彼と彼女のすれ違い、コーヒーショップ
俺はいつものコーヒーショップで、今日の会議で使う資料を整理する。
これは毎朝、就業前の日課となっている。
出勤前に段取りを決めてしまうと、一日がスムーズだ。
このコーヒーショップは会社に近いが、今まで同僚にはあったことがない。その為か仕事がはかどるので気に入っている。
すると自動ドアをから、俺の良く知る人物が入ってきた。営業企画部二課の三田さんだ。
彼女は同期で入社当時はよく助け合ったが、部署が違うので最近は会えば挨拶する程度だ。
彼女もきっとここで、朝のひとときを仕事に充てたいのだろうと思い。
声をかけるのを控える。
彼女はトレイにコーヒーをもって、俺のテーブルから4つ分離れた席に座った。
彼女もやはり資料を出し始めた。そういえば今日初めての大きなプレゼンがあると言っていた。
気にはなるが、とりあえず自分のやるべき事に集中しよう。
しばらくすると俺の前で足音がカツンとつまる。
「大崎くん?」
空のカップの載ったトレイを持った三田さんに声をけられる。
彼女はもう行くようだ。
「おお」
俺は、今彼女に気付いた風をよそおう。
彼女は感じの良い笑顔を浮かべる。愛想笑いだな。
しかし、只それだけで俺は自分の頬に朱が上るのわかる。
声をかけてもらえて嬉しかった。
「今日、プレゼンでしょ。頑張って」
それだけを口にする。彼女の時間を無駄にしないように。
「うん・・・じゃあ」
と言って彼女は店をでた。
コーヒーショップの窓越しにさっそうと歩く彼女の姿を見る。
一度も俺を振り返らない彼女に、頑張れとエールを送る。
ああ、どうしよう。今日はプレゼンだ。
入社以来初めての認められるチャンス。緊張してしまう。
あたしはコーヒーショップに入り資料を確かめる。
うん、大丈夫。きっとどこにも抜けはないよね。
何度も点検して確認して、気が済んだから店を出よう。
今日は余裕をもって会社に出勤だ。
あたしはトレイに空のカップを乗せる。
あれ、大崎君?
「大崎君」
声をかけると俯いて資料を読んでいた彼が顔を上げた。
「おお」
あれ?今気が付いた風を装っているみたいだけれど、
もしかして私が店内にいるの気付いてましたか?
ひょっとして迷惑だった?
「今日、プレゼンでしょ。頑張って」
「うん」
覚えていてくれたのね。そんな大崎君の言葉がちょっと嬉しい。
ねえ、あたしと一緒に会社に行かない?そんな気持ちを込めて少し立ち止まってみる。
彼はニコニコと笑ったままで、席をたつ気配なし。
「じゃあ」
諦めて店をでる。あたしの笑顔引きつってなかったかな?ちゃんとうまく笑えてた?
「今日、プレゼンでしょ。頑張って」という彼の一言に背を押され、
あたしは一人会社に向かう。
だから何なの~という感じです。ごめんなさい。