71話 戦線状況
ニックは『少し待っていてくれ。』と言い、リズたちからカルセベルの入った袋をもらって森の奥へ消えていった。
チェスがサイネリアに、『なぜ森の奥に行ったんだ?』と聞くと『彼はいささか神経質なところがあるからね。集中したいんじゃない?』とのこと。
ニックを待っている間に、なぜかラタムが紙を渡してきた。
これに今まで見た魔法植物などをかけとのこと。
魔法植物に詳しく、魔法植物が大好きなチェスとソレイユがニックへの対価の情報を書くことになった。
その間、リズ、オスマン、レオは、あまり話したことのない……というよりも、話したことが全くといってもいいほどない神獣たちに話しかけることになった。
レオはあまり気乗りしていなく、それを見たオスマンも苦笑を浮かべる。
サイネリアが『悪いやつはいないよ。ただ……ちょっと性格を拗らせてるのがいるだけさ。』……なんとも言えない、レオは特にベルが苦手だった。
「こんにちは。」
リズが一番最初に話しかけたのは、猫又のルフィナ。
ルフィナは話しかけられると、リズたちの方を向いてにっこり
「あら、こんにちは。パームが選んだ子でしょ?」
「知ってるの?」
気安くタメ口を使ったからだろうか、レオが『おい!』と、声を上げる。
しかし、ルフィナは声をあげたレオに首を振り
「タメ口でいいわ。私、敬語を使われるの苦手なの。」
ルフィナはリズたちを悪く思ってないらしい。
リズはルフィナのことが知りたいと言った。
彼女はためらう事なく、自分について教えてくれた。
「私は信頼の神シャルライトの使い魔の猫又よ。ここにきた理由は……知ってるかもしれないけど、アルフとベルを連れ戻しにきて、ついでに人間界の様子も見にきたの。」
ルフィナは人間の話になると、顔を暗くした。
やはり思うところがあるのだろう。
ルフィナは悲しそうな顔をしながらも教えてくれた。
「エルフの森が襲撃されたのは知ってるかしら?今はメリアの先鋭部隊によって守られているみたいだけど……人間の兵士たちは随分と傷が多かったみたい。過酷な環境なのだろうと部隊隊長が言っていたわ。」
どうやら人間の方でも色々と不満が溜まっていそうだ。
ルフィナの話を聞くと、中には国にいるのが耐えられず、エルフの森まで逃げてきた者も居るとか。
その話を聞いて、リズはふと、自分の母親を思い出した。
母は元気だろうか?もしかして、逃げ出した人たちの中に母もいるのかもしれない。
「そう言えば、ベルは随分君に辛く当たったみたいだけど……大丈夫?」
心配されたので、リズは『大丈夫。なんともないよ。』と、返しておいた。
その後も話を聞いたが、どうやら人間たちがエルフの森に襲撃したのは、やはり世界樹が目的だったらしい。
しかし、メリアの先鋭部隊が予想以上に強かったためか、はたまたメリアたちが来るとは思わなかったからか、人間たちは撤退したらしい。
しかし、またいつきてもおかしくない状況だとか。
リズは心の中で『エルフたちを助けないと』と思っていた。
ルフィナと話しているうちに、いつの間にか空は夕焼け色に染まっていた。
ルフィナに『今後移動することも多いかもしれないから、君たちは早く寝たほうがいいと思うわ。』と言われたので、その言葉に従い、ラタムが用意してくれた寝床に入り、そのまま目を瞑った。
心の中にうごめくモヤモヤは消えないまま……




