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21話 マリーゴールド

ここまで読んで頂きまして、大変ありがとう御座います。

本話で、マリー編の最終話となります。

 はあ……はあ……。

 喉が

 焼けるような、高揚感だ。

 子供の頃、寒熱にて刺衝に苛まれた夜、はあ……辛口なニホン酒を飲んだような。

 あれは、

 (けだ)し美味かった。



 80メートルにおよぶ巨大な髑髏(ドクロ)を爆進させる。

 夜の(とばり)を巨体で切り裂く。その返礼(しかえし)とばかりに、風が轟音となって耳を叩いた。

 むしろ祝福だ。

 森を踏みつけ、川を堰き止め、ひたむきに進む。

 ぬかるみに足を捕られた。そうれジャンプだ。その後、新たな湖ができたみたいだけど、どうでもいい。

 伝説の時代、湖なんて、お爺ちゃんが剣を投げ入れただけで湧いたもんだ。

 前方。小高い山。ええい邪魔だ。山頂を蹴り飛ばし、放物線を夜空に描いた。はぁ、は……。

 我が配下。餓者髑髏(ガシャドクロ)・ボタン。鬼神・シャクヤクと並ぶ私の切り札(三枚のお札)


 はあ……はは、はあ……。


 殲滅戦に特化してるから滅多に暴れさせてあげれないけど、一度解き放てば誰にも止められない。むしろ私が止まらない。

 いいぞ私。多分、今、最高にいい女だ!!


 はあ、はははは……。


 ほら、誰かが朗らかに笑ってる。

 桎梏(しっこく)から放たれた私を、はあ、あぁ、慶賀するようだ。


 はは、あはははは。

 あはははははははははははは。


 笑い声は、常に三半規管の奥から響いた。

 泉の如く渾々と湧き、遠く、近く、波のように巡っていった。

 なんて愉快げな声か。

 私の解放に、衷心(ちゅうしん)からの祝意を受ける。


 あはははははは。


 目的の山に着いた。一気にボタンを登らせる。

 岩を切り崩し、新たな道をこさえ。

 獲物は間近だ。もう直ぐだ。

 ヤツも気づいただろうか。目の前の物、一切を破壊し押し進む。故に、爆進。さぁ音に聞け、いいや目にを見よ。


 あははは、あははは、あはははは。


 さぁ来たぞ。


 私が来たぞ。


 中腹に動く気配。大きい。そんな所に隠れていたか。

 一際大きく跳び、眼下を探る。自由落下の中でドラゴンの位置を見定めた。

 こっちを見たな!! お前だ、目が合ったな!!


 あは、あははは、あはは、あはははははは――。


「――ははははははは!! やぁやぁ我こそはキクノハナヒラク帝国が第三皇女、真名はマリーゴールドなり!! 止揚能わず己と臣下が身一つだが、驍名高き者と心せよ!! 我が熱誠、受け取るがよい!! ――オラァ!! 殴り込みじゃーッ!!」


 周囲の岩石を砂塵のように巻き上げドラゴンに直上から激突する。

 見たかこれが私とボタンの必殺技!! ダイナミックがっぷり四つだ!!

 目の前にドラゴンの顔がある。大きいな!! それに硬い!! 節くれだってゴツゴツして、しゅごい!!

 今の衝撃のダメージは無かったのか、「グルゥ」と喉の奥から低い音を響かせ、奴の口の周囲が黒煙を上げる。


「あははは!! 早速来るか!! 私が許すぞ苦しゅうない!! 試してみよ!!」


 首が小さく、鋭く前後に動くと、淡を吐くように火炎が放たれた。ファイアーブレスだ。

 ボタンではなく、私を狙ってきた。野生の感か、委細承知の上か。

 いいぞ。()めつ(すが)めつ味わってやろう。

 全身で炎を浴びる。

 あぁ、焼ける。何もかもが。

 魔法帽も、武骨なマントも、重ね着した黒いローブも。3000度の火炎に転瞬の間、万事焼滅した。

 図無い異常を感じたのだろう。ドラゴンが咄嗟に身を引こうとした。

 ボタンが骸骨の手で、ヤツを抱き寄せるように背後の翼を掴む。

 黒煙が晴れた時、私が言うべき言葉は一つだった。


「――今、何かしたか?」


 普段は重ね着で隠していた。白い小袖に金糸と銀糸をあしらった千早を羽織り、鮮やかな緋袴は刺縫を施した大口袴だ。頭には、これも魔法帽で隠していた金の細工に生花をあしらった冠型の花簪(はなかんざし)だが、何故この花が枯れないのかは私にもわからない。

 灼熱のブレスを遮ったのが、この故郷の魔術装束――巫女服と私の術式だ。

 動きを封じられたと悟ったドラゴンの牙が、私を狙う。

 迫る刹那、パン、と柏手を打つ。

 二つの気配が繋がる時、私たちの間を空中に描かれた文様が隔て、ヤツの顔が弾かれた。


「ボタン!! やっちゃえ!! やっちゃえ!!」


 力技だ。奴の翼を根元から引きちぎる。

 狙うは飛行能力。飛ばれると手の打ちようが無い。

 対して、ドラゴンが短い手でボタンの側頭部を叩き、そのまま岩石に擦り付けた。パワーは向こうが上か。おのれ。

 ガリガリ、ガリっと頭蓋骨で岩肌を削る。破片が散乱した。私ごと。

 やば、左半身、めっちゃ痛い。やばい。巻き込まれた。あ、左腕から下、どっか行った。

 何とかしがみ付いていたが、ボタンが体制を立て直すと、私は悶絶した。

 口から泡と血が吹き出す。

 ほ、骨、肋骨も折れたな、これ、いや、ヤツだ。距離をとっちゃ駄目だ。

 涙に霞む視界で、一点を狙う。

 ドラゴンの上顎、下顎をボタンの両腕で掴んだ。奴だって両翼を()がれたんだ。痛みを感じない道理は無いし、今の攻撃だって体力を消耗したはず。

 餓者髑髏なボタンと違い、魔物であれ魔獣であれ、スタミナの限界がある。きっとドラゴンだって夏バテとかするだろう。

 いや、いいんだ。今はドラゴンの夏バテとかどうでもいいんだ。

 このまま口から引き裂いちゃる。

 って、まずい。顔の周りから黒煙が。ファイアーブレスが来る。巫女装束はほつれ一つ無いが、私の片腕が無い。柏手も打てなければ印も結べない。


「ええい、こうだ!!」


 ボタンの手の位置を変え、首根っこを掴む。強引に上を向かせた。

 火炎は空高く昇っていき、雲を円形に散らせた。

 周囲を朝日の様に照らすと、直ぐに消え夜が戻る。

 ドラゴンが身じろぎし、長い尻尾が私たちを襲った。そんな武器もあったか。

 鞭のような衝撃に耐え、足を踏ん張っていたボタンだが、私が尻尾で弾かれたせいで姿が霞む。

 偉い子。最後まで膝を付かなかったね。

 ボタンの弱点。

 私が触れていないと顕現できない。

 ごめんね、甲斐性の無いご主人さまで。

 あの人に。

 大恩は報ぜずか。こんな事なら。伝えておけば良かった。

 もう会えない。

 さらに、空中に飛ばされた私を、ドラゴンが鋭い爪でぱしぃって猫パンチする。

 あは。腰から下、無くなっちゃった……。

 霞む視界の中、腸とかが舞うのを見た。あ、意外と私、内臓美人かもしれない。

 そうか。

 こんな私の。黒々とした神経の糸で巻き取られたような薄暗いヤツの中にも、こんなにも綺麗でキラキラした物が押し詰められていたのか。

 もっと早く知っていれば。


 ――あぁ、私が愛した傾国よ。この侘び戯れを甘受してくれた物言う花よ。御覧になられて。もし盲従をお許しになられるのなら、せめて一言。貴女様への詫び言を――。


 遠くで泣いてる声が聞こえた。

 子供の泣き声だ。

 私に向かって、少女が泣きじゃくっていた。

 可愛いな。

 ほんと、女の子みたいだな。私も、こんな風に可愛くなりたかったな。

 こんな風にひた向きになれたなら。

 山のような筋肉に抱っこされた女の子――え、何でコデマリくんが居るの?

 駄目。

 逃げて。

 裏切り者の私なんか、もう放っておいて。

 シャクヤクがコデマリくんを抱いたまま跳躍した。


「射程であるか、小僧?」

「任せてください!! ――回復術式(ヒール)


 そんな初級回復術じゃ、命を長らえることもできない。私はいいから。もう充分戦えて満足だから。

 いや? 截然(せつぜん)たる差を知るには早計じゃないか。まだ最後の切り札(ユリ)も切ってないのに。

 ん? なんかすーすーする……って、なんじゃこりゃ!?

 両手を見た。

 ぐーぱーする。

 動く。感じる。無くしたはずの左腕も戻ってる。

 あ、足!? 腰から下が生えてる!? え?


「駄目!! マリーさま、逃げて下さい!!」


 落下する私を、再度、ドラゴンの猫パンチが襲う。

 その間に、月明り弾く紅蓮の影が割って入った。振るう剣も血の様に黒く紅かった。

 火花が盛大に散ったのを、目を見開いて見た。見入った。紅いその背に。

 呆然とする私の首根っこに圧力が加わり、背後から強い力で引き離された。私を咥えたアセビが力強く岩肌に着地する。


「マリーさま!!」


 シャクヤクに抱っこされ降り立ったコデマリくんが、泣きじゃくりながら飛びついてきた。

 私も抱き返す。いいや抱きしめた。

 そのどさくさで、気づかれないよう――股間を触った。

 そうか。

 初めて触れたからよく分からないけど、ほんとに男の子なんだ。

 改めて驚愕した。

 でも、ふわふわして、なんだか可愛いな。


「あるじよ……。」

「ぶるぅ」


 シャクヤクとアセビが呆れていた。

 さり気無く手を離す。


「さ、さーせん……。」

「まるで巧言令色だの」

「ぶるぅ」


 私を諦観しないで。いや、もういっそ面罵されたい。主にアカシアさんみたいな美人に。


「ね? これ、本当にヒールなの? なんか色々生えてきちゃったんだけど」

「あの、できれば秘密にして頂きたいのですが……ボク、どんなに抑えても最上級回復術(エクストラヒール)になっちゃうみたいで……。」


 大神官クラスか!?

 端倪すべからざるとは言うけれど、男の子で女僧侶って時点でレア通り越してるのに、最悪、大阿闍梨様にだって匹敵しちゃう。


「うん、ありがとう。コデマリくんのおかげで初めて男の人に触れた気がします。いえ、命拾いしました」

「シャクヤク様とアセビさんのおかげで間に合いました。あの後、アセビさんが興奮状態になって大変だったんです――て、あ、あの、す、すみません!!」


 顔を背けられた。

 あー、そういや千早以外はボロボロだもんな。すっぽんぽんだもんな。

 手早くアイテムボックスからパンツを取り出し履いた。

 お母さんから贈られた、白の飾り気のない――勝負パンツだ。


『私の可愛いマリー。これを貴女に贈ります。ここ一番の勝負を決する時に、お履きなさい。決して華美にならず清潔な下着こそ、決戦の場を制するに相応しいのです――遊んでる風に見られなくて』


 お母さん、私は未熟です。何言ってるのか全然分かりません。

 お尻のラインに指を通し、ぱんってして気合を入れる。


「さて、あのお方だけど……。」


 紅い甲冑が岩山の上で飛び跳ね、ドラゴンに斬りかかっていた。


「知り合い?」

「い、いえ、さっきマリーさまを庇ってくれたように見えましたが」

「達人技の剣技よのう」


 そうか。

 どう甘く見積もってもサクラサク国――魔王様の四騎士(フォーカード)に見えるんだけど。どうなんだろ?

 よし、声掛けてみよう。


「あのぉ!! さっきはありがとうございましたぁ!!」


 岩場の頂上に着地した。声は届いてる筈。あ、ちらりとこちらを見た。ぐって親指を立ててきた。

 戦闘任せちゃってるからか、或いは寡黙な人なのか。なんかカッコイイな。

 あれ?

 どうしたんだろ?

 さっきとは違う、胸に熱を感じる。

 ん? んん?

 何だこれ? 希代の赤い甲冑姿を目で追っていると、こみ上げて来るものが抑えられなくなる。


「赤騎士様……。」


 ほう、となって迂闊にもその名を呟いてしまった。


「あるじよ。何を恋焦がれた顔で呆けておるのだ?」

「え? べ、べ、べつにいいじゃない!! あと呆けてなんていないわよ!!」

「なら良いのだがな。我の見立てだと、あれの中身は女人であるな」


 だから何でいつも秒で終わるのよ、私の恋は!!


「おのれドラゴン!! この恨み晴らさずておくべきか!!」

「ドラゴンも災難であるな」

「あ、あの、マリーさま、もう少しその、何か着ていただけると……色々と見えてしまって」

「さっき私の中身見ておいて、そんな照れるものなの?」

「な、中身!?」

「大腸とか十二指腸とか」

「……ヒールの掛け方、間違えたのかな?」

「小僧、生憎とあるじの頭の中は如何に最上級回復術でも手遅れ――これこれ、病み上がりでフリッカージャブは控えよあるじ」


 ほんとに、この鬼神は一言多いんだから。

 さて、ならばここからは本気で挑みましょうぞ。


「皆さん。どうかお力添えを頂戴いたしたく、切にお願い申し上げ奉りまする!!」


 ぴし、と背筋を伸ばし、頭を下げた。

 赤騎士様も、アセビも。そしてシャクヤクも。「いいから、やれ」と促してくれる。胸が熱くなった。

 勢いよく顔を上げ、隣のコデマリくんをもう一度抱き締めた。


「大丈夫ですよ。マリーさま」


 優しい声だ。うん。ありがとう。

 ドラゴンに向き直る。

 息を大きく吐く。瞼を閉じる。神経を研ぎ澄ます。

 私だけが見えるパスを繋ぐんだ。

 天地(あまつち)が剖れず、陰陽(めお)だって分かれちゃいない渾沌(まろか)れたること鶏子のような、ほのかにして(きざし)を含める光景。

 その先だ。

 気の遠くなるような歳月を経て。

 お爺ちゃんの居た世界。

 汎神論を尊ぶ国。

 私の憧れ。いつか、あの森厳な場所へ――。

 両手を二回、柏手を打ち鳴らした。


「掛けまくも畏き。伊邪那岐の大神。筑紫の日向の橘の、小戸の阿波岐原に禊ぎ祓へ給ひし時に」


 正面に文様が浮かぶ。

 風が流れた。

 遠く東の空が、蒼く白じんでいく。


「生り坐せる祓戸の大神たち!! 諸々の禍事、罪、穢有らんをば、祓へ給ひ清め給へともうすことを、聞こし召せと!! かしこみかしこみももうす!! ――捕まえたわ!!」


 ドラゴンが動きをぴたりと止めた。


「おお、これは――。」


 尋常ならざる気配に、シャクヤクが呻く。赤騎士様も剣を構えたまま周囲を見た。頭上。そう、そこ。凄い。分かるだなんて。


「こうも容易く、呼び召されたか」


 ドラゴンが、ギリギリと締め上げられた。見えざる御手に優しく抱きしめられたような。

 赤騎士様が、何事かとこちらを見た。

 あ、今。目が合った。今、絶対私のこと見たわよ!! きゃー!! ……いや、中身、女の人なんだよな。

 なんだか複雑な気分だ。

 赤騎士様がちょいちょいとドラゴンを指さした。これ、斬ってもいいの? と聞いてるのだろう。

 きっと彼女も複雑な気分なのだろう。



 結局、トドメは赤騎士様とシャクヤクとアセビの総攻撃になって、そのあと私の浄化で決まった。

 つまり、誰がトドメを刺したかわからない。

 みんな、結構好き勝手に暴れてた。

 ドラゴンは、翼の根元以外は固かったなぁ。

 尚、巫女やってる時は、ボタンとユリは顕現できない。

 簡単に唱えてるように見えるけど、祝詞(おことば)はとても大切なものなの。

 その名を口にする事すら恐れ多い異世界の神様のお力をお借りし、不浄の一切の活動を止め穢れを払うのだ。下手したら餓者髑髏なんて、一発でお払いになられてしまいそう。

 ドラゴンが穢れや不浄かというと、違うような気もするけど。異世界の神様的には有り寄りの有りだったらしい。

 朝日に照らされる中、私はせっせと土地にお神酒を撒いて、感謝を捧げる祝詞を唱えていた。

 神様、ありがとう。

 あと、パンツ一丁の巫女でごめんなさい。

 ……あ、どうしよう。こっちの世界の巫女はパンツ一丁で大立ち回りしてるとか思われたら。

 でも、異世界の神様たち、結構、懐が深いみたいだし。たまに拗ねて閉じこもったり可愛いところもあるし。パンツ一丁の女が召喚しても割と流してくれそう。



 お片付けを終え、一通り身支度をした。

 大きめのプリーツを掛けたミニスカートに厚手のタイツ。靴はショートブーツだ。トップスはブレードのゆったりしたキャミ風に小さめのコルセットを合わせてる。

 ラフな格好だが、問題は無いだろう。どうせシャクヤクに担がれて行くんだ。


「それじゃ、私たちは行きますけど、アセビ? コデマリくんの事をお願いね」


 アセビの頬を撫でる。

 馬車にはアカシアさんが残ったとの事だから、合流すれば街まで戻るのも問題ないだろう。

 野営地には、騎馬民族の人らも居るし。


「マリーさまは、これからどちらへ?」

「はい、別の国を見て回ろうと思います。カサブランカの迷宮街とか、面白そうですね。知人の冒険者さんも滞在してるようですし」


 もっとも、もう冒険者ギルドに関わるのは御免だけど。

 そうだ。宿屋の看板娘なんてどうかな?

 いいかも。無理なく出会いもありそう。


「……。」

「あの、赤騎士様? 今日はありがとう御座いました。赤騎士様は、もしやアカシアさんのお呼びに応じて下さったのでは御座いませんか? もし、そうなら、私……アカシアさんに謝らないといけないのに」

「……。」

「私、大切な友達に酷く嫌な態度を取ってしまって……自分の思い通りにならないからって、拗ねていじけて、構って欲しくて裏切って。私が狭量なせいで傷つけて。私が野卑な振る舞いをしても見捨てず窘めてくれるし、アカシアさんに間然する所が無いってわかるし、むしろ崇敬の念を抱く高邁な人だっていうのに」

「……。」

「あの時。謝らなくちゃって気づいた時、体の半分を失って、もうお終いの時で、もう伝えられないって知った時、頭の中がアカシアさんの事でいっぱいで……。今は、まだ顔を合わせづらいけど、いつか、ちゃんとゴメンなさいと、そしてありったけの気持ちを込めて、ただ一言――ありがとうって」

「……。」


 あれ? なんか赤騎士様が落ち着かない様子になった。

 どうしたのかな?

 できればアカシアさんに言伝をお願いしたいのに。


「あるじよ。一言、諫言するぞ?」


 何よ。また嫌味でも言うの?


「いい加減気づけ。流石に哀れになってきた」

お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。


マリー編はこれにて終了となります。

第六話で3行しか登場しなかった宿屋の従業員にスポットあて無駄に掘り下げてみました。

尚、本編主人公サツキとは、宿屋のオーナーに婚活の相手として紹介されてもいます(第二話)

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