80話 クリューチという種族
ニックとの会話が終わったベルはある場所に向かっていた。
自慢の橋の速さを生かし、全速力で駆け抜けるベルの姿はスレはそれは美しかった。
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「ふぅ、こんな時こそ点んそう魔法を使いたいものだわ。‥‥全くあの犬っころったら、魔力消費量が多いからなるべく使いたくないだなんて‥‥、こっちだって急いでるのよ!」
アルフと喧嘩している時のような本気の怒りではないのだろう。
可愛らしくプンスコと怒っているベルの目の前に広がる光景は、一面に広がる白銀。
まるで境界線でも引いてあるかのように、土色と白銀がきっぱりと分かれていろ。混じり合った色もいっぺんも見えない。完全に別物であるかのよう。
「うぅ‥‥寒い。早く戻って温まりたいわ。」
文句を言いながらも白銀の世界へと進んでいく。
その世界は2色しかなかった。
あたり一面を覆い尽くす白銀と、空から舞ってくる純白。
一見綺麗に見えるが、人々が普段目にしている多彩な色彩と比べれば、世界が味気なく‥‥‥色あせて見えてしまう。
しばらく進むと、その先には大きな泉があった。
泉は白縹色で、ここにくるまでには見なかったものだ。
この場の雰囲気には全く合わないし、なんだか不気味にも見える。
まるでその一面に色を集めるため、そのほかの色を吸収しているかのような、泉1つが繁栄する代わりに大部分を犠牲にしてるかのような、そんな気持ちになる。
その泉はトートの泉と言われていて、この世の全てを収縮し飲めば全知全能となれるだとか、そんな噂が飛び交う泉だが……実際はそこまで素晴らしいものではなく、えれるものといっても知恵だけである。
まぁ、その知恵というのも『この世界の真理までたどり着けるだけの知恵』なので十分すごいのだが…。
「戻ってきたわ。これが土産よ。」
ベルは呪文を唱え、ニックに渡された箱を目の前に出した。
それを見届けたのか、泉の中から小さな生き物達がたくさん出てきた。
この小さな生き物達はクリューチといい、人間達でいうところの精霊と言われるものだ。
彼らはしゃべることはできないものの、相手の脳に直接信号を送り、意思疎通を図ることができる高度な生き物達だ。
「それにしても………まさかクリューチともあろう種族が人間をかくまってくれるだなんて…一体どういう風の吹き回しなのかしら?」
『我らは人間が嫌いなわけではない。ただ、争い事が好きではないだけだ。』
『困っているものがいたら助けるし、病に苦しんでいるものが来たらできる限りの手助けをする。』
クリューチ達はそう言い残し、泉の中に戻っていった。
ベルは「変わった種族ね。」と言い残し、来た時と同じように全速力でリズ達のいるところまで戻っていった。




