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127話 あなたの隣に

ブックマーク、評価などを頂きまして、大変ありがとう御座います。

 俺とおっさんが顔を見合わせた。

 牽制し合う。


 ――お前の客だろ。

 ――いいやお前の連れだろう。


 くそ、こうなったら、と頷き合う。

 同時に肩越しに振り向くと、町娘風の女が息を切らせていた。


「もう!! お父さん一人で来るんなてズルイ!! お母さんに言いつけてやるんだから!!」


「って、あんたの家族かよ!! いやさっきのしんみりしたやり取り何!? 健在だよね? ご家族健在だよね!!」

「だから言ったのだ……一人で来たのがバレた時、その身に恐ろしい(わざわい)が降りかかるであろう」

「降りかかってんのあんただよ!! あと自業自得だからそれ!!」


「もうお父さんまたそうやって、知らない人にツッコミ役させるんだから!!」


 え? 俺の事?


「知らない人などではない!! 今や彼は立派なワシの相方じゃ!! いずれはワシの後を継いでてっぺん取ったるで? もうマブダチと言っても過言じゃないね!!」


 俺に何させる気だよ?

 ていうか初対面なんだけど。


「旦那、ひとまずその辺で。こっちの兄ちゃんも困ってますぜ」


 カウンター向こうのマスターがフォローに入ってくれた。


「お嬢もそんな所に居ないで、入ってくだせぇ」

「うむ、母さんに黙ってくれたならここはワシが全部持とう。だからくれぐれも母さんには」


 どんだけ奥さん怖いんだよ。


「ワオ!! ごちになるわね!!」


 娘さんが指をポキポキ鳴らす。


「……お手柔らかに」


 おっさんが青ざめる。構わず娘さんは上機嫌な足取りで隣の席に着いた。


 ……。

 ……。


 って、何で俺の隣なんだよ!? 俺何でこの親子に挟まれてんの!?


「それじゃあ、味噌野菜にバターコーントッピングであと半チャーハンに餃子セット。ビールは食前で構わないわ。こちらの冒険者くんにも」

「あ、ゴチになりまーす」

「……ワシも飲もおっかな」

「お父さんはまだお仕事が残ってるでしょ」

「しょぼん」


 いや何でパジャマ姿でうろついてんだよ。


「ごめんなさいね、お父さんのマブダチなんかになってもらって」


 え? もう決定事項なの!?


「多分お父さん、本気で後継者に考えてるだろうから」

「だから何のだよ!?」

「お兄ちゃんがもう少ししっかりしてくれれば良かったんだけれど」

「長男居るならそっちに継がせろよ!!」

「真実の愛とやら追い求める兄ですまんのう。きゃははは、真実の愛だって!? バァッかじゃねーの!? フィアンセだって居るってぇのによ!!」


 何で絡み上戸みたいになってんの?


「自営業か知らんがポッと出の冒険者を家庭内事情に巻き込むなよ。組織なら軋轢だって生むだろ」

「あはは――お父さんの代で軋轢だらけよ!!」

「嫌だよそんなギスギスした職場の後継者なんて!? だいたい、根本的に――。」


 そう。根本的な解決が成ってない。


「事業の後継者って、俺を養子にでもする気かよ?」

「っん」


 妙な鼻の鳴らし方をして娘が声を止めた。

 俺も次の言葉に迷った。

 おっさんのラーメンをすする音だけが響いた。


「あのさ? 冒険者くんはさ? ……年上の女の人って、嫌い?」

「何を赤くなってる?」

「あ、赤くなんて!!」

「うむ。こうして二人並んでるとお似合いではないか!! うむ!!」

「もうお父さんったらよしてよ!!」(ばんばんばん)


 何故か盛大に俺の背中を叩いてきた。

 何が凄いって、


「へい、ビール二丁、お待ちどう様」


 まだ飲んで無かったよ!! 今ビール出てきたよ!! 飲んでなくたってこれだよ!?


「ぐびぐび、ぐびぃ!! ぷっはぁー!! あーこの一杯の為に生きてるわぁ」

「だな!! ――ところで、年上の女性がどうしたって?」

「お酒が大好きな年上の女の子は嫌いかしら///」

「むしろ今取り繕うところが凄いと思うよ」

「なんじゃ早速意気投合しとるな、ヒューヒュー」

「もうお父さんったらよしてよ!!」(ばんばんばん)


 盛大に俺の背中が叩かれる。


 まぁ、事業の話はともかく。

 飲み友達としては楽しい、かな。

 女性としては……ああ、白状すると凄く魅力的だよ。このお嬢さんなら酒瓶抱えて寝てると言われても疑問を挟む余地は無い。

 あとはゴリラパワーかどうかだな!!


「そう言えば奥にいい部屋があったと聞く。どうじゃこの後二人で行ってみては」


 どっかで聞いた言い回しだなおい!!


「っん……あの、ワタクシ初めてですが、それでよろしければ……。」


 ダンっ、とカウンターに自分の分のお会計を叩きつけるようにのせ、


「大将、ご馳走さまでした!!」


 逃げる。それしか(一択っきゃ)ない。

 好み(タイプ)な女性と、それ(深い関係)とは話が別だ。


「なんじゃい、エールくらいワシが奢ると言っておろう」

「ワタクシの誘いを断ると仰せなの!?」

「そんなことより兄ちゃん、お代はいいって言ったろ!!」


 これ絶対に振り向いちゃダメなやつだ。

 あちらの事情がまるで見えない。事業主と言いつつパジャマのおっさんだよ?

 それと――。


「ふ、ふふふ、ワタクシの誘いを無下にするなんて、面白れー男の子。ワタクシ、絶対に諦めませんわよ」


 怖い事言ってるけどさ。

 俺、最初から知られてるな。グリーンガーデンの追放者って俗称とは違う。この理解(分かり方)は不愉快だ。

お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。

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