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1話 キツメの香り

かつて、個人サイトで細々とショートストーリー(SS)を掲載していました。

以前はシリアスを主軸に書いていました。

ごめんなさいシリアスと尻アヌスは似ているとか言ってました。


初投稿になります。宜しくお願いします。


2020/11/22

 ・気になる点を修正。

2022/4/3

 ・去年の8月に誤字指摘を頂いてました。今気づきまして適用させて頂きました。ありがとう御座いました。

「おまえはもうクビだ!! わかったんならさっさと出てけよ!」


 ……何もわからなかった。

 今まさに、パーティを追放されようとしていた。

 唐突に。


「何できょとんとしてんだよ! お前はアレか? 村人や貴族にサツキくん今何やったの!? て言われてもきょとんとしちゃうタイプか!? ああん!?」


 リーダーのワイルドが胸ぐらを掴んでくる。普通に苦しい。コイツ握力だけはゴリラに匹敵するんだよな。

 剣士ワイルド、その妹の魔法使いクラン、女僧侶サザンカ、踊り子の俺。幼馴染同士のパーティだった。

 納得がいかなかった。

 いつもワイルドのハーレムパーティみたいに見られていた。

 ワイルド兄さん。可愛い女の子三人に囲まれて羨ましいですね、てよく言われてた。

 納得がいかなかった。

 可愛い女の子の中に、俺がちゃっかり混ぜられていることに。

 自分、一応、男の子です。

 そして本物の女の子、二人は事の成り行きを見守っている。

 職業はクラスとも言い換えられ、それぞれ個別の技、術、特性といったスキルを表していた。クラス及びスキルには熟練度があり、上昇によって上位クラス、上位スキルに統合される。雨は夜更け過ぎに雪へと変わるものだ。

 なのに、俺を夜更け過ぎに雪へと変えてどうする?

 ちょっと待って。

 追放の原因、俺の職業か?


「そうか……確かに、まじめに踊ったことが無かったな。今まで戦闘も普通に戦ってたし、せいぜい足のステップだったもんな」

「とぼけんじゃねぇ!!」


 ヤツが拳を振り上げた時、


「乱暴はいけないわ」

「っ!?」


 サザンカがワイルドをアイアンクローで落としにかかっていた。

 コイツも握力はゴリラ並みなんだよな。可愛い。

 しかも、本職の剣士が躱す間もないスピード。素敵。

 ……僧侶とか嘘だろ?


「だめ……兄さんを絞め落とさないで……。」


 クランがうんしょうんしょとサザンカのケープを掴んで引き剥がそうとする。

 あざといんだよ。ゴリラパワーも無いくせに。


「茶番はたくさんだ。俺を追放する理由を言え。言ってないよね理由? 俺、聞いてないよね?」

「ぷはっ……テメェがパーティの秩序を乱すからだうががが、ちょ、おま、力入れるな!」


 心なしかワイルドの体が浮いてた。

 それにしても秩序か。痛いところを突かれたな。


「確かに……昨夜サザンカに告白したのはこの俺だ」


 そら見たことかとワイルドが口を歪める。


「だが、きっぱり断られたのもまた、この俺だ!」


 少しやけくそだった。


「ふはは! フラれてやがんの!」

「お断りされただけだ!」


 いやワイルド兄貴、何も笑わなくても。

 こう見えて割と傷心中なんだよ。結構、キツイんだよ。


「はんっ、抜け駆けしておいてフラれてやんnあだだだっ」

「……そろそろ降ろしてやったらどうだ?」


 アイアンクローも結構キツイみたいだ。

 ほんとこの女、可愛いな。


「仕方がないわね。話を進めなさい」


 無造作にワイルドが解き放たれる。

 豪快というか、大雑把なところもいい。

 旅の途中、酒瓶を抱えてぐーすか寝る姿に何度ときめいたことか。


「いい? あたしは他に好きな人がいるからサツキには応えられないの」

「好きな……やつだと?」


 それは初めて聞いた。

 サザンカが好きな奴だと? まさか、そんな。

 ワイルドが襟を正す。

 嘘だろ?


「えぇ、同じパーティの」

「あば、ばばばばば」


 余りのショックに、俺は言語を失った。

 マジかよ……。

 お前ら、いつの間にそんな仲だったんだよ?

 確かに、ワイルドは皆のアニキ分だし、綺麗な身のこなしに甘いマスクで貴族の嫡男で、俺に無いものを全て持っていた。

 ワイルドに比べたら俺なんて、どんなに頑張ったところで初対面のヤツから、女の子がいっちょ前に虚勢を張ってるように言われるし。

 俺だけかよ。知らなかったのは俺だけかよ。


「――クランよ?」

「「あば、ばばばばば」」


 俺とワイルドは言語を失っていた。

 ワイルドも、この期に及んで妹が狙われているとは思ってもみなかっただろう。

 おのれサザンカ。始まって早々、百合展開にきたか!?


「え? ……嫌だけど……?」

「「「あば、ばばばばば」」」


 クランの応えに、サザンカも言語を失った。

 一気に来たな、負の連鎖。むしろ俺達らしいな、これ。


「もういい、もう沢山だ、こんな誰も幸せになれない言い争いなんて」


 そもそも俺の告白から始まった気もするが、棚の隅っこの方に、こうぎゅっぎゅっと。


「クランはどうだ? おまえも俺の追放に賛成なのか?」

「え……あ……え?」


 ビクっとして何か言おうとして言葉が出ない。コイツはいつもそうだ。いつも俺たちの後ろにいて自発的に動かない。

 思い悩むように眉を寄せ俺を見る。すがりつくような目だった。

 俺に何が応えられるというんだ。

 サザンカに告白し、フラれた。

 見た目は女の子。

 ワイルドみたいなリーダーシップも無い。

 クラン、お前はそんな俺に何を望むというのk――って、ちょっと待てや!!

 少し前傾姿勢になり、おもむろに(←ゆっくりの意)両手を自分のローブの奥へ滑らせやがった!?

 コイツ、違うぞ!? 「いつもの」コイツと何かが違うッ!!

 止めに入った。

 間に合わなかった。

 一気に下まで落とされるパンツ。

 脱いだ!! ここにきてパンツを脱ぎやがった!!

 白い布地から左足を抜き、右足を抜き……右手に握られたそれが、俺の生涯にとっての悪夢となろうとは。

 困り顔で睨んでくる。

 次の動作が読めない。普段大人しい彼女が耳まで真っ赤なのはよほど怒りを溜めていたのか。

 コイツ、距離を測っているな。

 油断はできない。


 ――サツキくん。


 小さな口が、俺の名前の形に動いた。音は伝わらない。

 おそらく一歩だったのだろう。一瞬で間合いを詰められた。


 「やっ、だめ」


 不覚。

 あまりの恐怖に、女みたいな悲鳴を上げちまった。ちきしょう。

 防ぐ間もなく、ヤツの白い布地が俺の口と鼻を抑えていた。

 意外だった。いつもおっとりしているクランという少女は、パーティメンバーの顔に己が先刻まで履いていたパンツを押し当てることのできる女だったのだ!!

 ……。

 ……。

 ほんとどうしちゃったんだよ、おめーはよ!!


「ふぐーっ、ふぐーっ」

「……さ、サツキくんがイケナイんです……。サザちゃんに……告白なんかするから……。」

「サツキぃ!! やってくれたなサツキッ!! お前はサザンカだけでなくクランまdあだだだだ!! まて、サザンカ、お前はお前でどうして俺の顔面を絞めつけたがる!?」

「おのれサツキ!! あたしが欲してやまないクランのパンツを!! おのれー!!」


 鬼のような形相でワイルドの頭を絞めていた。

 ……神様。これ、俺が昨夜告白した女なんですよ? 可愛いと思いません?


 それにしてもアレだな。今日一日履いてたんだろうけど。割とすっぱいな。目に染みるし、微妙に香ばしい。

 それと、足に力が入らない。

 なんだこれ?

 立ち眩み?

 違う。

 吐き気のようなもの。

 違う。匂いのせいじゃない。大丈夫。ちゃんと女の子みたいな匂いだから。いや違う。なんだ? 俺、妙にクランの事を嫌ってた。コイツに苦手意識があった。今、それを思い出した。この瞬間、何かが『ズレ』た。

 ぐ、ぐ、とパンツを押し付けられる。

 上手い返しができない。

 ただ、妙な感覚だ。天井から何か、闇みたいなものが降りて辺りを包むような錯覚。

 そして、彼女の行動原理がわからなかった。


「どうしてだ!? どうしてなんだクラン!!」


 サザンカから逃れたワイルドがクランの肩を掴む。よし、いいぞ。そのまま引きはがせ。お前は出来る子だ。ちっ、鳩尾に肘を喰らいやがった。


「……だって私……サツキくんにずっと……。」


 見上げる瞳が潤んでいた。泣きたいのは俺の方だ。あとこの匂い。顔に着いたら嫌だな。


「……ずっと嗅がれたいって思ってたんだもん」


 恐ろしいこと考えてたな!


「駄目なのクラン!? あたしじゃ駄目なの!?」


 お前は混ざってくるな。

 おい、そこのリーダー、いい加減止めろ。何? 内向的な妹がいつになく楽しそうで複雑だと? こっちだよ複雑なのは!! 幼馴染のパーティメンバーの性癖知って複雑だよ、割と!!


「ふぐからわ?」

「……え? なんですか、サツキくん……?」


 いいからコレどけろ。

 あ、うん。口元から布地がどけられた。案外、話のわかるやつかもしれない。


「いつからだ?」

「……。」

「いつから、こんな風になってしまったんだ? 君はそんなはしたない子じゃなかったはずだ」

「……はしたない? サツキくん……今の私ははしたないのですか……?」

「Really」

「……嬉しい」


 どうなってんのコレ?


「くそ、かくなる上はサツキを追放するしか――!」

「その話し乗ったわ、ワイルド」


 お前ら、やっと冒頭に戻ったか。


 武者修行とはいえ、いつかは魔王討伐をと互いに決意を秘め村を出たが……秘めていたのは願望と欲望と、酸味の効いたパンツだったとは。

 そして、SSランクパーティ『グリーンガーデン』のメンバー脱退という本日のハイライトが、魔王をも巻き込んだ事件に発展しようとは。

 俺の力が及ばないばかりに、ごめんなさい。

 あとこの酒場、出入り禁止になりました。

お付き合い頂きまして、大変ありがとう御座います。


人間が内に持つ狂気を表現しました。

嘘です。


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