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198話 解呪

日頃、ブックマーク、評価、閲覧いただきまして、誠にありがとう御座います。

ようやくここまで来れました。

 普段訪れない廊下は、左右の心許ないランプの灯りが頼りだった。

 木彫りの装飾が浮かべる影絵に、足取りが自然と郷愁へ誘われる。幼少の頃過ごした辺境伯領での別邸や本邸と同じ作りなんだ。

 ふと、小さな影が灯りに照らされる。影は幼い笑い声と共に奥へと駆けて行った。

 それは自分の子供時代の姿だったろうか。

 夕陽が恋しくなる。

 センチメンタルが産んだ錯覚だ。

 仕組みを知らないと、招かざる客は永遠に回廊を彷徨うだろう。

 回廊の先は、館の主達の住処(すみか)を示していた。




 クランの部屋。

 王都邸では初めてだ。

 パーティ(グリーンガーデン)時代、中央都市(アンスリウム)を活動拠点にした頃もあったが、重視したのが冒険者の立場の為、宿屋の利用が基本だった。辺境伯の分邸自体は使われる事は無いんだ。


「多いな」


 入室して最初の感想だ。

 背の高い鏡面台の前に座るクラン。白縹(しろはなだ)のワンピースの寝巻きは清楚でいながら、少女の色気を露わにしている。

 見学希望のマリー。大きめのざっくりニットで、小さな肩を露わにしている。

 世話役のメイドが2名。むちむちだ。あの辺やらこの辺やらの曲線を露わにしている。


「今更帰れと言われてももう遅いです!!」


 マリー。どこの追放者だよ? 帰れよ?

 メイドの二人も今や遅しと無言でモジモジして居る。ん? 何でこの人らもメイド服?


「私もサツキくんも……まだ心の準備が必要……。だからまずは……気分を上げて、いきます……。」

「待て、ちょっと待って。まさか!?」


 メイドの内一人は20代後半のお姉さん系。スズシロさんだ。ぴっちりしたスカートがお尻のボリュームを露わにしている。

 もう一人はさらに上。30は越えてるかな。この人にも幼少の頃にお世話になった。あ、指輪してる。既婚者かよ!!

 どちらもクラン付きの侍女だ。寄子のご令嬢で普段はドレス姿だ。使用人の服によく袖が通せたものだ。


「サツキくんの好みは……把握している……。」

「いやダメだろこれ!!」


 昼間のスズシロさん、こういう事か!!


「でも年上が好き……なんだよね?」

「好きだけど!!」

「私も年上……やったね」

「一歳差だろうが!!」


 お姉さん系のメイドさんが一歩前に出る。


「あの可愛らしかったお坊ちゃまが、このような素敵な男性に進化を遂げられましたこと、心からお喜び申し上げます」


 意味不明な事を言ってスカートの前をたくし上げた。ガーターか。


「さぁ、前からいらして下さい」

「できるか!!」


 行けた。

 本来は秘匿される謎の三角地帯は、布越しでも芳醇だった。


 既婚者メイドが壁に手を付き、スカート越しにも分かる肉付きのいいヒップを押し上げる。スズシロさんを凌駕するボリューム感だ。


「わたくし、お尻が大きいのを気にしておりましたが、その、ボクくんはきっとこういうのがお好きかと」


 意味不明な事を言って、肩越しにこちらを見る。

 そうだ。確かナズナさんって名前だ。


「さぁ、後ろからいらして下さい」

「できるか!!」


 行けた。

 たくしあげると、やはりガーターだ。白い巨大が布地が、なんかもう、もう凄いとしか言いようがなかった。


 一通り終えた頃、クランは、


「ひぃぃ……け、けだもの……。」(ぶるぶる)


 すっかり怯えていた。逆効果じゃん。

 息を荒げ床に崩れ落ちる二人のメイド姿が、事の激しさを物語っていた。


「……はぁはぁ……まさかあの可愛らしかったお坊ちゃまに……こんなにされるだねんて」

「……主人にもここまでされた事はなかったのに……悪い子ね、ボクくん」


 ……どこの成年指定の絵巻物だよ!!


「年上のメイドさんに前から後ろからあんなにしちゃうだなんて。サツキさん気持ち悪いです。近寄らないで下さい」


 マリーがとても辛辣だ。


「あれ? 俺また何かやっちゃいました……?」


 上を下への中、思えば無心だった。

 ていうか盆と正月が一度に来た感じだ。祭りやん。


「ふふふ、股にやられちゃいました」


 お姉さんメイド系が余計な事を言う。


「やったんですか!?」

「やってないよ!! マリーは何見てたの!?」

「サツキさんががむしゃらに!! ただひたすらがむしゃらに!!」


 そんな風に見えたのか。


「ごめんね、サツキ……流石にお姉ちゃんも、あれは怖いよ……?」


 ショックのあまり昔の呼び方になっていた。


「いや君がセッティングしたんだからね?」

「……よもやこれ程の執着を見せるとは」

「なんか背徳感がこう」

「最低……。」


 クランとマリーが物理的に離れていった。


「確かに、課せられた呪縛から解き放たれる為、君たちの哀愍(あいびん)を利用したようなものだ。軽蔑だってされよう。かくなる上は、ワイルドに――。」

「それはダメ!!」


 クランが珍しく声を張り上げた。

 本人も自分の声に驚いている。


「クラン?」

「サツキくんが……兄さんのものになっちゃう」


 ならないよ?


「待ってくれ、だったら後は苺さ、いやダメだ絶対普通じゃ満たされなくなる。なら残された道は――ベリー辺境伯?」

「どうしてお父様に行っちゃうの……?」

「提案がありますお嬢様」


 佇まいを正しながら、お姉さんメイドが立ち上がった。


「今のサツキ様は普段の抑圧から解放されてたてのホヤホヤ。傾倒し耽溺されていた嗜好が一思いに暴発した状況にお見受けします」

「……一過性なものだというの?」

「左様でございます。でしたら対策も簡約されましょう。経験値を得るのです」


 不穏な事を言い出した。


「わたくし共が、昼夜問わずいついかなる時でも、この中身をサツキ様にお預けいたしましょう」


 既婚者メイドも復活した。やはり不穏だ。


「……いつ……いかなる時?」

「はい。館内の清掃中も、庭園の世話をする屋外でも、給仕の最中や、お客さまのご案内中、散らかった部屋での探し物の合間ですら。サツキ様が望まれるならば!! わたくしたちはこのスカートの中を解放してみせましょう!!」

「辺境伯に風評被害出るからやめようよ!!」


 どんな乱れた館だよ、ここは!?


「まさかサツキさん、その中に私も混ぜようって思ってませんよね!?」


 先に俺の風評被害が来た!!


「あんな風に潜ってもいいだなんて!! 凄い事ですよこれ!!」

「お前が潜る方かよ!!」


 既婚者メイドがぐぐっと迫る。


「お仕事中で汗をかいて蒸れに蒸れ切って不快に思われるかもしれませんが、汗に蒸れたはしたない所を年下の男の子に嗅がれるだなんて羞恥の至りですが、辺境伯繁栄の為、全力で臨む所存です」

「臨まないで?」


 ていうか、何で興奮してるのこの人? ナズナさん、侍女の取りまとめ役だったでしょ?


「そんなサツキくんは……なんか穢れてて嫌だよ?」


 一応、俺も不本意とだけ表明しておく。


「でしたらお嬢様」


 スズシロさんがクランを右から抑える。


「今ここで決めてしまわなくては」


 ナズナさんがクランを左から抑える。


「さぁサツキ様?」

「ボクくん、来るのよ?」


 二人の手が、同時にクランの両膝に掛かった。

 細い折れそうな足が、抵抗する事もなくゆっくりと左右に開く。


「おお!! 凄いです!! 凄いですよサツキさん!! 見てください!! クランお姉さん凄いです!! 一皮剥いたら勝負に出たってやつです!!」


 マリーが全部台無しにしたが。

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