
フリップを捲る。
『こだわりりの冒険者育成プラン』
『SSランク流ガバナンスの導入』
『将来性と実績にコミットした実行力』
「その名も――。」
『フレッシュグリーン』
「なんか普通だな」
「なんだか普通ですわね」
「普通の何がいけませんの!?」




