85話 救出後
P.M 20: 18、全員がクリューチたちのすみかまでたどり着いた。
人間界から転送装置で連れてこられたため、一部以外の景色全体が同じ色で統一された場所に、彼らは不安を感じているようだ。
無理もない。見たこともない場所以前に、知らない奴らに誘導されたため、何か危険な目にでも合うのではないか、そんなことを考えていてもおかしくない。
ざわついたこの場に、凛とした一つの声が通る。
「ほれ、静かにせんか。」
声の主人に従ったのか、びっくりしたのか、場は静まり返った。
ラタムが口を開いたので、人々に話しかけるのかと思えば
「う〜む。めんどくさくなってきたのう。ニック、汝が話せ。」
「は?!今ここで振るのかい?!」
ニックは動揺して、いつもなら上げないような大きな声を発した。
ひとしきり間を置くと、ニックは落ち着いて、群衆に話しかけた。
「えっと……貴方達の国では現在戦争の準備をしています。政府‥‥彼らは国民を犠牲にする可能性がありましたので、安全な場所に避難してもらいました。……しばらくの間はここで暮らしてもらうことになります。食料などはすでに用意してあるのでご心配せず。」
彼らはニックの言葉を聞くと、それぞれ安堵していた。
リズ達は自分達が隠れ家としている場所に戻っていった。
ーーー
戻ってきて早々、ニックが話し合いをしたいといってきた。
「さて、民衆は救ったことだし、来るべき戦争のことについて考えなければいけないね。」
「いくら私たちとはいえども、なかなか厳しいものがあるんじゃないかしら?」
ニックの言葉に対し、ルフィナが疑問を浮かべる。
人間とオプティルト…況してや神獣とでは魔力保容量が違う。高度魔法がこれでもかと使える点で、こちらの方が有利ではあるのだが……
「リズ達がいると条件魔法を使う際、一発一発の魔力出力量が大きくなってしまうパムね。」
「そんなの、この子達を置いてけばいいじゃない。」
パームの言葉にベルが噛み付く。確かに、ベルの言うことはもっともではあるのだが
「アレなんじゃない?自分達で決着をつけたいとかなんじゃない?もしくはどこかの誰かさん達がいるから信用ならないんじゃない?特にそこのことか用心深そうだし。」
ライサはチェスを指差しながら言葉を発する。
信用ならないというのもあながち間違いではないのだが、チェスにはどうしてもつけておきたいケリがあるのだ。
「リズ達も連れていった方がいいと思うよ。」
サイネリアが思いがけない提案をした。
サイネリア以外の皆がギョッとした顔で彼の方を見る。
彼はいったて冷静だった。
「僕たちはこの騒動が終わった後すぐにそれぞれの主君の元に帰るわけだろう?救世主的存在を立てておいた方がいいと思うんだ。それも同じ種族の者を。」
パームたち神獣組は納得したように首を縦に振っている。
リズにはよくわからず、首を傾げていたが
「あれだろ、一気に特権階級の奴らがいなくなるわけだ。当然国はトップを失うから、次のトップを決めないといけない。その時に国を救ってくれたやつ……まぁ俺たちをそれに仕立て上げようとしてるようだが、そいつがいれば争いもなく国の立て直しができる。」
チェスの説明のおかげで、オスマンやソレイユは納得したようだったが、リズにはまだわからなかった。




